東欧各国、難民分担義務化を拒否=「受け入れ可能な人数」主張
EUでは、現在、難民の受け入れ義務化を巡って、加盟国間での深刻な対立が生じています。”難民危機”が、EU分裂まで危惧される抜き差しならない問題に至った理由は、国籍・国境管理権が加盟国の主権的な権限であるからではないかと思うのです。
防衛、安全保障、外交、財政…などに関する権限は、主権的権限の分類として凡そ一致をみるところです。それでは、国籍・市民権等の付与や国境管理に関する権限についてはどうでしょうか。国際法にあっては、国籍・市民権等の付与や国境管理に関する権限は国家の権限とされており、実際に、EUでも、これらの政策権限は、EUの排他的権限ではありません。1993年のEU発足時には、前述した分野も含めて主権的権限に関する政策分野は、原則として政府間協力分野として扱われています。また、1999年のアムステルダム条約で”シェンゲン・アキ”としてEUの枠組みに組み込まれ、必要な範囲でEUレベルでの措置が可能となったものの、”人の自由移動”に関する取り組みがシェンゲン協定(1985年)と言いうEUとは別枠から出発したのは、これらの権限が主権的な権限と見なされていたからに他なりません。現在でも、イギリスやアイルランド等は、シェンゲン・アキに関しては、オプト・アウト(適用除外)を選択しています。ところが、今般、仮に、EUレベルにおける難民の分担に関する決定が、加盟国に対して法的義務を課すとしますと、事実上、これらの権限は、一部ではあれ、EUレベルに移行することになります(後日、司法裁判所に対してEU権限に関する訴訟が起こされる可能性も…)。難民・移民は受け入れ国での永住を希望としているとも伝えられますので、この権限の喪失は、加盟国にとりましては重大な問題です。
そして、この問題は、”難民や移民の受け入れとは義務なのか”、”難民・移民の送り出し国の責任はどうなるのか”、あるいは、”移動の自由”を掲げるEUの場合には、”難民・移民の意思に反した受け入れ先の決定は許されるのか”、といった根本的な問題をも提起しています。どの問題も、簡単に回答を出せる性質のものではありません。国民国家体系の崩壊をも意味しかねない深刻な問題なのですから、まずは、人道的配慮による一時的な庇護措置とし、拒否権(全会一致)の原則的確認(義務化の回避)や紛争解決後の本国送還を含め、加盟国の国民・国境管理の権限は最大限尊重べきではないかと思うのです。
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EUでは、現在、難民の受け入れ義務化を巡って、加盟国間での深刻な対立が生じています。”難民危機”が、EU分裂まで危惧される抜き差しならない問題に至った理由は、国籍・国境管理権が加盟国の主権的な権限であるからではないかと思うのです。
防衛、安全保障、外交、財政…などに関する権限は、主権的権限の分類として凡そ一致をみるところです。それでは、国籍・市民権等の付与や国境管理に関する権限についてはどうでしょうか。国際法にあっては、国籍・市民権等の付与や国境管理に関する権限は国家の権限とされており、実際に、EUでも、これらの政策権限は、EUの排他的権限ではありません。1993年のEU発足時には、前述した分野も含めて主権的権限に関する政策分野は、原則として政府間協力分野として扱われています。また、1999年のアムステルダム条約で”シェンゲン・アキ”としてEUの枠組みに組み込まれ、必要な範囲でEUレベルでの措置が可能となったものの、”人の自由移動”に関する取り組みがシェンゲン協定(1985年)と言いうEUとは別枠から出発したのは、これらの権限が主権的な権限と見なされていたからに他なりません。現在でも、イギリスやアイルランド等は、シェンゲン・アキに関しては、オプト・アウト(適用除外)を選択しています。ところが、今般、仮に、EUレベルにおける難民の分担に関する決定が、加盟国に対して法的義務を課すとしますと、事実上、これらの権限は、一部ではあれ、EUレベルに移行することになります(後日、司法裁判所に対してEU権限に関する訴訟が起こされる可能性も…)。難民・移民は受け入れ国での永住を希望としているとも伝えられますので、この権限の喪失は、加盟国にとりましては重大な問題です。
そして、この問題は、”難民や移民の受け入れとは義務なのか”、”難民・移民の送り出し国の責任はどうなるのか”、あるいは、”移動の自由”を掲げるEUの場合には、”難民・移民の意思に反した受け入れ先の決定は許されるのか”、といった根本的な問題をも提起しています。どの問題も、簡単に回答を出せる性質のものではありません。国民国家体系の崩壊をも意味しかねない深刻な問題なのですから、まずは、人道的配慮による一時的な庇護措置とし、拒否権(全会一致)の原則的確認(義務化の回避)や紛争解決後の本国送還を含め、加盟国の国民・国境管理の権限は最大限尊重べきではないかと思うのです。
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