万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

意味深長な習主席演説の30万人兵員削減宣言

2015年09月03日 15時04分52秒 | アジア
【抗日70年行事】習近平国家主席の演説全文
 本日、中国の首都北京では、抗日戦勝70周年を記念する式典と盛大な軍事パレードが催されました。この式典の席で、習近平国家主席は、平和路線を強調する演説の件として、人民解放軍の人員を30万人削減すると宣言しています。

 兵員30万人の削減宣言は、文字通りに理解すれば軍縮を意味しますので、平和国家志向の姿勢を内外に印象付けるために、敢えて人員削減に踏み込んだと解釈されます。昨今、中国の軍拡と覇権主義に対する国際社会の警戒感は高まる一方であり、中国としては、海外メディアを前にした演説は、中国脅威論を払拭する絶好の機会であったのかもしれません(もっとも、人海戦術からハイテク兵器戦への転換を意味するならば、脅威の増幅になりますが…)。その一方で、兵員30万人の削減に触れる部分は、演説の文章全体からしますと、どこか浮いているような違和感があります。メディア各社がこの部分を強調して報じるのも、特にこの件に唐突感があったからなのでしょうが、この違和感は、一体、どこからくるのでしょうか。考えても見ますと、この削減宣言は、人民解放軍をも前にしたものですので、当の人民解放軍にとりましては、晴れの日に、突然、リストラを宣言されるようなものです。この点を考慮しますと、習主席は、人民解放軍に対して自らに対する絶対的な忠誠を使わせるために、将来のリストラで脅しをかけているのかもしれません。あるいは、江沢民派との権力闘争に未だ決着が付いていないとしますと、30万人の削減とは、江派に属する人民解放軍に対する粛清宣言とも推測されます。それとも、30万人とは、将来予定されている戦争での人民解放軍の推定殉死者の数なのでしょうか。

 古来、中国では、政治的発言には、”分かる人には分かる”メッセージが隠されているとされています。本日の演説で言及された人民解放軍30万人人員削減の真の意味は、やがてその行動によって明らかになるのかもしれません。

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コメント (2)
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