Dollar Brand / Duke Ellington Presents The Dollar Brand Trio ( 米 Reprise R-611 )
1963年に欧州を巡演していたデューク・エリントンがダラー・ブランドのことを知り、LP3枚分の録音をさせて、その中からセレクトして
リリースされたのがこのアルバムで、これがアメリカ市場でのデビュー盤となった。だから、このアルバムは一定の意図をもった編集が
されていて、このアルバムを聴いてダラー・ブランドはこういう人、と決めつけると見誤る可能性がある。
とにかくモンクの "Brilliant Corners" を演っているのが驚きで、ほとんど誰も演奏しないこの難曲のオリジナルの雰囲気をバッチリと再現していて、
これが後について回る「モンクの影響を受けた」という解説に繋がっている。他は自身のオリジナル曲で、ピアノの弾き方は明らかにエリントン~
モンクの中を通過している最中。この時期は、まだ手探りで模索している様子がありありとわかる。エリントンにしてみれば、自分と同じ匂いを
嗅ぎ取ったからこそ手を貸したのだろうけど、後の姿を知っている我々にはまだ習作の時期だったんだよ、これは、ということがわかるのである。
音数の少ない、隙間の多い弾き方で、"African Piano" と同一人物だとはとても思えない。楽曲もモンクの作風を真似たものが多く、その研究成果は
上々だと思う。まじめにモンクを研究し、愚直にコピーするところから始めたんだろう。まだ本来の個性は表出していないけれど、打鍵のタッチが
きれいで、ピアノの上手さが強く印象に残る。
ピアノ・トリオとして聴けるレコードは少ないので、そういう意味では貴重な1枚。次作からはこういうモンクへの心酔からはきちんと卒業して、
自分の道を歩き出そうとする姿が捉えられている。そうなる前の珍しい姿が記録された1ショットだ。