Rolf Ericson / And His All American Stars ( 米 Emercy MG-36106 )
れっきとしたロルフ・エリクソンのリーダーセッションなのに、タイトルをこうせざるを得ないほど2人の音楽に支配された内容になっている。
そのおかげで、このアルバムは非常に優れたアメリカのハード・バップの名盤に仕上がった。
ロルフ・エリクソンは1947年から約10年間、アメリカで活動している。ジャズを志すならアメリカに行かねば、ということだったのだろうか、
チャーリー・バーネットやウディー・ハーマンのオーケストラで研鑽を積み、その後は西海岸へ行き、様々なセッションや録音に参加している。
そして1956年の春にスエーデンに戻り、当時渡欧中だったジョーダンやペインらとすぐにスタジオに入り、これらの録音をした。
現地ではメトロノーム社から7インチ盤が同年にリリースされたが、この時に未発表だった曲を加えて57年には英国Nixa、58年にはアメリカの
エマーシーから12インチとしてリリースされた。エマーシーは欧州のレーベルと提携して各社の音源を積極的にアメリカでリリースするなど、
優秀なレコード会社だったのだ。
エリクソンはトランペット奏者としては凡庸。音色はよく鳴りはするものの特徴はないし、アドリブがイマジネイティヴということもないし、
フレーズがよく歌うということもない。この人ならでは、というところは何もないけれど、ここでの演奏は音楽全体の勢いに上手く乗っており、
音楽の仕上がりの良さに大きく貢献している。デューク・ジョーダンの憂いの深いピアノがよく響き、セシル・ペインのずっしりと重いバリトンが
よく歌い、演奏全体は非常に重量感のある手応えで素晴らしい。このレコードは音もよく、すべてが理想的だ。エマーシーというレーベルは
いろんなタイプの演奏をカバーしているのでレーベルとしての統一した印象が持ちにくく、そういうところで損をしているけれど、これは
正真正銘の良質なハードバップで、デューク・ジョーダン色に染まっているところは Charlie Parker Recordsレーベルの "危険な関係" に雰囲気が
似ている。あのレコードが好きなら、これもお宝の一枚となるだろう。
純粋にいい音楽をやろうという心意気が伝わってくる名演だと思います。
ペルーのリマの露店、日本の東京の中古レコード屋、どちらも流れ流れて、場末の片隅で拾われるのを待っていたんですね・・・
レコードは、その価値をわかってくれる人の下へと流れていくんでしょうね。
地味なレコードなのに、意外と好きだとおっしゃる方がいらっしゃることに驚きます。