北方領土においてロシア側が経済特区を設置した一件は、経済特区とは何か、という国際社会で考えねばならない新たな問題をも提起しているように思えます。何故ならば、ロシアによって経済特区が設置されれば、日ロ間での懸案となってきた主権問題が解消され、好都合であるとする期待論があるからです。
プーチン大統領の訪日に際して日ロ間で合意された共同開発案では、両国の何れが行政管轄権(主権)を及ぼすのか不明であるため、仮に、ロシアが徴税権を行使した場合には、日本国が、北方領土の主権がロシア側にあることを暗に認めたことになりかねない、というリスクが指摘されてきました。しかしながら、外務省幹部のものと報じられている上述の期待論では、経済特区の設置と同時にロシアが徴税権を‘放棄’し、いわば、北方領土の“無国籍化”を予測しているのです。
もっとも、徴税権は、主権を構成する主要な国家の権限とされてはいますが、防衛や安全保障に関する政治的権限や司法・警察等の権限が残されている以上、日ロ間の主権問題が解消するとは言い難く、また、ロシア側が放棄したとしても、即、日本国側に主権が戻るわけでもありません(素朴な疑問としては、徴税権が放棄されるとすれば、同地域の財政はどうなるのでしょう…)。領土問題という性質に鑑みれば、国境画定を含む平和条約の締結は必要不可欠です。こうした点を考慮しますと、期待論は無理筋なようにも思えますが、議論の本筋とは別にここで認識すべきは、“徴税権の放棄”という言葉が、特区の設定と結びついて、何の躊躇もなくするりと出てきていることです。このことは、国際社会の一部においては、経済特区の設定が主権的権限の放棄を伴うとする共通認識が成立していることを示唆しております。
全世界を眺めて見ますと、日本国を含め、各国とも、先を争うかのように外国人を特別に優遇すると共に、一般の国内レベルよりも規制を大幅に緩和した経済特区の設置を急いでいます。各国が揃って同じ政策を採用するとなりますと、背後にこの政策を推進している国際的な組織が存在していると推測せざるを得ません。そして特区の設置が、国家の主権の及ばない、あるいは、制限されている特定地域の設置を意味するとしますと、今日の特区は、全世界に貿易拠点となる海外領土、租界や租借地を設けて、それらをネットワークで結んだ植民地時代の経済戦略と極めて似通っているように思えるのです。現代のネットワークの形成は、特定の国ではなく、国際経済組織が進めているのでしょうが、国家の側からしますと、自国の法域が侵食されると共に、自国であっても自国ではない一部地域が出現することとなります。
国民の多くは、経済特区が意味するところについて、政府から正直な説明を受けていません。イギリスのロンドンなどを見ますと、既にイギリスという国の首都というよりも、国際経済組織の拠点の観があります。政府が、国内向けの経済政策の一環として経済特区の設置を国民に説明しながら、その実は、国外向けに、一部であれ主権的権限を放棄し、自国を勝手に国際経済組織の利益のために開放しているとなりますと、この行為は、重大なる国民に対する背任行為となりかねないのではないでしょうか。
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もっとも、徴税権は、主権を構成する主要な国家の権限とされてはいますが、防衛や安全保障に関する政治的権限や司法・警察等の権限が残されている以上、日ロ間の主権問題が解消するとは言い難く、また、ロシア側が放棄したとしても、即、日本国側に主権が戻るわけでもありません(素朴な疑問としては、徴税権が放棄されるとすれば、同地域の財政はどうなるのでしょう…)。領土問題という性質に鑑みれば、国境画定を含む平和条約の締結は必要不可欠です。こうした点を考慮しますと、期待論は無理筋なようにも思えますが、議論の本筋とは別にここで認識すべきは、“徴税権の放棄”という言葉が、特区の設定と結びついて、何の躊躇もなくするりと出てきていることです。このことは、国際社会の一部においては、経済特区の設定が主権的権限の放棄を伴うとする共通認識が成立していることを示唆しております。
全世界を眺めて見ますと、日本国を含め、各国とも、先を争うかのように外国人を特別に優遇すると共に、一般の国内レベルよりも規制を大幅に緩和した経済特区の設置を急いでいます。各国が揃って同じ政策を採用するとなりますと、背後にこの政策を推進している国際的な組織が存在していると推測せざるを得ません。そして特区の設置が、国家の主権の及ばない、あるいは、制限されている特定地域の設置を意味するとしますと、今日の特区は、全世界に貿易拠点となる海外領土、租界や租借地を設けて、それらをネットワークで結んだ植民地時代の経済戦略と極めて似通っているように思えるのです。現代のネットワークの形成は、特定の国ではなく、国際経済組織が進めているのでしょうが、国家の側からしますと、自国の法域が侵食されると共に、自国であっても自国ではない一部地域が出現することとなります。
国民の多くは、経済特区が意味するところについて、政府から正直な説明を受けていません。イギリスのロンドンなどを見ますと、既にイギリスという国の首都というよりも、国際経済組織の拠点の観があります。政府が、国内向けの経済政策の一環として経済特区の設置を国民に説明しながら、その実は、国外向けに、一部であれ主権的権限を放棄し、自国を勝手に国際経済組織の利益のために開放しているとなりますと、この行為は、重大なる国民に対する背任行為となりかねないのではないでしょうか。
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