踊る小児科医のblog

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八戸でもインフルエンザ注意報/タミフル耐性について

2009年01月23日 | こども・小児科
「上十三、五所川原保健所管内にインフルエンザ注意報」という先週のデータが報道されましたが、八戸でも今週に入って急増しています。定点医療機関当たりの患者数は、注意報の出た上十三が一三・七八人、五所川原が一〇・二九人でしたが、今週は当院(定点医療機関の一つ)でも15人を既に超えていて、他の医療機関でも同様またはそれ以上の数字になると思われるので、八戸にも注意報が出されるのは確実な情勢です。

2保健所管内にインフル注意報(2009年1月21日)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2009/20090121194445.asp
タミフル効かない耐性ウィルス 県が確認(2009/01/22)
http://www.daily-tohoku.co.jp/news/2009/01/22/new0901220802.htm

「タミフル耐性」のニュースについては上記の記事を読んでも理解できないと思います。(私も)
感染症情報センターの報告などを元にして整理してみます。
1)昨年わずかに検出され、今年全国で高頻度に検出されているタミフル耐性ウイルスは、Aソ連型(H1N1)であり、日本だけでなく世界各国で検出されているH1N1亜型の90%以上がタミフル耐性となっている。
2)このタミフル耐性は、タミフルの使い過ぎによって生じたものではなく、海外で野生株の突然変異によって獲得されたものであり、感染性は高い。
3)タミフル耐性ウイルスが特に重篤な症状を引き起こすとの報告はない。
4)吸入の抗インフルエンザ薬「リレンザ」に対する耐性は報告されていない。
5)今シーズン接種したワクチンはタミフル耐性ウイルスにも有効である。
6)現在、国内ではA香港型(H3N2)、Aソ連型、B型の混合流行となっているが、A香港型およびB型ではタミフル耐性は認められていない。
7)Aソ連型(ほとんどはタミフル耐性)は全体の1/3程度だが、今後流行の主流になるかどうか、情報に注意が必要。
8)県内で検出された検体は全て上記のタミフル耐性Aソ連型と推測されますが、追加の情報がなく、その他のA香港型やB型の検出情報もないため、現在流行中のウイルスのどの程度の割合なのか判断できません。(検出情報は11月のものです)
9)インフルエンザウイルスの迅速診断キットではA型かB型かは区別できますが、A香港型とAソ連型の区別はつきません。
10)よって、タミフルの効果が期待できるかどうかは、投与後の経過をみてみないとわかりません。
11)今シーズンも、タミフルは0歳児と10歳以上の年長児には原則として投与しないことになっています。

★なお、当院ではインフルエンザに対してタミフルと同等の解熱効果が期待できる漢方薬の「麻黄湯」を中心に治療していて、1~9歳の希望者にはタミフルを使う場合もありますが割合としてはわずかです。「麻黄湯」でほとんどの方は丸2日以内に解熱していますが、1週間程度の経過の中盤以降は咳込みやタンが多くなり、その後治っていく経過を辿っています。年長児に吸入薬の「リレンザ」を処方することも可能ですが、当院では使わずに治っているためまだ処方例はありません。

★「今シーズンのワクチンに含まれるA/H1N1抗原(A/ブリスベン/59/2007)は耐性株に対しても有効に働くことが期待できるので、インフルエンザ罹患時に重症化や入院などのリスクが予想される場合には、今からでもワクチン接種が推奨される。(下記ページより引用)」…ワクチンはまだ接種可能です。

<速報> 2008/09インフルエンザシーズンにおけるインフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株(H275Y*)の国内発生状況 [第1報]
http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3483.html