踊る小児科医のblog

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禁煙外来はまだ不足・医師の喫煙は不適格・野田内閣の不作為:八戸医学会発表(3)

2012年11月29日 | 禁煙・防煙

発表は以上ですが、少しだけ付け加えさえて下さい。禁煙外来は八戸で18軒と、ここ1-2年で急増していますが、


人口あたりでみると、野辺地、弘前、青森より下で、全体では19位と低く、まだまだ足りないと言えます。


そして、本日お話ししたのは、(この真ん中の円の)禁煙治療の部分だけで、これは受け皿として必要ではありますが、本当はこのように他のことも全てやらなくてはいけない。特に、タバコ税増税で八百円・千円になれば、禁煙外来に難民が殺到することになります。


もう一つだけ、今年2月に日医で受動喫煙ゼロ宣言が出されましたが、ほとんど知られていません。これは、受動喫煙ゼロだけでなく、医師はタバコを吸っていてはダメですよと宣言しているのですが、八戸では医師会は何もしていない状況にあります。


准看学院で禁煙の講義を行っていますが、医師だけでなく看護師も、これからは喫煙者は失格なんだ、医師や看護師がタバコを吸っていることで、タバコ会社の社長は高笑いしているんだということを話しています。


喫煙している医師・看護師には禁煙治療を行うことはできません。同じように、国のトップが喫煙していると、、


この方(野田首相)は、昨日(11/16)ご自分でお辞めになったようで、もう二度と首相に戻ることはないと思いますが、財務相当時も担当大臣であるにも関わらず「タバコ税増税はオヤジ狩りだ」などと国際条約に反したことを平気で公言していました。
以上です。ありがとうございました。

(註:実際には衆議院を解散しても次の首相が決まるまでは首相職に留まりますが、現実的な表現としてこのように言いました。)

チャンピックスの副作用・減量者率と新たな体重別男女別投与量:八戸医学会発表(2)

2012年11月29日 | 禁煙・防煙

禁煙補助薬は、ニコチンパッチと、経口薬のバレニクリン(商品名:チャンピックス)の2つが使われています。


2つの薬剤の選択は、虚血性心疾患のある方はニコチンが禁忌ですのでバレニクリンを、精神疾患のある方にはニコチンパッチを主に選択しています。(※)


同じことを表にしてみましたが、心疾患のある方はニコチンパッチが使えず、精神疾患のある方はチャンピックスは慎重投与となるので、何もない方と心疾患の方はチャンピックス、精神疾患のある方はニコチンパッチが主に使われています。


薬剤別の患者数ですが、チャンピックスの発売以降は、ほぼ9割の方がチャンピックスを選択しています。


薬剤別の成功率では、チャンピックスが64%、ニコチンパッチが42%と2割以上の大きな差がみられました。


精神疾患の患者さんは、統合失調症、うつ病など、全体の1割、31名でした。人数には重複があります。


精神疾患の患者さんの禁煙成功率は39%と低く、薬剤別で比較しても特に差はみられませんでした。


バレニクリン(商品名:チャンピックス)は、使いやすくて成功率も高く、ニコチンを投与しなくていいというメリットはありますが、吐き気などの副作用の頻度が高いことが問題となります。
(註:今回の発表では精神疾患への影響については検討していません)


今回の検討でも、チャンピックスの吐き気が圧倒的に多く、ニコチンパッチでは皮膚症状が主でした。


禁煙治療の標準手順書では、吐き気に対して吐き気止めを使うか、用量を減らすと書かれていますが、薬の副作用に対して更に薬を使うというのは間違っていると思いますので、(患者さんと相談しながら)副作用の程度と禁煙の状況に応じて減量するようにしています。


何らかの副作用により減量した人は、チャンピックスが2割、ニコチンパッチでは3分の1ですが、ここには最初から投与量を減らした人も含まれています。チャンピックスでは男性に比べて女性が3倍も高くなっています。


そこで、体重別、男女別に減量者の割合を調べたところ、 50キロ未満では半数以上が、50~60キロでも4分の1以上が減量してることがわかりました。


同じものをグラフにしてみましたが、注意したいのは、60キロ以上でも女性の減量者はほとんど減っていないということです。これを見ると、日本人の女性には用量が多すぎるのではないかと考えられます。


そして、減量した人の成功率は、減量しなかった人や全体の平均よりもむしろ高くなっています。本当に高いのかどうかはわかりませんが、少なくとも成功率は下がっていないということは言えると思います。


そこで、この2週目、8日目から1ミリグラムに増量するところを、


体重と男女別に、50キロ未満はそのまま増量せず、50~60キロの男女と60キロ以上の女性は0.5ミリを3錠までにしてみることにしました。これはまだ実施していませんので今後更に検討する必要があるかもしれません。

禁煙治療の成功率・男女・年齢・受診回数・本数年数・依存度別 体重増減:八戸医学会発表(1)

2012年11月29日 | 禁煙・防煙
第38回八戸医学会(2012年11月17日)で発表した『禁煙外来6年間305例の治療経験から 特にバレニクリンの副作用と新たな用量設定について』のスライドと口演原稿を、若干の注釈を加えて掲載します。枚数が多いので3回に分けます。画像が小さくてみにくい部分があるかと思いますので、PDFファイルもアップしておきます。 →PDF



まずはじめに、喫煙は予防可能な最大の死亡原因であり、ニコチン依存症は完治しうる慢性疾患であるとされています。この「完治できる」というところが、高血圧や糖尿病との最大の違いです。


わが国では2006年に禁煙治療が保険適用になり、2008年には経口薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)が使えるようになり、2年前にはタバコ税が増税されています。(※八戸医学会ではこのスライドは省略:以下※印は同じ)


当院では10年前から禁煙外来を実施していますが、2006年の保険適用で急増し、バレニクリン(チャンピックス)が使えるようになってまた増えて、タバコ税増税で倍増しています。


今回はこの赤枠の、保険診療の6年間305例について検討してみました。


男女比では女性が約3分の1で、JTの調査では約4分の1ですから、女性の比率がやや高い傾向にありました。


全体の禁煙成功率は、12週間後で58%で、男女差はありませんでした。あとで触れますが、精神疾患の患者さんの成功率は39%と明らかに低くなっていました。


年代別の受診者では、30代が最も多く、40代、20代と続いていますが、 禁煙成功率は年代が上がるにつれ高くなり、60代が最も高くなっています。


受診回数別では、5回12週受診された方は98%が成功していますが、1回目から4回目まで毎回1割前後の方が脱落しています。


中医協の資料では、5回終了者の成功率は79%であり、これよりも高い成績が得られました。(※)


タバコ依存症スクリーニングテスト、TDSの点数別では、9点10点と依存性の高い方の成功率が低めになっていますが、全体では明らかな傾向はわかりませんでした。(※)


ブリンクマン指数(喫煙本数×年数)でみると、むしろ本数・年数が多いほど成功率は高い傾向となりました。これは、何らかの疾患により禁煙の必要性が高い人が多いためと考えられます。(※)


体重の増減では、12週間後の体重はプラス1.8キロで、男女差はありませんでしたが、男性の方がばらつきが大きい傾向がみられました。


体重別に比較してみましたが、特別の傾向はみられませんでした。男性に増減の大きい方が散見されます。(※)