Keith Jarrett / Death And The Flower ( 米 ABC-Impulse ASD-9301 )
この時期の代表作というのが定説になっているようだが、これがまったく面白くない。哲学的とか瞑想的と言われるが、そこまで切羽詰まったものは
感じられない。まあ、如何にも評論家が評価しそうな音楽ではある。 "至上の愛" をコルトレーンの最高傑作と言ってしまう、あのノリだ。
時代背景もあったのだろうと思うので仕方ないのかもしれないが、「キース・ジャレット」の名前が無くても、本当に同じ評価がされていただろうか。
音楽自体はこの時代の他のいろんなアーティストがやっていたタイプのもので別に変だとは思わないが、キースがこれをやる必要はなかっただろう、
ということだ。これはこういうタイプの音楽しかできない人に任せておけばよかったのであって、キースにはキースにしかできない音楽をやって欲しい。
ここには本来のキース・ジャレットの音楽に見られるみずみずしい新鮮な感性の発露が感じられない。「冴え」がないのだ。
長い音楽活動の中では誰だって波はあるから、そのこと自体が問題なのではなくて、近年の演奏ができなくなってしまった不幸な病のことを想うと、
何かを暗示しているような気がして、それが不気味だなと思ったりする。