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「妊婦の喫煙と子どもの受動喫煙 タバコは最大の健康被害」県南周産期セミナー講演抄録(1/31)

2015年02月21日 | 禁煙・防煙
第37回 県南周産期セミナー
「妊婦の喫煙と子どもの受動喫煙 タバコは最大の健康被害」
平成27年1月31日(土)

 青森県の妊婦の喫煙率は2013年に4.6%と初めて5%を割り込んだ。ただし、これは妊娠判明後の公式な数字であり、実態はもう少し高いものと考えられる。一方、妊婦の同居者の喫煙率は5割を超えており、妊婦、胎児、新生児の受動喫煙は依然として深刻な状況にある。

 全国的にみても、2000年代から妊婦の喫煙率の低下傾向が明らかになっているが、年代別にみると若年層ほど高く、未成年妊婦の喫煙率は14.3%に達する(2010年)。

 近年、乳幼児突然死症候群の原因として致死的な遺伝性不整脈の関与が示されてきているが、出生前・出生後の喫煙・受動喫煙が最大のリスクファクターであることに変わりはない。

 妊婦の喫煙により流早産、周産期死亡、ダウン症を含む様々な先天異常、ADHDなどの発達障害が増加し、父親の喫煙でも二分脊椎などの先天異常が増加することは確定的となっている。

 低出生体重児の割合が2009年には9.6%に達し、平均出生体重は1940年代のレベルまで減少し続けている。その原因として妊娠前のやせや妊娠中の栄養摂取不足が指摘されているが、若年女性の喫煙率が2000年前後まで増加し続けてきた事実がしばしば忘れ去られている。

 低出生体重児が成人期の心血管疾患、高血圧、2型糖尿病のハイリスクであるというBarker仮説や、胎児期や乳幼児期の環境変化に対応してDNA塩基配列の変化を伴わないエピジェネティック変化(DNAのメチル化やヒストン修飾など)が生じて3世代まで連鎖するというDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)仮説が受け入れられてきている。妊娠中の喫煙・受動喫煙が児の成人後だけでなく次の世代にまで影響する可能性が示唆されているのである。

 喫煙者は月経困難症の頻度が有意に高く、喫煙開始年齢が早いほどリスクは高くなる。

 親の喫煙と本人(男女とも)の喫煙は不妊の大きな要因となっており、不妊治療希望者は夫婦ともに禁煙することを条件とすべきである。

 喫煙は男性で10年、女性で11年寿命を縮め、喫煙女性の死亡率は非喫煙者の3倍で、50~70歳の死亡の2/3は喫煙が原因である(いずれも英国の調査)。喫煙者の肌や容貌は40代を過ぎるとSmoker’s faceと称される特徴が明らかとなる。タバコは老化促進剤である。

 妊娠可能年齢の女性に多い子宮頸がんや乳がんは、喫煙が大きなリスクファクターであるにも関わらず、その危険性はほとんど伝えられていない。閉経前の女性では受動喫煙でも乳がんのリスクは約2倍に高まる。

 個人差が大きいが、禁煙治療後に体重は2kg程度増加することが多い。しかし、実際には喫煙者の方が肥満は多く、喫煙してやせようとすることは自殺行為と言える。

 スリム、ライト、メンソールなどのブランドや、若い女性をターゲットとした巧妙なマーケティング戦略により、ティーンエイジャーが次々と「釣り上げられていった」結果として、妊婦・母親の喫煙が増加し、子どもの受動喫煙、子どもの喫煙開始へと悪循環が続いてきた。

 WHOタバコ規制枠組み条約(2005年発効)により、世界各国でスリムなどの名称禁止、メンソールの使用禁止、スポーツやイベントへのスポンサー活動禁止など、タバコ産業への厳しい規制が加えられてきたが、日本国内では有効な対策がほとんど実施されず、女性向け景品付きのブランドがコンビニの店頭でキャンペーン商品として売られている特異な状況にある。

 大学生世代の男女の喫煙防止と、出産後の再喫煙防止対策が不足していた。運動は依存症、うつ、ストレス、加齢の特効薬であり、産後うつ予防、育児支援・虐待予防、再喫煙防止の3つと運動をセットで支援することを提案したい。

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