Eddie Jefferson / Body And Soul ( 米 Prestige PRST 7619 )
ヴォーカリーズの創始者はこのエディー・ジェファーソンだと言われている。ジューク・ボックスから流れるコールマン・ホーキンスの "Body And Soul" を
聴いて、そのサックスのパートすべてに歌詞をつけてライヴで歌うようになったのが本格的なヴォーカリーズの起源だったらしい。1939年後頃のことだ。
ホークの "Body And Soul" は当時ヒットして有名だったから、たぶん本当の話だろう。
その後、キング・プレジャーやランバート・ヘンドリックス&ロス、マーク・マーフィーらが続き、レコードもリリースするようになるが、肝心のエディー
のレコードは60年代に入るまでリリースされることはなかった。理由はよくわからないけれど、長年冷や飯を食わされていたのは気の毒な話だ。ただ、
ヴォーカリーズ自体マイナーな分野だから、レコードの需要はさほどなかっただろう。どの歌手もさほどレコードがたくさん残っているわけではない。
唯一、マーク・マーフィーは長くコンスタントにアルバムをリリースしているけれど、彼の場合はヴォーカリーズは隠し味程度に使っていたから、
普通のヴォーカリストとして認知されていたということだと思う。
美しい声で上手く歌うということよりも有名楽器奏者が残した名アドリブをそのまま歌詞をつけて人の声で再現するということが目的だから、歌唱として
の魅力はここにはあまりない。でも、まるで声による曲芸とも思えるような歌いっぷりはどれを聴いても感心するし、純粋に楽しい。音楽の広い裾野を
実感することができる。
最初に歌ってから20年以上経ているけれど、代名詞の "Body And Soul" を筆頭にマイルスの "So What" やホレス・シルヴァーの "Psychedelic Sally”
などの極め付きのヴァージョンが聴ける楽しいアルバムになっている。ジェイムス・ムーディー、デイヴ・バーンズやバリー・ハリスらがバックを固めて、
彼らの演奏を聴くだけでも楽しいものがある。
ジャズの世界ではこういうのは際物扱いされているせいもあって、当然安レコ扱い。ただ聴く人も少ないし、売っても金にならないこともあってだろう、
レコード自体があまり流通しないのが難点。逆の意味で入手が面倒臭いタイプのレコードかもしれない。ジャケットにはドリルホールがあるけれど、
まあどうでもいい感じだ。
結局、マンハッタン・トランスファー==>リッチー・コール==>エディ・ジェファーソンのルートで、日本では有名に。でもその頃には射殺されているんですよね。
射殺されたのは気の毒でした。