Bob Brookmeyer / Bob Brookmeyer And Friends ( 米 Columbia CL 2237 )
これは聴けば腰が抜ける驚愕の大傑作だけど、そう語られているのは見たことが無い。 たぶんボブ・ブルックマイヤー名義なので、大方の人がスルー
しているだろうし、レコードもエサ箱ではお馴染みの安レコで廃盤価値もゼロ、そういう観点で注目されることもない。 でも、これは傑作なのである。
コロンビアならではの大物が集められた豪華な録音で、実質的にはスタン・ゲッツとの双頭リーダー作。 ゲッツが第一リードを取る曲とブルックマイヤーが
第一リードとなる曲が混在し、ブルックマイヤーはオリジナル曲を3つ用意していて、それなりに気合いが入ったレコーディングだったようだ。
ゲッツとハービー・ハンコックの共演はこれ以外では聴いたことがなく、そういう意味でも非常に貴重な演奏だと思う。 ただし、ハービーはまったく
やる気のない演奏で、彼にとっては単なる小遣い稼ぎだったようだが、それでもその控えめに抑えたプレイが素晴らしい。
1965年のリリースだが、フリーやニュー・ジャズがジャズ界を焼け野原にしてしまったこの時期、コロンビアはポップでキャッチーなジャズでリスナーを
取り戻そうと考えたに違いない。 呆れるほどわかりやすくポップな内容になっている。 ブルックマイヤーが作ったオリジナルは非常にメロディアスで、
冒頭の "Jive Hoot" なんかはCMで使えばヒットしそうな曲だ。 制作意図がはっきりとわかる、何とも明るく朗らかな音楽だ。
でも、だからといってこれをバカにするのは間違っている。 クオリティーの高さがハンパなくて、ちょっとヤバいのだ。 こういう大物が集まれば、
やっぱり出来上がる音楽は凄いことになるんだなということがよくわかる。 特にスタン・ゲッツの演奏は神々しいまでに美しく、コロンビアの録音の
良さがそれを後押ししていて、鳥肌が立つくらいだ。 ハービー、ロン・カーター、エルヴィン、ゲイリー・バートンは当時彼らがやっていた音楽を考えれば
退屈な仕事だったに違いないけれど、それでもその演奏には他の誰にもできない凄みがあって、本物の違いがビンビンに伝わってくる。
コロンビアも単に大衆にアピールできるアルバムを作ろうとしただけなのに、まさかここまでのレベルになるとは思っていなかったのではないだろうか。
メジャー・レーベルの強みが生み出した、想定外の傑作だったのだろうと思う。
このレコード、メロディの塊です。メロディが溢れてます。そこがいい。ゲッツも短いながらも最高の演奏をしてます。
本来の持ち場を離れてアルバムに奉仕しているという意味では「幕ノ内」かもしれませんね。
ブルックマイヤーの曲はどれもいいですねえ。驚きです。コロンビアにはいいレコードがたくさんあっていいですね。