Charlie Parker / Historical Recordings, Volume 2 ( 米 Le Jazz Cool JC 102 )
パーカーには公式アルバムの何十倍もの数のブートが存在する。理由はいろいろあるがその中の1つに、当時ミュージシャンたちが
参加していた互助組合がレコード会社に対して待遇改善を要求してたびたびレコーディング拒否のストライキをしていたことがある。
この期間は公にレコーディングを行うことができなかったが、ミュージシャンとしてピークの時期にいたパーカーのような人の場合は
側近たちが記録を残さないのは勿体ないと考えて(当然だ)、クラブの2階でこっそりとポータブル・レコーダーを回すなんてことが
常態化していた。こういうケースをブートとして片づけるのはちょっと違うんじゃないかという気がする。
そういう状態で録音されたので音質が十分ではないものが当然多いが、パーカーの場合はそんな不満を言ってる場合かよという感じはある。
当時から既に100年に1人の天才と言われて、そのすべてを録音するべきだと多くの人が考えていたからこそ、これだけの音源が
残っているわけで、聴かない手はないだろうということだ。
そんな中でこの "Le Jazz Cool" なる非公式盤は音質がかなり良く、パーカーのリアルな姿を垣間見ることができる貴重なアルバムだ。
発売されたのは1960年とのことで、非公式盤にしては異例のレコードの作りの良さにちょっと驚く。ジャケットは背有りで額縁仕様だし、
盤は厚みがあってそれなりの重量があり、溝まである。作り自体は当時の正規レーベルのものとまったく同じ質感になっている。
音質もパーカーのソロ部分は非常にクリアで生々しく、意図的にそういうマスタリングしたと裏ジャケットで解説されている。
曲によっては状態の悪いものも含まれてはいるが、それでも時代を考えればスタジオ録音と遜色のない最良の音質だと考えていい。
1948~50年頃のクインテットの演奏で、ガレスピーとの最初の常設バンドのもの、後任のマイルスがメンバーだったもの、
マイルスが抜けた後釜にケニー・ドーハムが入ってロイヤル・ルーストで演奏したもの、ファッツ・ナヴァロとバド・パウエルが
参加してカフェ・ソサイエティーで演奏したものなどがLP3枚にランダムに収録されている。
楽曲もお馴染みのビ・バップ・チューンもあれば、珍しいものでは "Round Midnight" や "Slow Boat To China" などの貴重な演奏もあり、
これらは聴かずに済ませるわけにはいかないだろう。
パーカーの演奏は非常にしっかりとしていて、調子が良かった様子が嬉しい。初めて聴くような丁寧にアレンジを施した楽曲もあり、
こんな演奏もしていたんだという発見もある。マイルスのマイルドな音色、後のブラウニーを思わせるナヴァロの正確な演奏など、
総合的にも価値のある内容だ。
短い生涯だったが、いろんな記録を読むと音楽家としての日々は多忙で充実していたことがわかる。
その一端に触れることができる素晴らしいレコードだ。