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Lee Konitz / Motion ( 米 Verve V-8399 )
リー・コニッツはある意味でジャズ愛好家泣かせの人かもしれない。 誰もがこの人のことを心底好きになりたいし、白人アルトでワンホーンが基本の
作品群も手放しで称賛したいのに、我々の理想とする作品、こうであって欲しいという形を常に裏切り、距離を置き、突き放してくる。 時期やレーベルに
よってスタイルも変えていて、聴き手はそれに翻弄される。 基本的に、芸術家なのだ。
大勢の見解と同じく、私もアトランティック盤にはいくつか好きなものがあるけど、ヴァーヴに残された多くの作品は聴く気にはなれない。 別に演奏が
悪いということではもちろんなく、聴き手の勝手な思い込みでそれらの多くがやはりコニッツらしくないと思うだけだ。 ただ、何事にも例外があるように、
この "Motion" だけは無条件にいいと思う。
ありふれた5曲のスタンダードを素材に、冒頭のお決まりのテーマ・フレーズを排してアドリブから入り、逆に曲を閉じる最後にテーマのメロディーを吹いて、
それが何の曲だったかのネタ晴らしをするという凝った仕掛けにしている。 ただ、これはコニッツ・オリジナルではなく、既にパーカーがやっていた手法だ。
パーカーを批判することも辞さなかった厳しい音楽観を持ちながらも、ある時はこうしてパーカーともシンクロする。 ただ、パーカーのように技巧性と
音楽性の信じられないような調和は見られず、アドリブラインを冗長なくらいに吹き繋げていくだけに終始していて、そこが逆に批判の対象になる。
バックはソニー・ダラスとエルヴィンだけだが、この2人の演奏はまるでフリー・ジャズの演奏のバッキングのような雰囲気だ。 エルヴィンはリズムを
生み出すというよりはおかずの過剰なまでの多さで変化を与え続け、ダラスのダークなベースが不気味に疾走することで音楽が進んで行く。 コニッツの
アルトはコード進行に沿ったアドリブラインなので、このサックスのラインとベースの複線だけで調性が維持されている。 その様が素晴らしい。
若い頃と同じ切れるような感触はここでは聴けないけれど、それは後退したのではなく、成熟して新たな姿になっているものとして前向きに歓迎したい。
確かに「聴かせます」ね。モノも聴いてみたいです。
エルヴィンもそうですが、どちらかというとベースの音がくっきりとよく聴こえます。
そういえば、ヴァーヴのステレオのことって、あまり深く考えたことないかもしれません。 機会があれば、ちょっと試してみたいですね。