インフルエンザの迅速検査で陰性だと「あーインフルエンザじゃなかった、良かった」と喜んだり、陰性なのに「まずインフルエンザと判断して間違いないので薬を出します」と説明するといぶかしげな顔をする人が後を絶ちません。
と思ったら、これはtwitterに書いたのですが、隣県のある病院で、インフルエンザ検査陰性の人には自費じゃないとインフルエンザの薬を出せないなどという信じられない診療をしているところがあることがわかりました。
なぜ「インフルエンザの検査は補助的な手段でしかない(必須ではない)」と言い続けているのか。順に説明します。
この表は医療関係者なら必ず学んだはずです(私も毎回書き出してみないと思い出せないのですが)。
感度は、インフルエンザの人が検査で陽性になる割合
特異度は、インフルエンザではない人が検査で陰性になる割合
陽性的中率は、検査で陽性だった人が実際にインフルエンザである割合
陰性的中率は、検査で陰性だった人が実際にインフルエンザではない割合
いずれも高い方が良いのですが、全て100%などという検査は世の中には存在しません。
ややこしく感じますが数字を入れてみればわかります。
インフルエンザの迅速検査が「感度70%・特異度99%」だったとします。(本来感度はもっと高いのですが、臨床の場では検査のタイミングが早かったり遅かったり、その他の要因などで下がるので、この程度と仮定します)
陰性的中率に注目して下さい。
流行時<900人がインフルエンザ・100人がインフルエンザ以外>には、陰性的中率は27%しかありません。つまり、検査で陰性であっても、その3/4はインフルエンザなのです。
これが非流行時<100人がインフルエンザ・900人がインフルエンザ以外>だと、陰性的中率は97%まで飛躍的に上昇します。検査で陰性であっても、実際にインフルエンザなのは3%しかいません。
流行時には更に早期に受診して検査も早くなるため、感度を50%にまで落としてみます。
「感度50%・特異度99%」では、
流行時 陰性的中率 18%
非流行時 陰性的中率 95%
となり、非流行時の陰性的中率の低下はさほどではありませんが、流行時の陰性的中率は27%から18%まで更に大きく落ち込みます。
要するに「流行時には検査陰性でもインフルエンザである可能性が高く、非流行時には検査陰性ならインフルエンザの可能性は低い」ということになります。
一番の情報は、流行状況です。
ですから、流行時で典型的な症状や経過などがあれば(更にクラスや家族の感染者の情報があれば)、検査は不要、検査は流行の始まりや終りの時期に意味が大きいと言い続けてきたのです。
大体おわかりいただけましたでしょうか。
ところで、上記の計算では<インフルエンザ900人・非インフルエンザ100人>などという数字が既知のものと仮定していますが、当然のことながら実際にはこの数字はわかりません。
当院も感染症サーベイランスの定点医療機関に指定されていますが、インフルエンザとして報告した数字には、検査陰性の人や検査をしなかった人(家族内感染など)も含まれています。
ここで自己矛盾に陥るようにも思われます。「陰性のときの判断」は流行状況によって決めると言うが、流行を示すデータはその「陰性のときの判断」によって変わって来るのです。
実際にはそのようなことは自明で、症状や経過、所見(典型的な場合は顔を見ただけでわかります)、患者の増え方(単に数だけでなく、年に1回しか受診しないような子が増えてくるなど)、全国や地域の流行状況などを合わせて判断するので、さほど難しいことではありません。
ただし、小さい子や典型的でない症状など、陰性の時に他の感染症との鑑別に注意が必要な場合があります。
インフルエンザかと思ったら麻疹(はしか)だったとか(今は麻疹がほぼゼロになったのでその心配は少なくなりましたが)、ウイルス性胃腸炎の流行時に嘔吐や発熱で始まる急性虫垂炎を見逃したといったことがないように注意しなくてはいけません。 ←この部分は自戒です
と思ったら、これはtwitterに書いたのですが、隣県のある病院で、インフルエンザ検査陰性の人には自費じゃないとインフルエンザの薬を出せないなどという信じられない診療をしているところがあることがわかりました。
なぜ「インフルエンザの検査は補助的な手段でしかない(必須ではない)」と言い続けているのか。順に説明します。
この表は医療関係者なら必ず学んだはずです(私も毎回書き出してみないと思い出せないのですが)。
感度は、インフルエンザの人が検査で陽性になる割合
特異度は、インフルエンザではない人が検査で陰性になる割合
陽性的中率は、検査で陽性だった人が実際にインフルエンザである割合
陰性的中率は、検査で陰性だった人が実際にインフルエンザではない割合
いずれも高い方が良いのですが、全て100%などという検査は世の中には存在しません。
ややこしく感じますが数字を入れてみればわかります。
インフルエンザの迅速検査が「感度70%・特異度99%」だったとします。(本来感度はもっと高いのですが、臨床の場では検査のタイミングが早かったり遅かったり、その他の要因などで下がるので、この程度と仮定します)
陰性的中率に注目して下さい。
流行時<900人がインフルエンザ・100人がインフルエンザ以外>には、陰性的中率は27%しかありません。つまり、検査で陰性であっても、その3/4はインフルエンザなのです。
これが非流行時<100人がインフルエンザ・900人がインフルエンザ以外>だと、陰性的中率は97%まで飛躍的に上昇します。検査で陰性であっても、実際にインフルエンザなのは3%しかいません。
流行時には更に早期に受診して検査も早くなるため、感度を50%にまで落としてみます。
「感度50%・特異度99%」では、
流行時 陰性的中率 18%
非流行時 陰性的中率 95%
となり、非流行時の陰性的中率の低下はさほどではありませんが、流行時の陰性的中率は27%から18%まで更に大きく落ち込みます。
要するに「流行時には検査陰性でもインフルエンザである可能性が高く、非流行時には検査陰性ならインフルエンザの可能性は低い」ということになります。
一番の情報は、流行状況です。
ですから、流行時で典型的な症状や経過などがあれば(更にクラスや家族の感染者の情報があれば)、検査は不要、検査は流行の始まりや終りの時期に意味が大きいと言い続けてきたのです。
大体おわかりいただけましたでしょうか。
ところで、上記の計算では<インフルエンザ900人・非インフルエンザ100人>などという数字が既知のものと仮定していますが、当然のことながら実際にはこの数字はわかりません。
当院も感染症サーベイランスの定点医療機関に指定されていますが、インフルエンザとして報告した数字には、検査陰性の人や検査をしなかった人(家族内感染など)も含まれています。
ここで自己矛盾に陥るようにも思われます。「陰性のときの判断」は流行状況によって決めると言うが、流行を示すデータはその「陰性のときの判断」によって変わって来るのです。
実際にはそのようなことは自明で、症状や経過、所見(典型的な場合は顔を見ただけでわかります)、患者の増え方(単に数だけでなく、年に1回しか受診しないような子が増えてくるなど)、全国や地域の流行状況などを合わせて判断するので、さほど難しいことではありません。
ただし、小さい子や典型的でない症状など、陰性の時に他の感染症との鑑別に注意が必要な場合があります。
インフルエンザかと思ったら麻疹(はしか)だったとか(今は麻疹がほぼゼロになったのでその心配は少なくなりましたが)、ウイルス性胃腸炎の流行時に嘔吐や発熱で始まる急性虫垂炎を見逃したといったことがないように注意しなくてはいけません。 ←この部分は自戒です