廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

欧州版 Norgran

2014年11月23日 | Jazz LP (Europe)

Franco Cerri / And His European Jazz Stars  ( 伊 Columbia 33 QPX 8010 )


このレコードの印象を一言で言うと、「欧州のノーグラン・レコード」。

フランコ・チェリのギターはとにかくタル・ファーローにそっくりで、もっともあれほど上手くはなくて技術的にはその足許にも及びませんが、
ブツブツと歯切れのいい音やフルアコらしい音色の作り方がまったく同じです。 また、グループのアンサンブルのスカスカ感といい、
重心が高く地に足がついていないようなテンポ感といい、バップ色やブルース感の一切ないノーマン・グランツのレコードに一貫して見られる
「中庸なジャズ」と瓜二つな内容が展開されます。 

ノーマン・グランツは最盛期がとうに過ぎて老齢に差しかかった巨匠ばかりを好んで使ったのでああいうレコードになった訳ですが、ここに集まったのは
若くこれから登り坂を上ろうとする演奏家がメインだったのにこういう演奏になったのは不思議です。

曲によって演奏者の構成がクルクル変わるので全体的な統一感がなく、かなり散漫な印象です。 その中で目立つのはフラヴィオ・アンブロセッティの
アルトですが、この楽器特有の軽快さがない吹き方なので少しテナーっぽく聴こえます。 これだけがグループの中で老成した演奏なので、
アンサンブルの中にうまく馴染めずに浮いている感じが否めませんが、それ故に却って演奏が前に押し出されていて、他ではあまり聴く機会のない
この人の姿がよくわかります。 欧州ジャズらしく各々の演奏はしっかりしていますが、唯一、ジョルジュ・グルンツのピアノだけがヘタで耳障りです。
早々とアレンジャーへとシフトしたのは正解だったんだなということがわかります。

こうやって部分的なところばかりに耳が行くことからもわかる通り、全体的には音楽的な情感が乏しく、聴いていても心を動かされることはないので、
そういう切り口での褒め方はできません。 歌劇の国の音楽とはとても思えない内容だけれど、ただ、このレコードは大手レーベルの確かなモノづくりの
おかげで音がいいし、ジャケットや盤の質感も高いので、コレクターが有り難がる理由はよくわかります。 だから、聴くためのレコードではなく、
持つためのレコードだろうと思います。

英国やイタリアのコロンビアの音源はアメリカではエンジェル・レーベルがライセンス販売していましたが、アメリカ盤は見たことがないし、
あるのかどうかもよくわかりませんが、60年代初頭にリリースされたこの内容をアメリカに持って行っても、アメリカ人から見れば自国では
10年近く前に作られていたような音楽をなんで今更、という感じだったんでしょう。 相手は、既に "Kind Of Blue" を産み出していた国です。
フランコ・チェリ本人も、これでは恥ずかしくて持ってはいけなかったでしょう。



コメント (2)
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