北朝鮮ミサイル 日米両国の連携けん制する狙いも
本日早朝、グアム沖へのミサイル発射を予告していた北朝鮮は、突如、日本海方面に向けてミサイルを発射し、東北地方の上空を越えて襟裳岬東の太平洋上に落下したと報じられております。通告なしのミサイル発射ですので、事態は深刻です。
従来のミサイル発射実験では、日本列島を越えることはあっても、通信衛星の打ち上げといった名目で実施されており(2016年2月の実験では地球観測衛星“光明星4号”)、一先ずは、日本国政府への通告もありました。ところが、今般の発射では事前通告はなく、いわば、“奇襲”として行われたのです。それでは、このミサイル発射、国際社会においてどのような意味を持つのでしょうか。この問題は、政治問題なのか、法律問題なのか、という些か固い議論にもなりますが、本件の行為の意味付けは、国際社会における北朝鮮に対する措置にも大きく影響します。
今般の実験では、ミサイルに核兵器を搭載しておらず、この点からしますと、NPT等の核兵器に関する条約違反とは言い難い側面がありつつも、国連憲章では、加盟国に対して紛争の平和的な解決を義務付けていますし、北朝鮮の行為が、核・弾道ミサイル開発の中止を求めてきた2006年以降の国連安保理決議に違反することは確かです。国際社会としては、北朝鮮を“犯罪国家”として位置付け、国際社会の“警察活動”として対応することができます。国連における常任理事国の役割は、国際社会の“保安官”ですので、本来であれば、ロシアも中国も“警察活動”を担う義務を負っており、国連の枠組、あるいは、米国単独の武力制裁、もしくは、石油禁輸まで含む対北経済制裁の徹底を支持する立場にあります。
その一方で、北朝鮮は、この問題を政治問題と見なしています。忘れられがちですが、2013年3月11日に、北朝鮮は朝鮮戦争の休戦協定を宣言しており、同国の主観に基づけば、既に米軍とは戦争状態にあります(米国の同盟国である日本国も仮想敵国…)。この立場に立てば、今般のミサイル発射も同国の戦闘行為の一環であり、“戦争状態”にありながら“戦闘状態”に至っていない状況となります。この状況は、1939年9月にナチスがポーランドに侵攻し、英仏も対独宣戦布告をしながら、凡そ8か月にわたって戦闘らしい戦闘がなかった第二次世界大戦の事例と類似しています。戦争初期の無戦闘状態は、当時、“奇妙な戦争”、“いかさま戦争”、あるいは、“まやかし戦争”と称されましたが、政治問題であるとしますと、アメリカが応戦を決意すれば、即、戦闘の火蓋が切って落とされることとなります。
後者の場合には、中国とロシアの対応は前者とは違ってきます。両国が北朝鮮を背後から支えてきた“黒幕国”であることは疑い得ないことですが、この問題の複雑さは、朝鮮戦争が、国連対北朝鮮・中国・ソ連の対立構図で戦われたところにあります。“国連軍”とは、実質的には米軍であり(並びに、韓国軍・イギリス軍)、朝鮮戦争の休戦協定も、国連軍を代表する米軍、並びに、朝鮮人民軍並びに中国人民志願軍のトップの間で署名されているのです。言い換えますと、この問題を政治問題として扱うと、中国とロシア、特に人民志願軍を朝鮮半島に派兵し、休戦協定に名を連ねた中国は、戦争の当事国とならざるを得ないのです。因みに、1961年に締結されたソ朝友好協力相互援助条約と中朝友好協力相互援助条約は、前者はソ連邦崩壊、並びに、冷戦終結後の1996年に破棄されていますが(2002年2月に締結されたロ朝友好善隣協力条約では軍事同盟条項を含まない…)、後者は2001年に更新され、参戦条項に基づいて武力攻撃を受けた場合には発動されます(もっとも、北朝鮮側がアメリカに対して攻撃を仕掛けた場合には、中国は、参戦を見送る方針らしい…)。
今般の発射を受けて、日本国政府は、国連に対して緊急の安保理会合の開催を求めています。そして、ここで注目されるのは、同安保理における中国とロシアの出方です。果たして、両国は、上述した二つ内、どちらの立場において振る舞うのでしょうか。前者を選択すれば、陰に隠れて推進してきた北朝鮮支援政策を諦めねばならず、後者を選択すれば、アメリカとの直接対峙を覚悟しなければなりませんし、常任理事国でありながら“国連の敵”という矛盾した立場にも立たされます(中国の常任理事国入りは1971年のアルバニア決議による…)。開催が予定されている緊急安保理は、中国、並びに、ロシアの旗幟の如何が鮮明になると云う意味において、北朝鮮問題の一つの山場となるのではないかと思うのです。
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本日早朝、グアム沖へのミサイル発射を予告していた北朝鮮は、突如、日本海方面に向けてミサイルを発射し、東北地方の上空を越えて襟裳岬東の太平洋上に落下したと報じられております。通告なしのミサイル発射ですので、事態は深刻です。
従来のミサイル発射実験では、日本列島を越えることはあっても、通信衛星の打ち上げといった名目で実施されており(2016年2月の実験では地球観測衛星“光明星4号”)、一先ずは、日本国政府への通告もありました。ところが、今般の発射では事前通告はなく、いわば、“奇襲”として行われたのです。それでは、このミサイル発射、国際社会においてどのような意味を持つのでしょうか。この問題は、政治問題なのか、法律問題なのか、という些か固い議論にもなりますが、本件の行為の意味付けは、国際社会における北朝鮮に対する措置にも大きく影響します。
今般の実験では、ミサイルに核兵器を搭載しておらず、この点からしますと、NPT等の核兵器に関する条約違反とは言い難い側面がありつつも、国連憲章では、加盟国に対して紛争の平和的な解決を義務付けていますし、北朝鮮の行為が、核・弾道ミサイル開発の中止を求めてきた2006年以降の国連安保理決議に違反することは確かです。国際社会としては、北朝鮮を“犯罪国家”として位置付け、国際社会の“警察活動”として対応することができます。国連における常任理事国の役割は、国際社会の“保安官”ですので、本来であれば、ロシアも中国も“警察活動”を担う義務を負っており、国連の枠組、あるいは、米国単独の武力制裁、もしくは、石油禁輸まで含む対北経済制裁の徹底を支持する立場にあります。
その一方で、北朝鮮は、この問題を政治問題と見なしています。忘れられがちですが、2013年3月11日に、北朝鮮は朝鮮戦争の休戦協定を宣言しており、同国の主観に基づけば、既に米軍とは戦争状態にあります(米国の同盟国である日本国も仮想敵国…)。この立場に立てば、今般のミサイル発射も同国の戦闘行為の一環であり、“戦争状態”にありながら“戦闘状態”に至っていない状況となります。この状況は、1939年9月にナチスがポーランドに侵攻し、英仏も対独宣戦布告をしながら、凡そ8か月にわたって戦闘らしい戦闘がなかった第二次世界大戦の事例と類似しています。戦争初期の無戦闘状態は、当時、“奇妙な戦争”、“いかさま戦争”、あるいは、“まやかし戦争”と称されましたが、政治問題であるとしますと、アメリカが応戦を決意すれば、即、戦闘の火蓋が切って落とされることとなります。
後者の場合には、中国とロシアの対応は前者とは違ってきます。両国が北朝鮮を背後から支えてきた“黒幕国”であることは疑い得ないことですが、この問題の複雑さは、朝鮮戦争が、国連対北朝鮮・中国・ソ連の対立構図で戦われたところにあります。“国連軍”とは、実質的には米軍であり(並びに、韓国軍・イギリス軍)、朝鮮戦争の休戦協定も、国連軍を代表する米軍、並びに、朝鮮人民軍並びに中国人民志願軍のトップの間で署名されているのです。言い換えますと、この問題を政治問題として扱うと、中国とロシア、特に人民志願軍を朝鮮半島に派兵し、休戦協定に名を連ねた中国は、戦争の当事国とならざるを得ないのです。因みに、1961年に締結されたソ朝友好協力相互援助条約と中朝友好協力相互援助条約は、前者はソ連邦崩壊、並びに、冷戦終結後の1996年に破棄されていますが(2002年2月に締結されたロ朝友好善隣協力条約では軍事同盟条項を含まない…)、後者は2001年に更新され、参戦条項に基づいて武力攻撃を受けた場合には発動されます(もっとも、北朝鮮側がアメリカに対して攻撃を仕掛けた場合には、中国は、参戦を見送る方針らしい…)。
今般の発射を受けて、日本国政府は、国連に対して緊急の安保理会合の開催を求めています。そして、ここで注目されるのは、同安保理における中国とロシアの出方です。果たして、両国は、上述した二つ内、どちらの立場において振る舞うのでしょうか。前者を選択すれば、陰に隠れて推進してきた北朝鮮支援政策を諦めねばならず、後者を選択すれば、アメリカとの直接対峙を覚悟しなければなりませんし、常任理事国でありながら“国連の敵”という矛盾した立場にも立たされます(中国の常任理事国入りは1971年のアルバニア決議による…)。開催が予定されている緊急安保理は、中国、並びに、ロシアの旗幟の如何が鮮明になると云う意味において、北朝鮮問題の一つの山場となるのではないかと思うのです。
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