万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”戦争法案”には”正戦法案”で対抗しては?

2015年09月04日 15時29分26秒 | 日本政治
野党党首、安保法案「強引な成立阻止」で一致
 今月18日にも参議院で可決成立か、との情報が飛び交っている安保関連法案。採決の日を前にして、野党の党首達は安保法案阻止に向けて結束を固めているようです。

 ところで、野党側は、安保関連法案を”戦争法案”と名付けることで、当法案のイメージを巧みに操作していきました。法案が通れば、則、戦争が始まるような錯覚を国民に覚えさせることが、イメージ操作の狙いです。”戦争法案”という命名は、国民の反射的な反対を引き出すには好都合であったのでしょう。このため、与党側は、野党側が振りまいたマイナス・イメージを払拭すべく、”平和法案”としての側面を強調し、集団的自衛権の行使に伴う抑止力の効果を説明してきました。しかしながら、安保法案反対論者は、なおも”戦争法案”の名を以って、デモにネットに反対運動を展開し、収まる気配はありません。こうした偽善的な平和主義者に対するもう一つの対抗策は、正戦論を提起することです。 集団的自衛権の行使には、平時における共同抑止力と有事における共同防衛の二つの側面があり、”平和法案”が前者であるとしますと、”正戦法案”は後者に対応します。安保法案反対論者の主張では、自衛隊の海外派兵は、如何なる場合でも”悪しき戦争”であり、その立脚点は、無差別戦争違法論にあります。一方、現在の国連体制にあっては、侵略が発生した場合、国連による集団的安全保障措置であれ、国家による個別的自衛権、または、集団的自衛権であれ、合法的な武力行使を認めています。つまり、今日の国際社会は、無差別戦争違法論ではなく、合法的な戦争を認める正戦論に基づいているのです。そして、今般の安保関連法案は、国際法に違反して平和を破壊する行為に対抗するために策定されており、自衛隊の活動は、他国の権利や国際社会の安全を守りこそすれ、侵害するものではありません。

 抑止力を前面に打ち出す”平和法案”と比較しますと、”正戦法案”は有事を想定するのですから、日本国民の間に緊張が走ることは確かなことです。しかしながら、現在の国際情勢が楽観的な見方を許さない段階に至っていることを考慮しますと、”有事は絶対にない”と言い切ることも、不誠実な態度となりかねない恐れがあります。そして、有事に際しては日米同盟による共同防衛や国際協力が不可欠であり、正戦を戦い貫く覚悟を正直に説明することは、むしろ、安保関連法案への国民の理解を深めるのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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