踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

日医、福島の基準に懸念 子どもの被曝を最大限減らすのは国の責務

2011年05月13日 | 東日本大震災・原発事故
#この問題に対する医療・医学界からのアクションがなかったことに不信と不満の念を抱いていましたが、かなり遅くはなったとは言え、医師会からの見解が出されたことには一定の評価をしたいと思います。できればもう少し強く踏み込んで欲しかったとは思いますが。。

日医白クマ通信 No.1420 2011年5月13日(金)

定例記者会見
文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方」に対する日医の見解
―保坂常任理事

 保坂シゲリ常任理事は、5月12日の定例記者会見で、文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方」に対する日医の見解について説明した。

 文科省は、4月19日付で、福島県内の学校の校舎・校庭の利用等に係る限界放射線量を示す通知を福島県知事、福島県教育委員会等に対して発出している。この通知では、幼児、児童、生徒が受ける放射線量の限界を年間20ミリシーベルトと暫定的に規定。そこから16時間が屋内(木造)、8時間が屋外という生活パターンを想定して、1時間当たりの限界空間線量率を屋外3.8マイクロシーベルト、屋内1.52マイクロシーベルトとし、これを下回る学校では年間20ミリシーベルトを超えることはないとしている。

 これに対し、同常任理事は、「そもそもこの数値の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)が3月21日に発表した声明では、『今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1~20ミリシーベルト/年の範囲で考えることも可能』としているに過ぎない」と指摘。この“一般公衆における参考レベル”である1~20ミリシーベルトの最大値の20ミリシーベルトを限界値としたことの科学的根拠が不明確であり、また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すれば、国の対応はより慎重であるべきとの考えを示した。

 そのうえで、成人はもちろん、特に小児については、可能な限り放射線被曝量を減らすことに最大限の努力をすることが国の責務であり、子どもたちの生命と健康を守ることこそが国に求められていると強調した。

 さらに、文科省が5月11日付で出した事務連絡「実地調査を踏まえた学校等の校庭・園庭における空間線量低減策について」にも言及。この通知は、幼稚園・保育園の園庭、学校の校庭、公園等の表面の土を入れ替えるなど、環境の改善方法について、福島県下の学校等の設置者に対して検討を進めるよう求めているが、同常任理事は、経済的支援も含め、国として責任をもって対応することが必要だとして、「国が出来得る最適・最速・最大の方法で、子どもたちの放射線被曝量の減少に努めることを強く求めるものである」との日医の見解をもって、文科省に対し申し入れを行う意向を明らかにした。

◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第三課 TEL:03-3946-2121(代)
◇関連資料はこちら⇒PDF(87KB)
◇参考⇒文部科学省HP/別紙1/別紙2

子どもに「年20ミリシーベルト」撤回を求めるオンライン署名 第2弾

2011年05月13日 | 東日本大震災・原発事故
この問題については、他県の子どもたちは年1ミリシーベルトの基準で守られているのに、福島県の子どもたち(保育園児も含む)だけが年20ミリシーベルトまで我慢しろという一点においてだけ考えてみても、到底納得できる話ではありません。

子どもに「年20ミリシーベルト」撤回を求めるオンライン署名 第2弾
http://www.foejapan.org/infomation/news/110509.html

4月中に1回実施されて私も署名しましたが、第2弾では状況も異なってきており文面等も新しくなっているので、前回署名した方にももう一度署名をお願いしているようです。

問題点については上記署名のページに詳しく書かれているので参考にして下さい。
子どもと大人の基準値が同じ、内部被曝を勘定に入れていない、最も被曝が多かった事故直後の被曝量が積算されていないなど、信じ難いような内容あることは既に指摘されている通りです。

事実上、政府も「年20ミリシーベルト」まで被曝させて良いわけではないと認めており、当初は「必要ない」と強弁していた校庭の土除去も、土を上下入れ替えるという姑息な方法で実施しようとしています(それも国や東電の責任ではなく自治体まかせで)。
しかし、ここで政府にきちんと誤りを認めて撤回させることが、これからの子どもたちに希望の持てる社会をつくるためにも、クリティカルに重要な問題と認識しています。

簡単に言うと、この「年20ミリシーベルト」という数字は政治・行政の都合で決められたとしか考えられません。

5月1日の「江川紹子ジャーナル」に、
「『適切でない』と申し上げた」~”子どもにも20mSv/年”問題と放射線防護学の基礎
http://www.egawashoko.com/c006/000330.html

>限度を半分の10mSv/年にすればかなりの数の、
>従来の1mSv/年にすればほとんどの学校が対象になってしまい、
>学校が再開できなくなってしまう、ということで、
>20mSv/年としたのでしょう。

という原子力安全委員のコメントが紹介されている通りです。

事故直後に放射能拡散予想、避難情報を出さずに、無用な被曝をさせてしまった失敗を糊塗するために、「大丈夫」と言い続けて、事を荒立てずに済ませようとしたのでしょう。
それが更なる不信感に繋がるのだという想像力すら欠如している官僚や政治家。。

それならば、
年20mSvを撤回して、10mSvにするのか、1mSvを厳格に守らせるのか、
その際に、大規模な避難・疎開を実施するのか、
親の仕事や、家族離散、地域社会・経済の崩壊はどう防ぐのか、
避難させないで土を除去するだけで大丈夫なのか(子どもたちの生活は校庭だけではなく地域全体の問題ですから、どこまで除去する必要があるのか)、
膨大な難問が待ち構えています。
要するに、それだけ「原発大事故による放射能大量放出」という事態は取り返しのつかない、あってはならないことだということなのですが。。

最低でも、校庭だけでなく地域全体で、表土の除去(入れ替えではなく)や建物、アスファルトなどの除染を大規模に行い、できるだけ数字を下げて年1mSvに近づける努力はすべきだし、その費用は東電が責任を持って負担すべきでしょう。

(追記)
日本医師会がこの件に関するコメントを出しました。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110512_31.pdf

国民・子どもの命を最優先にしない日本という国

2011年05月13日 | 東日本大震災・原発事故
このことは何十年も前からわかっていた事実で、残念ながらこの大惨事でまた繰り返されたということです。。
その歴史というのは、水俣病、薬害エイズ、アスベスト、そしてタバコ病。。
歴史をさかのぼれば、先の大戦のおける沖縄戦や特攻隊。。
まだまだあります。
放射能では原爆の内部被曝患者(救助に入った人たち)、
他国では劣化ウラン弾、核兵器実験場周辺地域、再処理工場下流の住民、
あのチェルノブイリですら甲状腺がん以外は何もなかったと言われているくらいですから。。
あらゆるケースで、「因果関係が証明されない」と言って救済されず、見捨てられてきました。

そういうところに必ず登場してきたのが「御用学者」。
もしかしたら、今回初めてこういう人達がいるということで驚かれた方もいるかもしれませんが、大昔からずーっと権力に寄生して棲息してました。
裁判では国側の証人に立って「安全性」を証明したり、因果関係を否定してみせたりしました。
→確かめたい人は津田敏秀著『医学者は公害事件で何をしてきたのか』をご覧下さい。
 (ここでは詳しく紹介できませんが)

「原子力村」というのも今回はじめて気づいたかのごとくマスコミが取り上げるようになりましたが(さすがに大手メディアも頬かむりをし続けることができなくなったようで)、
原子力業界がいかに信用できず、情報を隠し、遅らせ、あるときは捏造し、言われるまで出そうとしない世界かということも昔から連綿と続いてきたことだし、
大手マスコミがそのことをちゃんと追及しないことも、私たちが本当に知りたいことを伝えようとしないことも、今回に始まったことではありません。(自らもその村の住民だったのですから)
全部原発マネーで支配されていることも。。わかりきっていました。。残念ながらというか。。
(青森県がその典型です。青森県には県民に主権はなく、核燃主権だけがあると言っても過言ではありません。)

あれは大本営発表なんだ。。本当のことは後から出てくるから。。
身内には最初からそう言ってきましたが、結果は皆さんもご存知の通りです。

このブログでもわずかながら警告を出しましたが(信じちゃダメ 専門家の「安全です」 風向きに注意 2011年03月17日)、当然のことながら何の影響力もありませんでした。。

リスクコミュニケーションという言葉があります。
今回、誰の言うことを信じたら良いのかわららない、という声が多いようです。
難しいことは抜きにして(というか難しいことはよく知らないので解説できないのですが)、
一番簡単なのは、「誰の」言うことを信用するか、ということです。
どんな人の、と言ってもいいかと思いますが、
あるいは、どんな表情で、どんな口ぶりで、どんな表現で、などなど、
そんな主観的なことで大丈夫なのか、と言いたくなるかと思いますが、
大抵は外れないと思います。
(私たちが日常的に、この人は信頼できるとか、あの人とはちょっと距離を置いてつきあおうとか、無意識のうちに判断しているのと同じことですから。)

東電や保安院の人たちの言うことに任せてご自分の子どもをリスクに曝すのか、
官房長官の「直ちに健康への影響はない」という言葉で安心するのか、
「100mSVまでは心配はないんです」と言い続けている“アドバイザー”や、
口ぶりが「あちらの世界に行っている」としか思えない「低線量被曝は健康に良い」という“学者”。。

ご自分のお子さんの命を本当に心配してくれているのは誰か、
ないがしろにしているのは誰か、
親御さんならわかるはずだと思います。