廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

初めて聴く「大名盤」

2020年06月17日 | Jazz LP (Verve)

Oscar Peterson / We Get Requests  ( 米 Verve V6-8606 )


40年近くジャズを聴いてきたが、初めてこの「大名盤」を聴いた。こんなのいつでもいいやと跨いでいたら、いつの間にかそんな時間が経っていた。
ここまでくると何かきっかけがないと手に取るのも憚られてくるが、エサ箱を漁っていて目ぼしいものが何もなく、これが750円で転がっていたので、
まあこれが潮時かなと思って拾って来た。

こんなレコードにも浮世の風は吹いているようで、コーティング・ジャケット、DG、モノラル、というのが1番有難いらしい。でも、MGMのT字は
溝の有り無しは何も意味がないし、大方のタイトルがステレオ・プレスの方が音がいいから、先の仕様を有難がる意味が私にはよくわからない。
このアルバムもステレオで聴くのが正しいはずだという理解なので、750円は底値だろうと踏んで拾うことにした。

私はピーターソンのレコードは買わないことを信条としている。この人はレコードで聴いてもどうも面白くなくて、持っていても聴くことがなく、
私には買う意味がない。こういうアーティストは他にもいて、例えばフリップ・フィリップス、ルイ・スミス、ロイ・エルドリッジなんかもそうだ。
家にはレコードが1枚もない。

そういう中でこの「リクエスト」を聴いたが、やはり複雑な気分で聴き終えた。もちろん圧倒的な演奏だし、わかりやすいし、構成もいいし、
ということで、どこにもケチを付けるべきところはないと思うけれど、これが何かスペシャルな内容かと言うと、どうもそうは思えないのだ。
過去に名盤100選を編んだ人たちは、他に山ほどある秀作たちを差し置いてまで、どうしてこれを選んできたのだろう。

プリーズ・リクエストという邦題が付く割りには、選曲の内容はスタッフ・スミスの楽曲を取り上げるなど意外にシブくて、少なくとも初心者向きの
プログラムには思えない。ピーターソンはスローな楽曲でみせる繊細で抑制された表情が素晴らしいけれど、アップテンポになると人が変わった
ように情感の薄い演奏になってその落差が大きく、アルバム全体としては散漫な印象が残る。ピアノ作品という名盤の宝庫において、果たして
これがデビーやケルンと肩を並べる名盤なのか、というと「どうなんだろう?」という歯切れの悪い言葉でお茶を濁してしまうことになる。

ちなみにステレオプレスの音場感は良好だ。ヴァーヴなのでハイファイで高音質なんてことはまったくないけれど、素朴で自然なサウンドで、
聴いていて不満は何もなく、音楽に集中できる。レイ・ブラウンのベースも重圧に響いていて、とてもいい。


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