熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「日本売春史」小谷野敦

2009年10月24日 | Weblog
学者は気楽な稼業であるかのような世間一般の印象があるように思うのだが、こうした著作を読むと、そうした認識を改めなければならないと思わずにはいられない。性産業や金融といった人間の欲望の根本に関わる職業は、きれいごとだけでは済ますことのできないことが少なくない。それだけに、自分の考えを著作として世に問うとなると、様々な立場からの様々な反応があり、そうした批評や批判に耐えるだけの実証も丹念に積み上げなければならないはずだ。出版物には自分が書いたことに対する責任が常について回るので、よほどの覚悟をもって研究して相当に表現を吟味して書かなければ、研究者としての自身の存在を失うことにもなりかねないだろう。会社や団体の看板の下で一組織人として生きるのとは違った、自分自身のブランドで生きることの厳しさのようなものを感じた。