Charlie Parker / 1949 Concert (OSR 2405)
パーカーの公式録音(レーベルとの正式契約に基づく録音)は数が多くなく、すぐに全部聴けてしまうので、やがて物足りなくなる。
そして、もっと聴きたいという欲求が募り、人をブートへと走らせるわけである。
但し、問題はその音質。時代的には当時ようやく商用として発売されだしたポータブル・テープレコーダーをライヴ会場に持ち込んで、
ステージ横の階段だったり、裏手のトイレの前だったり、2階の物置部屋なんかでこっそりと録音されたので、音質の悪いものがほとんど。
まあ、パーカーに限らず、これはブートの宿命なのでとやかく言っても始まらない。パーカーの演奏はどんな演奏であっても記録に
残されるべきだと考えた人たちがいて、情熱をもってパーカーの追っかけをやって(中には職を投げ打って)録音したのである。
その甲斐あってたくさんのブートが残っているわけだが、やはり聴くなら音のいいものを聴きたい。この週末、新入荷のコーナーにパーカーの
ブートが纏まって出ていたので(たまたまお客の少ない時間帯だったこともあり)15枚試聴したが、聴くに耐えるものは4枚だけだった。
どれも3桁の値段なので視聴などせずに全部拾ってもいいのだが、やはり音の悪い録音は買っても繰り返し聴くことがないことは
わかっているので、無駄な買い物をするわけにもいかない。そうやって手間のかかる地道な作業もそれなりに楽しいし。
今回拾った中で最も音が良かったのが、このアルバム。1949年のカーネギー・ホールでの演奏ということだが、本当なのかどうかはわからない。
写真に写っている相棒はマイルスだが、演奏しているのはレッド・ロドニー、アル・ヘイグ、トミー・ポッター、ロイ・ヘインズのお馴染みの
面々で、こういうのもブートならではのいい加減さ。
このパーカーの音の良さは驚愕もので、公式録音のものと同等以上の音でアルトの音が聴ける。ブートの演奏は基本的にピアノ・トリオの
音がどれもまともに聴き取れないが、その中でパーカーのアルトだけは音が大きくクリア。どれだけ彼の鳴らす音が大きかったがよくわかる。
パーカーは毎日のようにどこかで演奏して日銭を稼いで暮らしていたから、ここで聴けるのはそういう彼の日常の一コマだったわけだ。
だから演奏は飾り気がなく、手慣れた様子でやっている。クリシェも多く、特に凝ったことをしているわけでもないが、それでもやはり
彼の演奏はどれを聴いても感動させられる。こうして色々聴くことで、伝説の人が身近な存在へと変わっていくのが嬉しい。
稀にこういうのがあるのでPARKERのBOOT探しはやめられません。
拾った残りの3枚がS.C.A.Mです。JPG1も素晴らしい音ですが、JPG1よりもこちらの方がもっと聴きやすい質感に仕上がっていて、パーカーの音がよりきれいに鳴っています。どうもマスタリングを変えているようです。このレコードは580円、S.C.A.Mの3枚は880円でした。bird's eyesシリーズはホント、酷いですよね。パーカーのブートが音が悪い、というレッテルを貼られたのはあのシリーズのせいだと恨んでいます(笑)。