報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「仙台へ」

2016-09-02 21:01:56 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月28日18:00.天候:晴 JR大宮駅西口]

 井辺の運転する車が大宮駅西口の一般車乗降場に到着する。

 敷島:「アルエット!」

 既にそこには敷島とシンディが待ち構えていた。

 アルエット:「お姉ちゃん!」

 アルエットは車の助手席から飛び降りると、敷島の横に立つシンディに抱きついた。

 シンディ:「おっ……!何だか久しぶりだねぇ。科学館で上手くやってるみたいだね」
 アルエット:「もちろん!私、頑張ってるよ」
 敷島:「井辺君、悪かったな。わざわざ」
 井辺:「いえ、とんでもないです。MEGAbyteの活躍の場を確保して頂き、ありがとうございます」

 MEGabyteの3人も、敷島に礼を言った。

 敷島:「ああ。イベントは来週だ。頑張ってくれ。それまでに、ジャニスとルディを鉄塊にできればいいんだがな……」
 井辺:「社長。いきなりの鉄塊はDCJの意向に反するのでは?鉄塊にする件は撤回した方がよろいかと……」
 敷島:「さりげなくダジャレを言うようになったな。いいんだよ。要は、その甘さがこの事件を引き起こしたんじゃないか。前期型のシンディと同様、殺人機械はとっとと鉄塊にした方がいいんだよ」
 シンディ:「さすが、“東京決戦”の英雄さんは言う事が違うねぇ……」

 シンディは肩を竦めた。

 敷島:「ま、とにかく、そういうことだから。俺達はアルエットを仙台の平賀先生の所へ送って行く」
 井辺:「分かりました。社長、明日は本社(四季エンタープライズ)で経営者会議です。遅れないようにお願いします」
 敷島:「分かってるよ」

 子会社を多く抱える芸能界名うての大手企業、四季エンタープライズ。
 その子会社の社長を集めた定例会議が明日、行われる。

[同日18:10.天候:晴 JR大宮駅新幹線ホーム→東北新幹線“はやて”371号9号車内]

 シンディ:「社長、夕食のお弁当」
 敷島:「弁当かよ。寂しいな」

〔17番線に18時10分発、“はやて”371号、盛岡行きが10両編成で参ります。この電車は途中、仙台、古川、一ノ関、北上に止まります。グリーン車は9号車、グランクラスは10号車です。この電車は、全車両指定席です。まもなく17番線に、“はやて”371号、盛岡行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 シンディ:「社長、グリーン車でいいの?」
 敷島:「急な出発で、そこしか取れなかったんだからしょうがないだろ」
 シンディ:「経費で落とせるかなぁ……?」
 敷島:「ジャニスとルディの件が無かったらこんなことにはならなかったんだから、いざとなったらDCJに請求するよ」
 シンディ:「さすがねぇ……」

〔「17番、ご注意ください。18時10分発の東北新幹線“はやて”371号、盛岡行きの到着です。お下がりください。東北新幹線、盛岡止まりの到着です」〕

 “はやぶさ”に使用されるE5系車両が入線してきた。

 敷島:「今日に限って普通車の少ない、これだよ。普通車が満席なのも、頷けるだろう?
 シンディ:「そうね」

〔「大宮ぁ〜、大宮です。17番線到着の電車は東北新幹線“はやて”371号、盛岡行きです。次は、仙台に止まります。お乗り間違えの無いよう、ご注意ください」〕

 敷島達は9号車に乗り込んだ。

 敷島:「せっかくの再会なんだから、2人で座ったら?」
 アルエット:「いいの!?」
 シンディ:「社長。それじゃ手薄よ」

 シンディはそう言って、クルッと座席を向かい合わせにした。

 敷島:「これだと足が伸ばせないが……」
 シンディ:「たかだか1時間ちょっとでしょ?」
 敷島:「……何かお前、持ち主に似てきたな」

 敷島はアメリカ人妻のアリスを思い出した。
 そうこうしているうちに、列車が走り出す。
 グリーン車の座席には、アームレストの中にテーブルが収納されている。
 弁当と飲み物はそこに置いた。

 シンディ:「社長、私もいいかしら?」
 敷島:「いいよ」

 シンディは自分の荷物の中から、充電用のコンセントを取り出した。
 グリーン車には各席にコンセントが付いている。

 アルエット:「私も充電する」
 敷島:「お前は燃料電池駆動だから、充電はしなくていいんだよ」

 毎日充電しないといけないオリジナルタイプのエミリーとシンディ。
 それに対してフルモデルチェンジの最新型であるアルエットは、水素を利用した燃料電池であり、毎日の充電を必要としない。
 これは脱走したジャニスとルディも同じ。

 アルエット:「ぶー……」
 シンディ:「むくれないの。本当はそっちの方がいいんだから」

 尚、それまでのオリジナルタイプをより軽量化・小型化をコンセプトとして作り出したのがアルエットというわけだが、どう見てもロリ化です。
 本当にありがとうございました。
 因みに着ている服も、女子中学生を思わせるようなセーラー服に近いデザインのものだったりする。
 ICチップの幾何学模様をあしらった模様が入っているが……。

 敷島:「アルエットのこれからの任務は、平賀先生の護衛をすることだ。できるな?」
 アルエット:「はい」
 敷島:「もし平賀先生に危害を加えようとする輩……。お前のスキャンに『ロボット』と出た場合、遠慮なく自慢のレーザービームで切り刻んで構わないから」
 アルエット:「人間だったら?」
 敷島:「それは無いと思うが、その時は取り押さえて警察に突き出してくれ。殺さなければ、多少のケガさせてもいいから」
 アルエット:「分かりました」

 こうしている間にも、平賀はエミリーの修理を続けている。
 電ノコ野郎であるが、平賀が車で脱出した後、玄関のシャッターをブチ破って逃亡したらしい。
 警察が駆け付けた時には、既にそこから逃げられた後であった。
 つまり、電ノコ野郎はまだどこかにいる。
 こうしている間にも、また平賀を狙うかもしれない。
 南里志郎記念館には護衛のセキュリティロボット数機の他、七海が張っている。
 しかし、仮に電ノコがジャニスかルディであるならば、セキュリティロボットやメイドロイドの七海はザコロボットに過ぎない。
 要は、時間稼ぎの気休めでしか無いわけだ。
 しかも……。

 シンディ:「社長、仙台、雷雨だって」
 敷島:「マジかよ!おあつらえ向きだなぁ……」

 臨時列車は夕闇迫る中、“逢魔が時”の中を北に向かって突き進んだ。
コメント (2)
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