廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ドライでビターだけど・・・・・

2014年01月20日 | Jazz LP (Europe)
私がレコード漁りから離れている間に盛り上がっていたらしいイタリアのジャズ。 何が契機で、どのようにバブルが膨れて、そしてはじけたのか
よく知りません。 まあ、そんなものは知らないほうが幸せなのかもしれませんが。 



4 Quartetto / Quartetto Di Lucca ( RCA ITALIANA PML 10361 )


ヴィブラフォンのジャズを聴くときに我々が期待するのは、何だかんだ言っても、やはりルパン三世のテーマ曲のような感じではないでしょうか。
他の楽器では決して出すことができない、あの幻想的で浮遊するような響き。 聴き慣れた管楽器やピアノトリオの間隙をぬってあの音が現れる時、
自分がジャズ愛好家であったことを誇りに思うでしょう。

でも、それを期待してこれを買うと、きっとがっかりすることになります。 

イタリア産だし、さぞや優雅な演奏なんだろうと思いきや、ヴィブラフォンもピアノもまるでリズムの拍子に合わせて叩きつけるかのような弾き方です。
全編通してそういう感じで、これには驚きます。 録音はこの時期のこのレーベルらしいクリアですが残響の少ない音質で、更にこういう演奏をする
もんだから、ヴィブラフォンというよりは「鉄琴」というほうがピッタリな感じです。

このグループがどういう活動をしていたのかはよくわかりませんが、ジャケットの写真を見る限りはみんなまだ若い感じです。 録音は62年、
欧州ではポスト・ハードバップの動きがあった頃で、このグループもありきたりのジャズなんかやらないぞという想いがあったのかもしれません。
でも、そうだったとしても、例えばアメリカの新主流派のような新しい音楽の萌芽が見られるかというと、それは全くありません。 力任せに鍵盤を
叩きつけているだけ、という印象しか残りません。 新しい何かを求めていたのなら、やり方を間違えたね、と慰めてあげたくなります。

逆に好意的な見方をすれば、甘っちょろい抒情を排したドライでビターな演奏、という言い方もできます。 ヴィブラフォンを入れたカルテットという
いわばひ弱な編成でもこんな硬派な演奏ができるんだぞ、ということを証明しようとしているようにも聴けます。 最後のスタンダード曲は
制作側からの要請だったのかもしれませんが、これ自体はやはり甘味のないドライな演奏ですが、それまでずっとハードな演奏が続くので、
この曲( Like Someone In Love )がしっとりとした演奏に聴こえます。 このレコードの後、彼らはどうなったのでしょう。

欧州ジャズでヴィブラフォンのお勧めを、と言われても、間違ってもこれを推すことはないでしょう。 その場合はビクター・フェルドマンか
(退屈な演奏が多くて、別の意味で推せませんが)、ミヒャエル・ナウラか(管楽器の音に我慢しなければいけませんが)、ということになるのでしょうか。
控えめに言って、コレクターが持っていて喜ぶだけのレコード、という気がします。 380ドル。



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