万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国主導の南北再統一は危険なシナリオ

2015年09月06日 15時19分03秒 | アジア
 9月3日に北京で盛大に催された抗日戦勝70周年記念行事は、賓客として遇された韓国の朴大統領が、中国の習近平主席の傍らで、にこやかな表情を見せておりました。中韓蜜月を強く印象付けたのですが、その背景には、韓国の対北朝鮮戦略の転換があったとも指摘されております。

 先日、朝鮮半島では南北の緊張が一気に高まる一場面がありましたが、一説によりますと、中国のとりなしで事なきを得たとも伝わります。この説の真偽は不明なものの、韓国は、北朝鮮に対する中国の影響力に期待を寄せており、ゆくゆくは、南北再統一を中国の手を借りて実現する方針に転じたのではないか、とする憶測もあります。否、中国が温めてきた南北再統一シナリオに、長年の対韓工作活動が功を奏し、韓国が同調したとも推測されます。仮に、この説が正しいとしますと、第二次朝鮮戦争を経ずして南北の再統一が実現するのですが、たとえ平和的な手段であったとしても、手放しでは歓迎できるシナリオでもありません。第一に、韓国が、対北朝鮮政策を中国主導にシフトするとしますと、もはや在韓米軍は不要、あるいは、中国が北朝鮮を再統一に向けて説き伏せるまでの間、セーフティーネットして利用するだけの存在となります(”用米論”)。このことは、米韓同盟の終了を意味し、米中関係が悪化した場合、”統一韓国”は中国側に与することが予想されます(もっとも、この点は、必ずしもマイナスとは限らない…)。第二に、中国主導の南北再統一は、共産主義体制、あるいは、北朝鮮由来の全体主義体制が朝鮮半島に全域を覆う可能性を示唆しています。近年の韓国は、法の支配に加えて、民主主義や自由といった価値まで失われつつあることは、その予兆でもあります。そして第三に、日本国もまた、重大な危機に見舞われるかもしれません。重大な危機とは、中国や”統一韓国”による”歴史認識”を口実とした軍事的な圧力に留まらず、日本国内において親中派の活動が活発化することです。これまで米韓同盟を背景に親米の立場にあった韓国系の言論人や諸団体は、本国の戦略転換に呼応して親中にシフトし、内部から日本国の対中従属を誘導することでしょう。

 中国が、百年の計で南北再統一を陰で操っているとしますと、その先には、アメリカをアジアから排除し、日本国までも”21世紀の冊封体制”に組み込む計略が見えてきます。そして、新たに誕生する中国を中心としたアジアの新秩序では、自由も、民主主義も、法の支配も消え去り、華夷秩序である以上、日本国が最下位に位置付けられることでしょう。日本国政府は、アジアにおける地殻変動を見据えた備えを急ぐべきではないかと思うのです。

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コメント (8)
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