万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

深刻な韓国によるユネスコ世界記憶遺産の政治利用

2015年09月15日 15時53分05秒 | 国際政治
 韓国政府は、次なるユネスコ世界記憶遺産の候補として、日本国によって戦時中に動員された朝鮮人徴用工の記録を検討していると報じられております。果たしてこの申請、韓国の思惑通りに登録まで漕ぎ着けることができるのでしょうか。

 ユネスコ世界記憶遺産制度の設立の趣旨は、人類史に記憶すべき価値ある史料の国際的なサポートによる保存にあります。制度の趣旨からすれば、徴用工の記録保存に人類史的な意味や意義を見出しているからこそ、韓国も、登録に向けて活動を開始したはずです。しかしながら、第二次世界大戦当時、韓国は日本国に併合されており、日本国籍を有する”日本国民”であったわけですから、戦時徴用は、強制労働条約にあって”強制労働”とは認定されない性質のものです。この件に関しては、既に、日本国政府は、先の明治産業遺産の世界遺産登録に際して説明してもいますが、合法的な労働の記録を、敢えて世界記憶遺産として登録する必要はあるのでしょうか。もっとも、韓国側の”歴史認識”によれば、日本国による朝鮮半島の統治は、”世界史上に類を見ない残酷な植民地支配”ですので、植民地主義の最悪のケースとして自らの被害を後世に残すべき、と考えているのかもしれません。しかしながら、実際に過酷な植民地支配を受けた他のアジア・アフリカ諸国は、韓国を”植民地支配被害国”の代表格と認めるでしょうか。否、韓国が、ユネスコ世界記憶遺産制度を日本国への外交圧力、あるいは、賠償・補償請求の根拠として利用しようとしているとなりますと、他のアジア・アフリカ諸国も、我先に、当制度の政治利用を始めるかもしれません。韓国による国際制度の政治利用は、国際社会に収拾の困難な混乱をもたらし、制度そのものを崩壊に導きかねないのです。

 韓国が収集した関連史料は公開されており、その中には、朝鮮総督府から日本国内で働く朝鮮人徴用工に宛てた手紙も含まれているそうです。証拠書類とされるこの手紙からは、雇用期間付の自発的な契約雇用であり、朝鮮半島からの家族呼び寄せも奨励されていることが読み取れます。皮肉なことに、韓国の意図とは逆に強制労働ではなかったことの証拠書類となっていますが、国際制度の”私物化”ともいうべき政治利用は、国際社会のみならず、結局は、自国をも窮地に追いやることになるのではないでしょうか。

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コメント (2)
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