廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

トリビュート作がオリジナルを超える瞬間

2014年11月01日 | Jazz CD
中古探しは一時凍結中なので新譜を少し買いましたが、素晴らしい盤に出会えました。





■ Marco Guidolotti / 'S Wonderful  ( Tosky Records TSK013 )

伊バリトン奏者によるマリガン・トリビュートの新譜ですが、これが凄いことになっています。

トランペットを加えたピアノレスのカルテットでマリガン~ベイカー・カルテットがパシフィック・レーベルへ録音した楽曲を中心に取り上げていますが、
嬉しいことにナイト・ライツも入っています。 

私はウェストコースト・ジャズが嫌いなので最初はこの盤は素通りしていたのですが、試聴可能になっていたので聴いてみると、これがビックリする
くらいカッコいいハード・バップへと塗り替えられていたのです。 

静まり返った深夜のスタジオで録音されたかのような独特の空気感が生々しく、その中をベースとドラムがスピード感のあるリズムを刻み、
その上でバリトンとトランペットが激しくブローしていく。 ピアノがない分、4人がつくる音楽の空間の拡がりが大きく、それが静かな暗い背景の中で
くっきりと浮かび上がります。 こんなにも演者と楽曲が「立っている」音盤には中々お目に掛かれません。

これを聴くと、ウェストコースト・ジャズって一体何だったんだろう、と考えさせられます。 あの乾いて枯れたサウンドと室内楽的なアレンジで
作られた世界に優秀な演奏家たちが閉じ込められていたのを、このアルバムがぶち壊して解放してくれたかのようです。

これは素晴らしい。



■ Kenny Barron~Dave Holland / The Art Of Conversation  ( Blue Note / Impulse B002169802 )

このいただけないジャケットからは想像できない素晴らしい音楽です。 ピアノにはあまり興味のない私も、これには素直に感動します。

デイヴ・ホランドはベースというよりはホーン楽器のように演奏するので、ピアノとホーンによるデュオ作品のようです。
2人のオリジナル作品を軸にした選曲という地味さがとても好ましく、2人の素晴らしい演奏に酔いしれることができます。
スタンダードなんかだと楽曲に対する自分の好きなイメージが却って鑑賞を邪魔することが多いのですが、こういう選曲だと素直にその音楽に
接することができます。

この2人は音楽を本当に音楽らしく表現できる稀有な人たちなのでいいのは当たり前といえば当たり前かもしれませんが、星の数ほどある
レコードやCDの中で心からそう感じさせてくれる人が一体どれだけいるでしょうか。 

これも素晴らしい。



コメント (12)
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