Meeting Mister Thomas / Rene Thomas ( 仏 Barclay 84 091 )
欧州盤の悪口ばかり言ってると誤解されてはいけないので、今日はベタ褒めするレコードです。
これは最高のジャズ・ギターアルバムです。 Rene Thomas のギターがちゃんと前面に出てしっかりと屹立して、シングルトーンのきれいな音で弾きまくります。
この人の音色はウェスによく似ていて、ちゃんと West Coast Blues もやってます。 ジャズ・ギターはロックとは違って音色にこだわりを
みせない場合が多くて、それがこの分野の発展を妨げてしまったように思えますが、これはギターがすごくいい音で鳴っています。
そして、Lou Bennett が決して弾き過ぎず、それでいて全体のトーンカラーを渋く決定づける魅力的なオルガンを聴かせます。
オルガンというのは使い方さえ間違わなければ、こんなにも素晴らしいんだ、ということを証明しています。
Jacques Pelzer もasで参加していますが、彼も決して吹き過ぎることなく、魅力的な音色で全体のサウンドカラーを多彩にするのに貢献しています。
これが Jackie McLean や Phil Woods だとうるさすぎてぶち壊しだったでしょうが、この人はそこまで個性が強くないので適任でした。
ベース、ドラムも切れの良くはじけるようなテンポで全体を支えており、ダレるところは微塵もありません。
ステレオ期直前の完成されたモノラルサウンドが艶やかで、趣味のいいエコーも効いていて、Rene Thomas のギターが最高の状態で録れていて、
オーディオ的な快楽も満点です。
欧州ジャズは知的な雰囲気という切り口で語られることが多くてその紋切り型の言い分にはうんざりするのですが、このレコードに限っては
確かにそういう言い方が正しいと思います。 オルガンが入っていてここまで上品に聴かせるのは、アメリカでは無理だったでしょうね。
けなす箇所が1つもないレコードです。 音が良ければ、CDも手に入れたいところです。
iPodで延々とリピートして流していたい、そういう聴き方にも立派に耐えうる、これは本当に見事な音楽です。