１２月 ６日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　雪吊



　　　　　雪吊りの声してゐたり母の家　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　吊り終へし松離れ見る雪吊師　　　　　　　　　　丹羽康碩


　　　　　湯煙りに雪吊りの縄ゆるびたる　　　　　　　　　栗田せつ子


　　　　　雪吊りの乾きてゆるぶ晴れつづき　　　　　　　　岸本典子


　　　　　雪吊りの縄たをやかに風呼べり　　　　　　　　　江口ひろし


　　　　　雪吊の影濃し白鳥供養の碑　　　　　　　　　　　都合ナルミ


　　　　　雪吊の縄ゆるぎなく翳りなく　　　　　　　　　　伊藤範子


　　　　　余り縄風に吹かせて雪吊師　　　　　　　　　　　武藤光晴


　　　　　雪吊の空の青さや絵解寺　　　　　　　　　　　　奥山ひろ子


　　　　　雪吊の鉾を支へし加賀の空　　　　　　　　　　　武田稜子


　　　　　芯柱腹に突き立て雪吊師　　　　　　　　　　　　兼松　秀


　　　　　鯉跳ねて雪吊の影崩しけり　　　　　　　　　　　渡辺昌代


　　　　　雪吊りの縄金色や加賀の晴　　　　　　　　　　　市原美幸



　　　　　　　　　　



　　　　　雪吊の加賀ぶりと思ふ縄の張り　　　　　　　　　 能村登四郎


　　　　　雪吊に北国の蝶まつはりぬ 　　　　　　　　　　　阿波野青畝


　　　　　雪吊の縄ささくれて雪を待つ 　　　　　　　　　　片山由美子


　　　　　雪吊や椿百花をこぼさずに 　　　　　　　　　　　森澄雄


　　　　　雪吊の門前町に赤子抱く 　　　　　　　　　　　　大峯あきら