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代理母は認められない 限定容認論の迷走

2006年12月21日 | こども・小児科
代理出産、限定的に容認 民主党チームが中間報告という記事を読んで、肝腎なことがわかってない人たちが議論の真似事をしているんだと呆れるやら悲しくなるやら。。
別に私が恥じる必要はないのですが、一応後世の人に対する言い訳として。。。

この問題については私の意見は明確です。代理母は認められない。
理由は、この国において「生まれてくる子どもの権利が保障されていないから」の一言に尽きます。

代理懐胎に関する見解(日本産科婦人科学会 平成15年4月)
2.代理懐胎の是非について
 代理懐胎の実施は認められない.対価の授受の有無を問わず,本会会員が代理懐胎を望むもののために生殖補助医療を実施したり,その実施に関与してはならない.また代理懐胎の斡旋を行ってはならない.
理由は以下の通りである.
 1)生まれてくる子の福祉を最優先するべきである
 2)代理懐胎は身体的危険性・精神的負担を伴う
 3)家族関係を複雑にする
 4)代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められない
代理懐胎に対する日本医師会の見解(2006年11月10日)
 昨今問題となっている代理懐胎について、現時点では日医として認めることはできない。
 日医はすでに平成16年に策定した「医師の職業倫理指針」において、国連で採択された「児童の権利に関する条約」にも抵触することから、代理懐胎は認めることはできないとの考えを明記しており、現在もその考えに変わりはないと説明。この点では、基本的に厚生労働省ならびに日本産科婦人科学会と意見が一致していると述べた。

この状況は、今も何も変わっていないし、これからも変わることはないでしょう。
それぞれの理由についての解説は上記日本産科婦人科学会のリンクに書かれていますので、興味のある方はご覧下さい。

詳しく書く気がしないしその時間もないのですが、民主党案で、
>親族による代理出産は認めず
>第3者が無償で行う

まずこれはあり得ない条件ですね。
無償なら親族しか考えられない。しかしそれは(上手くいったとしても)生まれてくる子どもにとって複雑怪奇な親子関係をもたらす。
第三者が(実費を除いた)全くの無償でリスクだけがあって赤ちゃんを手放さざるを得ない代理母になるとは到底考えられない。
つまり、向井氏らの例だけでなく、代理母とは赤ちゃんの人身売買に他ならない。

し・か・も、
>生まれた子供の引き取りは、代理出産の依頼者には義務付ける
>出産した女性には「子供を渡さない権利を認めることも検討する」

だ・か・ら~、
これが赤ちゃん、依頼者、代理母の複雑怪奇な問題を引き起こす元凶になっているという実態を、全然わかっていないとしか思えません。(有名な裁判もありますね)
生まれてくる子どもの気持ちを少しでも思いやれば、このような親の「自分勝手、自己満足」(あえて言わせてもらえば)のために子どもが生まれる前から背負わされる宿命を、国会議員が決めた法律だから仕方ないと受け入れることなど、到底想像できません。

もちろん、これは代理母だけではなく、生殖医療や先端医療には常につきまとう問題あり、だからこそ現実の表面的な部分で論議しては絶対にいけない。
現実がこうだからそれに合わせてなどという前提で考えると、抜け道のない迷路にはまりこんでしまうわけで。。
きちんとした本質的な議論と、それによって示される踏み越えてはいけないラインを設定することは、この時代において責任ある人たちに課せられた義務です。
もうちょっと恥ずかしくない議論をしましょうよ。

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1 コメント

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きちんと専門家の意見を (ji7spu)
2006-12-22 10:26:26
顕微鏡で受精させた卵子を第三者の子宮に置いて出産させる事については、かなり専門的な議論が必要かと思います。
実際に出産後に「赤ちゃん」を引き渡さない等の事もアメリカでは起きているようですし、人間関係にも帳尻が合わなくなってしまうのではないでしょうか。
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