Charles Mingus / Mingus At Monterey ( 米 Charles Mingus JWS 001 002 )
デューク・エリントンを敬愛するミュージシャンは多いけれど、ここまで溺愛した人も珍しい。 2枚組LPの半分近くをエリントン・メドレーに費やす
心酔ぶりだが、これがとてもいい演奏だ。 ラージ・アンサンブルの良さを生かしながらもシンプルでスッキリと整理されたサウンドで、混沌とした
ところもなく、エリントン楽曲の中から数滴しか抽出できないエッセンスを丹念にかき集めたような音楽になっているのはさすがだ。 ジャッキー・
バイアードのピアノのリリカルで澄んだ音が印象的だし、管楽器のソロも素晴らしい。
このバンドは日本ではロクに相手にもされないミュージシャンたちで構成されているけれど、どのプレーヤーも演奏は高度でしっかりとしていて、
その集合体としてのアンサンブルの力は凄まじい。 この素晴らしさを先入観なくありのまま受け取ることができるかどうかで、音楽の楽しみ方は
ずいぶんと変わってくるのだろう。 それによって、レコードの買い方も変わってくる。
エリントン・メドレーが終わると、ミンガス作曲の楽曲へと移行する。 幻想的な "Orange Was The Colour Of Her Dress, Then Blue Silk" を挟んで、
クライマックスの "Meditations On Integration" へと一気に駆け上がっていく。 祝祭的な喧騒の中にも制御された構成があり、ライヴならではの
感情の高ぶりが美しく記録されている。
ミンガスの演っていた音楽は「ミンガス・ミュージック」という一言で片づけられて、それは何か非常に特殊で固有種であるかのようなニュアンスをもって
語られることが多く、そのせいで一体どれだけ多くの人がミンガスを敬遠しているのだろうと憂慮してしまう。 通常のスタンダードを取り上げず、
エリントンと自作にこだわり続けたせいでそういう言い方をされてしまうだけなのであって、変な固定観念を持つ必要はどこにもない。 彼にとっての
スタンダードはあくまでエリントンだった。 ミンガスのジャズは極めてオーセンティックなものであり、その関わり方が積極的で主体的だったという
だけのことだろう。 このライヴなんかも、もっと聴かれるべき素晴らしい作品だ。
既存のレコード産業の在り方が不満で、自主レーベルを立上げて通信販売のみでスタートさせるというところにもこの人の音楽への関わり方がよく表れて
いると思う。 とにかく生真面目で真剣に音楽と共に生きた人だったのだ。 愛すべき人だったのだと思う。
お手持ちの盤にはその紙がありますか?
ミンガスが、嫌っていた店頭売りを開始した理由は、あまりに通信販売の売上が悪かったせいではないかと仮説を持っています。そうであれば、紙ありの比率がかなり高いのではないかと。 もちろんA4程度の紙片なので捨てられてもおかしくないですが、現状での比率が分かれば自分の仮説を裏付けられるかと思っています。
「公爵備忘録」でこの手紙の話は読んで知っていたので、入手後すぐに探したのですが、入っていませんでした。
捨てられてしまったのか、最初から入っていなかったのかは、今となっては定かではありません。
盤はほとんど聴かれた形跡の無いとても保存状態のいいきれいな盤なので、もし入っていたのであれば一緒に保管されていてもよさそうなのですが・・・・
経営者として、ミンガスも苦労したんですね。 心休まる時はあったんでしょうか・・・・