万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

イスラムテロの源流-古代の“戦争恍惚師”

2017年08月24日 13時56分19秒 | 国際政治
スペインテロ、初動捜査に批判 事前察知の可能性指摘
 ヨーロッパ諸国ではイスラム過激派によるテロ事件が相次ぎ、先日、スペインのバルセロナで起きた自動車暴走事件でも、罪なき100名以上の人々が死傷する痛ましい惨事となりました。何故、イスラム教徒は無差別殺人という、かくも残酷な行動がとれるのか、これまで理解に苦しんできましたが、“戦争恍惚師”という聞き慣れない言葉を目にした時、この謎が一気に氷解したのです。

 “戦争恍惚師”という用語は、マックス・ヴェーバーが著した『古代ユダヤ教』(1920年初版)という書物に登場してきます(ホロコースト以前の時代の方が、ユダヤ人やユダヤ教に関する研究は比較的自由であった…)。その存在は、古代ユダヤ社会のみならず、汎人類的に散見されるようなのですが、“戦争恍惚師”の“仕事”とは、戦場にあって神憑り的な能力で自軍兵士の恐怖心を吹き払い、兵士達を恍惚状態へと導くことにあります(破壊神的…)。集団エクスタシスに陥り、我を忘れた兵士達は、狂犬の如くに荒れ狂い、手段を選ばずに敵兵を虐殺し得たのです。ヴェーバーは、旧約聖書の『サムエル記』に登場するイスラエル王国の最初の王、サウルをその典型例としていますが、サウルと並んで挙げているのが、イスラム教の始祖であるかのマホメットの名なのです。

 ヴェーバーが指摘するように、マホメットの基本的な役割が“戦争恍惚師”であったとしますと、イスラム教徒が、剣を以って西はイベリア半島まで破竹の勢いで版図を広げ、広大なるイスラム帝国を建設し得た理由も分かります。また、イスラム教が信者に麻薬の摂取を許し、実際に暗殺等に際して服用させた理由も、恍惚状態を現出させる作用を期待してのことであったのかもしれません。理性の解除こそイスラムの“強み”であるとしますと、マホメットが“戦争恍惚師”として兵士達にかけた魔力は、イスラム教が膨大な数の信者を擁し、世界三大宗教の一角をなしている今日に至るまで、連綿と維持されていると考えられるのです。

 イスラム教の聖典である『コーラン』では、異教徒に対する攻撃や殺害を容認しておりますが、それだけでは説明のつかないテロリスト達の狂気は、マホメットの“戦争恍惚師”としての性質を以ってはじめて理解の範疇に入ってきます。それは、イスラム教が今日の国際秩序・国際平和に対して脅威をもたらしている真の理由、すなわち、イスラム教が内包している本質的問題が明らかになることでもあり、イスラム教は、その生みの親であるマホメットに遡って自らの内にある反理性的な狂暴性に向き合う必要がありましょう。

 そして、この“戦争恍惚師”が『旧約聖書』にあっては職業的預言者集団とも関わり、かつ、人類社会に普遍的に見られる現象でもあることは、イスラム教に限らず、反理性主義の台頭という世界史の裏側を理解する上でも役立つように思えます。アドルフ・ヒトラーも、20世紀に突如として出現した“戦争恍惚師”の一人であったかもしれませんし、“狂人”とも称される北朝鮮の指導者も、今日にあって、その役割を演じているのかもしれないのですから。

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