Jimmy Cleveland / Cleveland Style ( 米 EmArcy MG 36126 )
ジミー・クリーヴランドはその名前はいろんなところで目にするから我々にはお馴染みのトロンボーン奏者だが、リーダー作は意外にも少なく、
私の知る限りではエマーシーに残された4枚だけ。このレーベルはジャズのレーベルとしてはカタログ数は多いものの決定的名盤と言われるものが
多くなく、かなり格下の扱いになっている。そのため、そのアルバムは埋もれがちで、クリーヴランドの場合も例外ではない。
彼のアルバムが見向きされないのはどのアルバムも多管編成になっているからだ。多管編成は形式が優先されて音楽が定型化されがちなので
とにかく嫌われるわけだが、そこで重要になるのがアンサンブルのアレンジということになってくる。このアレンジにベニー・ゴルソンや
ギル・エヴァンスが絡んでくるとその様相は一変するが、彼の4枚のリーダー作のうち、2枚はベニー・ゴルソンンが絡んでいてこれが傑作、
残りの2枚はゴルソンが絡まないので駄作、というわかりやすい構造になっている。
第2作のこのアルバムはゴルソンやファーマーが加わり、アレンジはゴルソンのものとアーニー・ウィルキンスのものが混在する。
ウィルキンスのアレンジは面白くないことが多いが、このアルバムはゴルソンが演奏に入っていることからその雰囲気がジャズテットっぽく
なっていて、非常にいい仕上がりになっている。
チューバが通奏低音を受け持つことでハーモニーやアンサンブルがしっかりと安定していて、柔らかく上質な質感となっている。
各人のソロも1級品の出来で、クリーヴランドの演奏はカーティス・フラーなんかよりもずっと上手い。これだけの腕前であれば、誰かいい
テナー奏者の相棒を見つけていればトップクラスのコンボを立ち上げることもできただろうに、そういう面では残念だった。
アレンジの形式感が前面には出ておらず、そこが好ましい。通常の2管編成くらいの自由闊達なジャズとあまり変わらない雰囲気があり、
そこにゴルソン&ファーマーのくすんだ色彩感が施されているから、ハード・バップ好きには堪えられない音楽になっている。
知る人がいないが故の無冠の傑作と言っていい。