万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北東アジア非核兵器地帯の理想と現実

2009年08月09日 15時42分45秒 | 国際政治
オバマ演説の支持を世界に、長崎市長訴え 「原爆の日」(朝日新聞) - goo ニュース
 広島に続いて長崎でも、本日、原爆投下から64年目の日を迎えました。原子爆弾がもたらした凄惨な光景は、核兵器の非人道性を余すところなく伝えており、核兵器の完全廃絶が人類の理想であることは確かなことです。その一方で、原爆の日の式典では、毎年、政治的なスローガンの如くに核廃絶が訴えられるのですが、しばしばその理想主義に違和感を感じることがあるのです。

 本日も、長崎市長が、式典において非核三原則の法制化と北東アジア非核兵器地帯条約の締結を提唱したと報じられています。しかしながら、この提案を、いざ具体化しようとしますと、相当の難問が待ち受けていると思われるのです。非核三原則を法制化は、日本国から、アメリカによる”核の傘”がなくなることを意味しますし、国内立法では済まされない北東アジア非核兵地帯条約の実現は、さらに難関があります。何故ならば、北東アジアとは、地域的には、朝鮮半島の二つの国と日本国の三国によって構成されるようですが、北朝鮮の核放棄の見通しが立っていないことに加えて、韓国と北朝鮮はいまだに休戦状態にあるからです。

 さらに大きな問題は、これらの政策には、保障措置が必要であるということです。北朝鮮は、NPTに加盟しながら一方的に脱退を表明し、査察の受け入れを拒んできました。非核兵器地帯条約でも同様の管理制度が設けられることになりますが、NPTでさえ北朝鮮の核開発を阻止できなかったのですから、この枠組みを造っても、それを維持できる保障はありません。むしろ、北東アジアをさらに不安定化する可能性もあるのです。

 原爆の日は、政治的なプロパガンダを主張する日ではなく、ひたすらに犠牲になられた方々を悼む日であってほしいと願うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする