[9月1日10:00.天候:曇 宮城県仙台市泉区 佐久間家]
敷島とシンディは佐久間家の前までやってきた。
敷島:「外観は普通の一戸建てだな。でも、かなり大きい家だ。俺もいつかは、こういう邸宅に住んでみたいな……」
シンディ:「ミク達を増産して海外に売り出すくらいしないとダメだと思うよ」
敷島:「今や、ボーカロイドもかなり数が増えたからなぁ……。ヘタすりゃAKB並みに」
シンディ:「それにしても、待ち合わせの時間になったのに、佐久間部長は来ないわね」
敷島:「まだ10時になったばっかりだ。慌てる必要は無いさ」
シンディ:「そうだね」
敷島の所へ昨夜、佐久間昭から電話があった。
翌日の10時、佐久間公男宅の所へその家の鍵を持って行くという。
敷島はすぐにその時間に約束し、こうしてやってきたというわけだが……。
敷島:「おかしいな。もう10時半になったというのに、影も見えやしない」
何か急用でも入ったのかと思うが、スマホを見てもメールも電話も無かった。
シンディ:「何なら私、先に入って探索する?」
敷島:「それはダメだ。敷地内からして既に、ウィルス汚染地帯かもしれない。何の対策もできていない状態で、入れるわけにはいかないさ」
シンディ:「でもねぇ……」
11時になったが、やっぱり佐久間昭は来ない。
さすがにおかしいと、敷島は佐久間昭のケータイに掛けてみた。
すると、
『お掛けになった電話番号は、現在電波の届かない所にあるか、電源が入っていないため、掛かりません』
とのアナウンスが流れてきただけだった。
シンディ:「もうこの際、会社に掛けてみたら?」
敷島:「待て。今掛ける」
敷島は今度は四季エンタープライズ東北支社に掛けた。
敷島:「あ、いつもお世話になっております。私、敷島エージェンシーの敷島と申します。……はい。あの、企画部長の佐久間昭様はご在席でしょうか?……はい」
敷島のスマホから、グリーン・スリーブスの保留音が流れてくる。
そして……。
敷島:「……あ、はい。午前中のみお休みですか。……あー、そうですか。分かりました。……あ、いえ。特に、急ぎではありませんので。……はい。では、よろしくお伝えください。……はい。それでは、失礼します」
敷島は電話を切った。
敷島:「やはり部長は俺達の為に、午前中空けてくれてたみたいだ。会社の方、午前中休みにしてある。てことは、別に急用が入ってドタキャンされたわけじゃないんだ」
シンディ:「じゃあ、何なの?」
敷島:「分からん。とにかく、昼まで様子を見てみよう」
そして、空しい1時間が過ぎた。
シンディ:「はい、社長。アンパンと牛乳」
敷島:「サンクス」
シンディ:「ううん、サンクスじゃなくてファミマだよ」
敷島:「……『どうも』という意味で言ったんだがな」
シンディは敷島の為に、軽い昼食をコンビニで買って来たようだ。
敷島はアンパンの袋を破って、中身を頬張った。
敷島:「まるで刑事の張り込みだな」
シンディ:「あの、いい加減、四季エンタープライズさんの方に行ってみた方が……」
敷島:「うるさい。意地でも俺はここで待つ」
シンディ:「もう……」
と、その時、シンディがバッと90度直角に向きを変えた。
敷島:「来たのか!?」
シンディ:「……いや、違う」
やってきたのは1台の白いプリウス。
乗っていたのは、平賀とエミリーだった。
平賀:「やっと着いた。いやあ、泉区の住宅街もなかなか分かりにくいもんですね」
敷島:「平賀先生!?どうしてここへ!?まさか、わざわざお迎えに?」
平賀:「まあ、それはついでです。アルエットの修理に専念したいので、午後は休講にしました。今、アルエットはウィルス駆除ソフトをインストールしている所ですので、しばらく掛かります。その間、敷島さんの方のお手伝いをしようかと思いまして。何か分かりましたか?」
敷島:「いや、それがまだです。肝心の佐久間昭部長が来て下さらなくて……」
平賀:「そうなんですか。それは参りましたねぇ……」
平賀は車の中から、何やらスコープのようなものを持って来た。
敷島:「何ですか、それは?」
平賀:「マルチタイプ達が使うスキャナーを、携帯型にしたものです。それでも、結構携帯しにくい携帯型になってしまいましたが……」
スコープというか、形はスピード測定器みたいなもの。
平賀:「こいつらは中に入れないんでしょう?でも、スキャンは必要。それなら、装置だけ持って来ようという発想ですね」
敷島:「さすがは平賀先生。あとは肝心の鍵が来ないと……」
平賀は試運転なのか、そのスキャナーを起動させ、周囲をスキャンしてみた。
アルエットが使用している物と同等の性能を持ち合わせているという。
その為、例えばシンディをスキャンしてみると……。
シンディ:「どう?『いい女』って出た?」
平賀:「黙ってろ。ほら、型番から何やら全部出るんだよ。ただ単に、『金属反応あり』だとか『生物反応あり』とかだけじゃなくてさ」
シンディ:「肝心の『美人過ぎるアンドロイド』って出てないじゃん?故障してるんじゃないの?」
敷島:「シンディwww」
シンディ:「叩けぱ直るんじゃないの?」
平賀:「その前にお前を叩いて直す必要がありそうだな?」
平賀が目配せすると、エミリーは頷いて、右手の拳を振り上げた。
エミリー:「シンディ。その・お喋りな・口は、舌を・引っこ抜かないと・直らないか?答えろ」
シンディ:「ご、ごめんなさい!言い過ぎました!」
エミリー:「舌を・抜かないと・直らない・のか?と・聞いて・いるのだ」
シンディ:「ゆ、許してください!壊れちゃいます!」
エミリーは姉として、口の過ぎる妹のシンディを羽交い絞めにして、懲らしめてやっている。
敷島:「まあまあ。平賀先生、後でシンディにはよく言い聞かせておきますから。どうか、1つ……」
平賀:「まあ、敷島さんがそう仰るのなら。……おい、エミリー」
エミリー:「イエス。プロフェッサー平賀」
エミリーはシンディを放してやった。
と、そこへ、敷島達の前にシルバーのクラウンが止まった。
やっと到着だろうか。
しかし、運転席と助手席から同時に降りて来たスーツ姿の男2人の姿の中に、佐久間部長の姿は無かった。
この男達は……。
1:暴力団員だ。
2:私服刑事だ。
3:四季エンタープライズの社員だ。
4:DCJの社員だ。
5:皆目見当つかない。
敷島とシンディは佐久間家の前までやってきた。
敷島:「外観は普通の一戸建てだな。でも、かなり大きい家だ。俺もいつかは、こういう邸宅に住んでみたいな……」
シンディ:「ミク達を増産して海外に売り出すくらいしないとダメだと思うよ」
敷島:「今や、ボーカロイドもかなり数が増えたからなぁ……。ヘタすりゃAKB並みに」
シンディ:「それにしても、待ち合わせの時間になったのに、佐久間部長は来ないわね」
敷島:「まだ10時になったばっかりだ。慌てる必要は無いさ」
シンディ:「そうだね」
敷島の所へ昨夜、佐久間昭から電話があった。
翌日の10時、佐久間公男宅の所へその家の鍵を持って行くという。
敷島はすぐにその時間に約束し、こうしてやってきたというわけだが……。
敷島:「おかしいな。もう10時半になったというのに、影も見えやしない」
何か急用でも入ったのかと思うが、スマホを見てもメールも電話も無かった。
シンディ:「何なら私、先に入って探索する?」
敷島:「それはダメだ。敷地内からして既に、ウィルス汚染地帯かもしれない。何の対策もできていない状態で、入れるわけにはいかないさ」
シンディ:「でもねぇ……」
11時になったが、やっぱり佐久間昭は来ない。
さすがにおかしいと、敷島は佐久間昭のケータイに掛けてみた。
すると、
『お掛けになった電話番号は、現在電波の届かない所にあるか、電源が入っていないため、掛かりません』
とのアナウンスが流れてきただけだった。
シンディ:「もうこの際、会社に掛けてみたら?」
敷島:「待て。今掛ける」
敷島は今度は四季エンタープライズ東北支社に掛けた。
敷島:「あ、いつもお世話になっております。私、敷島エージェンシーの敷島と申します。……はい。あの、企画部長の佐久間昭様はご在席でしょうか?……はい」
敷島のスマホから、グリーン・スリーブスの保留音が流れてくる。
そして……。
敷島:「……あ、はい。午前中のみお休みですか。……あー、そうですか。分かりました。……あ、いえ。特に、急ぎではありませんので。……はい。では、よろしくお伝えください。……はい。それでは、失礼します」
敷島は電話を切った。
敷島:「やはり部長は俺達の為に、午前中空けてくれてたみたいだ。会社の方、午前中休みにしてある。てことは、別に急用が入ってドタキャンされたわけじゃないんだ」
シンディ:「じゃあ、何なの?」
敷島:「分からん。とにかく、昼まで様子を見てみよう」
そして、空しい1時間が過ぎた。
シンディ:「はい、社長。アンパンと牛乳」
敷島:「サンクス」
シンディ:「ううん、サンクスじゃなくてファミマだよ」
敷島:「……『どうも』という意味で言ったんだがな」
シンディは敷島の為に、軽い昼食をコンビニで買って来たようだ。
敷島はアンパンの袋を破って、中身を頬張った。
敷島:「まるで刑事の張り込みだな」
シンディ:「あの、いい加減、四季エンタープライズさんの方に行ってみた方が……」
敷島:「うるさい。意地でも俺はここで待つ」
シンディ:「もう……」
と、その時、シンディがバッと90度直角に向きを変えた。
敷島:「来たのか!?」
シンディ:「……いや、違う」
やってきたのは1台の白いプリウス。
乗っていたのは、平賀とエミリーだった。
平賀:「やっと着いた。いやあ、泉区の住宅街もなかなか分かりにくいもんですね」
敷島:「平賀先生!?どうしてここへ!?まさか、わざわざお迎えに?」
平賀:「まあ、それはついでです。アルエットの修理に専念したいので、午後は休講にしました。今、アルエットはウィルス駆除ソフトをインストールしている所ですので、しばらく掛かります。その間、敷島さんの方のお手伝いをしようかと思いまして。何か分かりましたか?」
敷島:「いや、それがまだです。肝心の佐久間昭部長が来て下さらなくて……」
平賀:「そうなんですか。それは参りましたねぇ……」
平賀は車の中から、何やらスコープのようなものを持って来た。
敷島:「何ですか、それは?」
平賀:「マルチタイプ達が使うスキャナーを、携帯型にしたものです。それでも、結構携帯しにくい携帯型になってしまいましたが……」
スコープというか、形はスピード測定器みたいなもの。
平賀:「こいつらは中に入れないんでしょう?でも、スキャンは必要。それなら、装置だけ持って来ようという発想ですね」
敷島:「さすがは平賀先生。あとは肝心の鍵が来ないと……」
平賀は試運転なのか、そのスキャナーを起動させ、周囲をスキャンしてみた。
アルエットが使用している物と同等の性能を持ち合わせているという。
その為、例えばシンディをスキャンしてみると……。
シンディ:「どう?『いい女』って出た?」
平賀:「黙ってろ。ほら、型番から何やら全部出るんだよ。ただ単に、『金属反応あり』だとか『生物反応あり』とかだけじゃなくてさ」
シンディ:「肝心の『美人過ぎるアンドロイド』って出てないじゃん?故障してるんじゃないの?」
敷島:「シンディwww」
シンディ:「叩けぱ直るんじゃないの?」
平賀:「その前にお前を叩いて直す必要がありそうだな?」
平賀が目配せすると、エミリーは頷いて、右手の拳を振り上げた。
エミリー:「シンディ。その・お喋りな・口は、舌を・引っこ抜かないと・直らないか?答えろ」
シンディ:「ご、ごめんなさい!言い過ぎました!」
エミリー:「舌を・抜かないと・直らない・のか?と・聞いて・いるのだ」
シンディ:「ゆ、許してください!壊れちゃいます!」
エミリーは姉として、口の過ぎる妹のシンディを羽交い絞めにして、懲らしめてやっている。
敷島:「まあまあ。平賀先生、後でシンディにはよく言い聞かせておきますから。どうか、1つ……」
平賀:「まあ、敷島さんがそう仰るのなら。……おい、エミリー」
エミリー:「イエス。プロフェッサー平賀」
エミリーはシンディを放してやった。
と、そこへ、敷島達の前にシルバーのクラウンが止まった。
やっと到着だろうか。
しかし、運転席と助手席から同時に降りて来たスーツ姿の男2人の姿の中に、佐久間部長の姿は無かった。
この男達は……。
1:暴力団員だ。
2:私服刑事だ。
3:四季エンタープライズの社員だ。
4:DCJの社員だ。
5:皆目見当つかない。