第2部 持続可能的経済計画の過程
第7章 経済計画とエネルギー供給
(2)エネルギー供給計画
前節で、共産主義的な計画経済下での経済計画過程の起点はエネルギー計画であると指摘したが、ここで第4章で述べた持続可能的計画経済の原理を今一度振り返ると―
持続可能的計画経済には環境アセスメントが予め包含されており、従って、主として生産の量的な調節を目的とする「物財バランス」にとどまらず、環境的持続可能性に適合するエネルギー資源の選択、生産方法や生産品構造の規制にも及ぶ質的な「環境バランス」も組み合わされなければならないのであった。
特にこの「環境バランス」の前提として、エネルギー計画が必要となる。その場合、エネルギー計画を経済計画本体と分離して独立に組むか、それとも経済計画の前提部分のような形で組み入れるかという技術的な問題がある。
エネルギー計画が経済計画の外部的規制ではなく、経済計画全体の内部的前提となることを強調するためには、組み入れ型が適切と思われるが、いずれにせよ、このようなエネルギー計画は、経済計画本体と同様に規範性をもって生産企業に適用される指針であって、単にエネルギー政策の基本方針を綱領的に掲げたものではない。
またエネルギー供給は、エネルギー源の世界的な共同管理の制度とも密接に関連するため、世界レベルでのエネルギー源管理計画ともリンクしていなければならず、ここでは「一国エネルギー計画」は存立し得ない。
内容的には、石油などの枯渇性エネルギーの節約と再生可能エネルギーの積極活用が基調となり、二次エネルギー源の中でも高度産業社会で最も比重の高い電力の環境持続的な総量規制はエネルギー計画の重要な柱である。
ちなみに発電に関し、ひとたび事故が発生した際の環境破壊性において他に例を見ないことが実証済みの原子力は質的に見て安全に持続可能的なエネルギー源とは評価できないため、持続可能的エネルギー計画からは除外される。
こうしたエネルギー計画の策定主体も行政機関ではなく、生産企業体で構成する経済計画会議であるが、エネルギー計画の原案は、会議の下部機関として製油や電力等のエネルギー関連事業体で構成する「エネルギー計画協議会」で策定されることになる。