第２のスノーデン、リアリティ・ウィナー

上映時間８２分。ティナ・サッター監督「リアリティ」（２３）は、ある事件で逮捕された女性のＦＢＩでの尋問記録をリアルタイムで…

描いた映画の上映時間。長いのか、短いのか、それはもちろんその内容によるでしょう。２０１７年のアメリカ。買い物から帰宅した…

２５歳のリアリティ・ウィナー（シドニー・スウィーニー）は、見知らぬ男性２人に声をかけられます。彼らはある事件を調査中のＦＢＩ捜査官でした。

ＮＳＡこと米国家安全保障局の契約社員リアリティは、ある情報をメディアにリークした罪でＦＢＩに逮捕されます。それは…

２０１６年のアメリカ合衆国大統領選におけるロシアのハッカーによる介入疑惑に関する報告書を、メディアに流したのです。

全米で大論争を巻き起こした『トランプ大統領誕生は、ロシア政府に仕組まれたものだったのか？』。日本でも話題になりました。

果たして、何が語られ、何が真実だったのか。実際のＦＢＩ尋問録音記録を、ほぼリアルタイム、何気ない会話や息遣い、咳払い１つまで…

一言一句を完全再現するという衝撃の試みを果たしたティナ・サッター監督は、ニューヨークの現代演劇界で活躍する新進気鋭の劇作家だそう。

現在も何かと報道される元大統領の犯罪？映画にするのは、怖すぎます。スウィーニーは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」（１９）に主演。

共演は「生きてこそ」（９３）、「きっと忘れない」（９４）などで懐かしい、ジョシュ・ハミルトン。ＦＢＩ捜査官役かしらん？

１９８２年シチリア、夏の恋

フランソワ・オゾン監督「Ｓｕｍｍｅｒ ｏｆ ８５」（２０）は、エイダン・チェンバース作『おれの墓で踊れ』を原作にした、少年同士の…

１９８５年の夏の初恋を描いていました。ルーカス・ドン監督「ＣＬＯＳＥ／クロース」（２２）は、幼い頃から仲の良い２人の少年が…

中学生になり周囲から好奇の目で見られ、やがて突然の別れが訪れるというお話。いずれも少年たちの恋を描いた作品で、今までも多く…

描かれたテーマです。原作や監督自身の体験だったり。アンドレ・アシマンの原作をルカ・グァダニーノが監督し、世界中でヒットした…

「君の名前で僕を呼んで」（１７）。少年同士ではないけれど、１７歳のエリオと２４歳のオリヴァーの恋の行方に、夢中になりました。

この作品の脚本は「モーリス」（８７）のジェームズ・アイヴォリーが担当。続編小説の映画化の話があるようで、ぜひ実現して欲しいです。

ジュゼッペ・フィオレッロ監督「シチリア・サマー」（２２）は、初監督作で脚本も担当。１９８２年に実際にあった事件を基にしています。

初夏のシチリア島。１６歳のニーノ（ガブリエーレ・ピッツーロ）と１７歳のジャンニ（サムエーレ・セグレート）は、バイク同士の…

衝突事故で運命的に出会います。生い立ちも性格も違う２人は、惹かれ合い、芽生えた友情は激しい恋へと変化していくのでした。

花火を打ち上げたり、秘密の約束を交わしたり…かけがえのないひとときは、ある日突然終わりを迎えます。果たして、それは？

ウォン・カーウァイ監督、はじまりの２作品

昨年夏、上映された「ＷＫＷ ４Ｋレストア版」（２２）。「恋する惑星」（９４）、「天使の涙」（９５）、「ブエノスアイレス」（９７）、

「花様年華」（００）、「２０４６」（０４）の５作品。どれも公開時に見ていて、懐かしいです。あっ、ＷＫＷとは中国 上海出身の…

ウォン・カーウァイ（王家衛）。監督、脚本家、プロデューサーとして活躍。監督作は「グランド・マスター」（１３）以来、ちょっとご無沙汰中。

そして今年も「ＷＫＷ ４Ｋレストア版 ザ・ビギニング」が上映されます。前回上映されなかった作品の上映を望むファンの声が届いたそう。

今回は、監督デビュー作「いますぐ抱きしめたい」（８８）と、監督２作目の「欲望の翼」（９０）の２作品。未見の方も多いと思いますが…

カンフー映画やアクション映画で賑わっていた香港映画に、スタイリッシュで若く人気ある俳優たちがたくさん出演するカーウァイ映画は…

とっても新鮮でした。俳優としてだけでなく歌手としても活躍しているスターたち。アンディ・ラウ、マギー・チャン、ジャッキー・チュン、

レスリー・チャン（当時は、レスリー・チョンでした）、カリーナ・ラウ、トニー・レオン、フェイ・ウォン、金城武など…見てました。

この夏、チェン・カイコー監督「さらば、わが愛／覇王別姫」（９３）が４Ｋ版で上映されたばかりのレスリーは、カーウァイ監督の…

「楽園の瑕（きず）」（９４）にも出演。レスリーが亡くなってもう２０年（２００３年４月１日）。アンディもマギーもトニーも若かった！

オゾン監督、またも最高傑作！

イザベル・ユペール、良いですよね。今年７０歳になりますが、本当に綺麗。最新作はフランソワ・オゾン監督「私がやりました」（２３）です。

ジョルジュ・ベル＆ルイ・ヴェルヌイユの原作戯曲を監督が脚本、映画化しました。オゾンファンとしては、１年に１本の公開がとっても楽しみ。

そして出演女優も。「まぼろし」（００）などのシャーロット・ランプリング、「８人の女たち」（０２）などのカトリーヌ・ドヌーヴ、

「ふたりの５つの分かれ路」（０４）などのヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、「エンジェル」（０７）のロモーラ・ガライ、「危険なプロット」（１２）の…

クリスティン・スコット・トーマス、「すべてうまくいきますように」（２１）のソフィー・マルソー、「苦い涙」（２２）のイザベル・アジャーニ、

そしてイザベル・ユペール。自身の作品で何度も起用するオゾン監督の女優たち。良いですね。パリの大豪邸で映画プロデューサーが殺害されます。

容疑者として連行されたのは、新人女優のマドレーヌ・ヴェルディエ（ナディア・テレスキウィッツ）。プロデューサーに襲われ自分の身を守るため…

殺害したと自供。弁護するのは、親友で新米弁護士のポーリーヌ・モーレオン（レベッカ・マルデール）。正当防衛と、心を揺さぶる陳述で…

マドレーヌは無罪を勝ち取るのでした。悲劇のヒロインとして一躍スターになったマドレーヌとポーリーヌの前に、大女優オデット・ショーメット…

（イザベル・ユペール）が現れます。真犯人は『自分だ』と主張！果たして、真相は？彼女の目的は？ファブリス・ルキーニ共演。見ますとも。

タリバンに拉致された韓国人２３人

韓国映画をしっかり見始めて、２年弱。最近ではユ・ヘジン演じる韓国のベテラン刑事が、北朝鮮のエリート刑事と組んで犯罪組織に挑む…

「コンフィデンシャル／共助」（１７）を見た後、劇場公開された２作目コンフィデンシャル：国際共助捜査」（２２）も楽しみました。

主演は、ヒョンビン。ＴＶシリーズ「愛の不時着」（１９～２０）でも北朝鮮の軍人を演じ話題に。未見ですが。映画の方は後の正祖こと…

第２２代王イ・サンを描いた「王の涙 イ・サンの決断」（１４）や、チャン・ドンゴン共演のゾンビ・ホラー映画「王宮の夜鬼」（１８）も見て…

すっかりお馴染み。そんなヒョンビンの最新作は「提報者 ＥＳ細胞捏造事件」（１４）のイム・スルレ監督「極限境界線 救出までの１８日間」（２３）。

ちなみに「提報者」は、パク・ヘイル主演の実際にあった論文不正事件描いた作品。主演は「アシュラ」（１６）、「哭声／コクソン」（１６）、

「人質 韓国トップスター誘拐事件」（２１）のファン・ジョンミン。２００７年、アフガニスタンで韓国人２３名がタリバンに拉致されます。

２４時間以内の韓国軍撤退と収容中の仲間２３人の釈放を要求。現地に派遣された外交官チョン・ジェホ（ファン・ジョンミン）は…

アフガニスタン外務省に釈放を要請するも拒否。韓国国家情報院工作員パク・デシク（ヒョンビン）のアフガニスタンのフィクサーへの交渉も決裂。

２人は不本意ながら手を組み、人質を救おうとするのですが…果たして？あっ、「モガディシュ 脱出までの１４日間」（２１）も見ました！

マジックミラー計画とは？

１９６５年１２月３１日中国の瀋陽市出身のコン・リーは、チャン・イーモウ監督「紅いコーリャン」（８７）で映画デビューしました。

その後も「ハイジャック／台湾海峡緊急指令」（８６）、「テラコッタ・ウォリア／秦俑」（８９）、「菊豆」（９０）、「紅夢」（９１）、

「秋菊の物語」（９２）、「活きる」（９４）、「上海ルージュ」（９５）、「王妃の紋章」（０６）、「妻への家路」（１４）でも組んでいて…

チェン・カイコー、ウォン・カーウァイなど中国の名監督作品に主演。アメリカやイギリスの作品にも出演しています。イーモウ監督作は…

第５世代の作品で、夢中で見ました。中国映画が好きになるきっかけでもあります。なので、コン・リーの作品には注目しています。

最新公開作は、ロウ・イエ監督「サタデー・フィクション」（１９）。わりと中国映画に多い白黒映画です。太平洋戦争直前の１９４１年。

日中欧の諜報員が暗躍する真珠湾攻撃７日前の１２月１日。ユー・ジン（コン・リー）は、舞台『サタデー・フィクション』に主演するため…

上海にやって来ます。仏諜報員フレデリック・ヒューバート（パスカル・グレゴリー）に孤児院から救われた過去を持つ彼女自身も諜報員でした。

２日後の１２月３日、暗号通信専門家の日本海軍少佐 古谷三郎（オダギリジョー）も上海に到着。ユー・ジンは彼の亡き妻によく似ていて…

太平洋戦争開戦の奇襲情報を得るため、仏諜報員が仕掛ける『マジックミラー作戦』に身を投じます。果たして？ マーク・チャオ、中島歩共演。

トラボルタ＋ウィリス、２９年ぶりの再共演！

２０２２年３月３０日、ブルース・ウィリスとデミ・ムーアの娘、女優のルーマー・ウィリスが父ブルース・ウィリスの俳優引退を発表。

びっくりしました。主演映画は少ないけれど、出演作品は多すぎるくらいたくさん！引退の原因が失語症だというのも驚きの理由でした。

２０１７年は３本、１８年は５本、１９年は４本、２０年は３本、２１年は５本、２２年も５本。ウィキペディアのフィルモグラフィによると…

全米公開を待つ作品が５本あって、来年３月公開予定の作品で引退とのこと。「ダイ・ハード」（８８）、「１２モンキーズ」（９５）、

「フィフス・エレメント」（９７）、「シックス・センス」（９９）、「アンブレイカブル」（００）、「シン・シティ」（０５）、

「ムーンライズ・キングダム」（１２）など、大好きな作品もたくさん。そんな中、チャック・ラッセル監督「オペレーション・ゴールド」（２３）が公開。

数百万ドルクラスの犯罪者を狙う賞金稼ぎのイアン・スワン（ブルース・ウィリス）は、巨大犯罪帝国を築き上げた麻薬王バックリー…

（ジョン・トラボルタ）を１０年に渡り、追い続けています。ある日、人気のないビーチでバックリーを追い詰めますが、子分たちが現れ…

銃撃戦になり、撃たれて海の中に…。賞金稼ぎの息子ライアン（ブレイク・ジェナー）は、イアンの元相棒ロビー（スティーブン・ドーフ）と…

組んでバックリーを追うことに。果たして？豪華なキャストの本作。実は…という展開が待っています。ブルースは簡単には死にません！

凄すぎる幕末明治の絵師たち

六本木の東京ミッドタウン、ガレリア３階にあるサントリー美術館。住所は東京都港区赤坂９丁目。日本の古美術が中心の美術館で…

丸の内のパレスビルから、２００７年３月に移転。古美術品より、やはり絵画に興味があるので今回の展覧会は気にしています。秋の展覧会は…

「激動の時代 幕末明治の絵師たち」です。とにかく、そこに集まった絵師たちの凄さ！江戸から明治への激動の時代に活躍した…

絵師と作品たちに、きっと目を奪われ、感動するはず！狩野一信作『五百羅漢図』の第二十一、二十二幅（１８５４～６３年）と第四十五、四十六幅。

２０１１年３月、江戸東京博物館の『特別展 五百羅漢』を見ましたが、大感激でした。こんな凄い絵師と作品があるなんて！

それは置いておいて、安田雪舟作『捕鯨図』（１９世紀）、『危嶂懸泉図』（１９世紀）、『江戸近国風景 甲斐かじか沢富士川おとしの景』（１９世紀）。

月岡芳年作『魁題百撰相 井上五郎兵衛』（１９世紀）と『魁題百撰相 菅谷九右ヱ門』（１８６８年）。河鍋暁斎作『鍾馗ニ鬼図』（１８７１～８９年）、

歌川国芳作『讃岐院眷属をして為朝をすくふ図』（１８５１年頃）、歌川芳艶作『両賊深山妖術競之図』（１８６０年）、春木南溟作…

『虫合戦図』（１８５１年頃）など。狩野一信（１８１６～６３年）、月岡芳年（１８３９～９２年）、河鍋暁斎（１８３１～８９年）、

歌川芳艶（１８２２～６６年）、歌川国芳（１７９８～１８６１年）！会期中、作品によっては展示期間が変わります。見たい作品は是非チェックして。

注目！南インドから熱い風が吹く！

インドは今年２０２３年に中国を抜いて、世界一の１４億２千万人の人口を持つ国になりました。首都はニューデリー、公用語はヒンディー語。

映画ファンには、現ムンバイこと旧ボンベイとハリウッドを合わせた“ボリウッド”がお馴染み。ここで製作されるインド映画は、ハリウッド映画より…

多いとか。インド映画のスターは踊って歌ってアクションもこなし、特に女優は本当に美しく、映画は最高のエンターテインメントです。

南インドはタミル語やテルグ語、カンナダ語などが話されていて、隣の地域に行くと言葉が通じない…と「ムトゥ 踊るマハラジャ」（９５）の…

セリフがありました。タミル語のスターはもちろんスーパースター、ラジニカーント！大ヒット中の「ＲＲＲ」（２２）のS・S・ラージャマウリは…

テルグ語映画の監督。「バーフバリ」（１５）、「バーフバリ 王の凱旋」（１７）も。それ以前の監督作「マガディーラ 勇者転生」（０９）の…

完全版が「熱風！！南インド映画の世界」で上映されます。本映画祭では、テルグ語圏の映画中心に、４作品は選ばれました。

ラージャマウリ監督「ヤマドンガ」（０７）と「マガディーラ 勇者転生＜完全版＞」（０９）、スレーンダル・レッディ監督…

「サイラー ナラシムハー・レッディ 偉大なる反逆者」（１９）、「ランガスタラム」（１８）のスクマール監督「プシュパ 覚醒」（２１）。

「マガディーラ」以外の３作は初上映！「ヤマドンガ」は、「ＲＲＲ」のＮ・Ｔ・ラーマ・ラオ・Ｊｒとラーム・チャランの２人が主演。見たい！

蟻の生態研究者ブライバンティ

１９５４年出版『蠅の王』は、イギリスの作家ウィリアム・ゴールディングの小説。ああ、映画見た見たと思ったら、リメイクの方でした。

ピーター・ブルック監督「蠅の王」（６３）は未公開。ハリー・フック監督「蝿の王」（９０）がリメイクです。タイトルの漢字が違います。

主演はバルサザール・ゲティ。映画やＴＶシリーズで活躍しています。無人島に不時着した２４人の陸軍幼年学校の少年たちの人間性を描いた…

ある意味、怖いお話でした。原作とは、発端など設定が少し異なります。また見直したくなります。しかし今回の映画は、似て非なり。

ジャンニ・アメリオ監督「蟻の王」（２２）です。１９６０年代のイタリア、エミリア州ピアチェンツァに住む、詩人で劇作家、蟻の生態研究者の…

アルド・ブライバンティ（ルイジ・ロ・カーショ）は、教え子のエットレ（レオナルド・マルテーゼ）と恋に落ち、ローマで一緒に暮らし始めます。

しかし、エットレの家族によって引き離される２人。アルドは教唆罪で逮捕、エットレは同性愛の治療という名目で矯正施設に送られてしまいます。

世間の関心を集める中で裁判が始まり、新聞記者エンニオ（エリオ・ジェルマーノ）は不寛容な社会に疑念を抱きます。果たして？

同性愛に対する偏見が根強い１９６０年代のイタリアで、実際に起きた『ブライバンティ事件』を基に描いた本作。アメリオ監督には…

「家の鍵」（０４）、「最初の人間」（１１）、「ナポリの隣人」（１７）などがありますが、未見でした。本作はぜひ見ましょ。