廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

今週の収穫

2015年10月10日 | ECM

Ralph Towner, Gary Burton / Match Book  ( 西独 ECM 1056 ST )


ネットの世界では既に称賛の嵐が吹いているこの作品、ジャズを33年間聴いてきたのに私はその存在すら知りませんでした。 自分が如何に偏った聴き方を
してきたか、ということを今更ながらに思い知らされます。 音楽への好奇心は人並み以上に強いはずなのに、若い頃は稀少盤蒐集に夢中だったせいで、
自分で自分の首を絞めていたんだなということに今頃気が付く始末です。 こういう類のレコードは廃盤蒐集家だった私の好みにはそぐわず、当時は
バカにして手に取ることすらしませんでした。 でも、自分が変わることができて本当によかったと思います。

ラルフ・タウナーの12弦ギターがとてもいいです。 12弦ギターは6弦よりも左手で弦を押さえるのが厄介だし音も濁りやすいのですが、タウナーは非常に
クリアできれいに響かせています。 ヴィヴラフォンがいるお蔭で和声を作ることにさほど気を使わなくて済むからなんでしょう、ガチャガチャとコードを
かき鳴らすこともなく、非常にすっきりとした演奏に終始しています。 ギターとしては、この楽器構成はありがたいのではないでしょうか。

ゲイリー・バートンもアルバムコンセプトをよくわきまえており、抑制を効かせながらもヴィブラフォンの最大の武器である美しい響きを活かすことを
忘れない演奏をしていて、それをECMの優れた録音コンセプトが後押ししていて、澄んだ清流の水を手ですくっているような気持ちになります。

"Some Other Time" の感動的な演奏が入っていることや、2人の互いを思いやるような寄り添い方から、全体的にビル・エヴァンスのアンダーカレントを
想起させる素晴らしいアルバムです。 何度も繰り返して聴きたくなります。 このアルバムの素晴らしさを書き残してくれた先人たちの足跡に感謝。

発表当初はアルバム番号1055のバートンとスワローのデュオと箱入りセットとしても発売されていたようなので、もう1枚のほうも探して聴いてみたいです。



コメント
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