万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

AIIBに見る中国主導の朝鮮半島再統一シナリオ

2015年09月11日 15時02分15秒 | 国際政治
アジア投資銀、参加70カ国超に=初代総裁が見通し
 問題を山積したまま見切り発車した観のあるAIIB。中国経済の変調から行く先が危ぶまれていますが、先日、初代総裁の金立群元中国財政次官が韓国を訪れたと報じらております。

 近年の中国と韓国の急接近は、東アジアの政治地図を塗り替える勢いですが、果たして、中国主導の朝鮮半島再統一のシナリオは存在するのでしょうか。この件に関して注目されるのは、上述した金総裁と朴大統領との会談内容です。”参加国は70カ国を超える”とする金総裁の発言と”副総裁職を求めた”とする韓国側の要求ばかりが関心を集めておりますが、会談の席で、朴大統領は、AIIBによる北朝鮮への融資を持ちかけたとも報じられております。この提言から推測されることは、中国と韓国の間に統一に要する費用に関する合意が成立したのではないか、ということです。金体制の下、北朝鮮の経済レベルが、最貧国に分類されるほど低い状態にあることから、インフラの整備など、南北の統一には莫大な費用がかかると試算されておりました。予測される経済的な負担は、韓国側が南北再統一に消極的であった理由の一つでもあったのです。しかしながら、仮に、AIIBが北朝鮮にすることで、懸案であった財政問題に解決の目途がたつとなりますと、どうでしょうか。中国が、AIIBの融資を南北両国への呼び水として、自国主導の朝鮮半島再統一を実現するシナリオは、あり得ないとは言い切れません。

 その一方で、北朝鮮は、核・ミサイル開発によって国連制裁対象国であり、北朝鮮への融資は、即、国連加盟国としての違反行為に他なりません。たとえ中国が拒否権を握っているとしても、AIIBの他の加盟国が、国連決議違反の融資を異議なく承認するとは思えません。また、中国が、自国の国策としての朝鮮半島再統一戦略に、”国際機関”であるはずのAIIBを利用すれば、AIIBの政治的中国従属は動かしがたい事実となります。この”平和統一”のシナリオ、存在しているとしても、日本国、並びに、国際社会にとりましては、決して平和と安定の到来を意味しないのではないでしょうか。

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コメント (2)
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