John Coltrane / The Africa Brass Sessions, Vol.2 ( 米 ABC-Impulse AS-9273 )
Africa / Brass セッションで政治的な理由から収録しきれなかった "Song Of The Undergroud Railroad" に既発の別テイクを混ぜてコルトレーンの
死後にリリースされたのがこのアルバム。こんなジャケットにしなければもっと多くの人に聴いてもらえるだろうに、不幸なアルバムだ。
コルトレーンのオルタネイト・テイクはオリジナル・テイクとは違う雰囲気で演奏されたものが多く、これらもそうだ。特にここに収められた
"Greensleeves" はゆったりとした長めの演奏で、オリジナル・テイクよりこちらの方が好きだ。原曲の良さがよりわかりやすく出ている。
しかし、このアルバムの白眉は何と言っても "Song Of The Underground Railroad" だ。"Traditional" ということになっているが、このタイトルは
どうやら総称らしく、19世紀の奴隷制度下で人々が日常的に口ずさんでいた無数のワーク・ソングを念頭に置いたもののようだ。その語感が連想
させるイメージをそのまま旋律化したような感じで、これが最高にカッコいい。まるで何かの映画音楽のような、クールでハードボイルドな曲想が
疾走する。この時のセッションは、どれも楽曲としての出来の良さが際立っていて、最高の仕上がりだった。インパルスのコルトレーンを聴く
キーワードは、「カッコいい」だ。
1974年のABC Records時代の発売なのでヴァン・ゲルダーのカッティングではないが、残響が程よく効いた深夜の演奏を思わせる音場感で、
これがかなりいい。正規タイトルの方はヴァン・ゲルダーがインパルスに刻んだ典型的な高音質だったが、こちらはこちらで別の趣きがあって、
病み付きになる。
このサウンドを聴いていると、インパルスの中で好きなアルバムはオリジナルだけではなく、後発のリイシュー盤も聴いてみたいと思うように
なってくる。元の録音がいいから、きっと別の面白さが味わえるだろう。作品の良さに加えて音質のヴァリエーションも楽しめるのだから、
レコードを聴くという趣味には際限がない。