Bill Evans / The Canadian Concert Of Bill Evans ( カナダ Can-Am Records CA1200 )
1974年7月カナダのケベックのキャンプ・フォーチュンで行われたラジオ放送向けの演奏。ゴメス、モレルとのトリオで、司会のナレーションと
観客の拍手が入っているが、ライヴというよりは公開録音という感じだったのではないか。放送後にラジオ・カナダが配布用レコードとして
ごく少数枚のみプレスしたものがコレクターズ・アイテム化しているが、後日こうしてCan-Amレコードとして商用レコードとしてリリース
されている。ブート扱いになっているが、放送局が放出した音源なので、コンサート会場で盗み録りしたものとは毛色が違う。
音質は良好で、当時のエヴァンスが契約していたファンタジーからリリースされていたアルバム群よりもこちらの方が音がヴィヴィッドだ。
ピアノの音がクリアで輝きがあり、自然な音場感。何の違和感もなく聴くことができる。ゴメスのベースも粒立ちのいい音だ。
メランコリックで耽美的なメロディーの楽曲が並び、エヴァンスが優美なタッチで奏でる様は圧巻の出来。物憂げな表情が素晴らしく、
聴いていて圧倒される。音楽が深く透き通った秋の夕暮れの空の色のような雰囲気を帯びていて、これはちょっとすごい演奏だと思った。
優れた音楽家の演奏には公式/非公式など関係ないのだ、ということを思い知らされた。どれだけ汲んでも枯れることのないエヴァンスの
魅力に触れることができる。