[9月18日06:50.天候:晴 長野県白馬村・白馬八方バスターミナル]
稲生とマリアを乗せた車がバスターミナルに到着する。
マリアを主人とする運転手の車ということもあってか、ロンドンタクシーであった。
そこはさすが、イギリス人というべきだろう。
寡黙な運転手は悪魔の化身か、あるいは……。
荷物を受け取って、2人はバスターミナルの中に入った。
『ご注意! 高速バス乗換え駐車場はありません。特急バス長野行きのご利用には「サンサンパーク白馬」の駐車場・バス停をご利用ください』
稲生:「そろそろバスが入って来る頃だと思いますけど……」
冬なら雪深い所で、多くのスキー客で賑わう所だが、今はそんなシーズンではない。
どちらかというと、登山客の方が多いような感じだ。
今は稲生達のように、これから東京に行くといった感じの乗客がバスを待っていた。
マリア:「まあ、そうだね」
噂をすれば何とやらで、2番乗り場にバスが入って来た。
稲生:「あ、来た来た」
側面に『Highland Express』と書かれたアルピコ交通バスが入ってきた。
稲生達は荷物室に荷物を預けると、早速車内に入った。
オーソドックスな4列シートが並ぶ。
稲生とマリアは後ろの方に、隣り合わせで座った。
稲生:「それにしても……」
稲生は大きな荷物は預けたが、ローブは手に持っている。
防寒着としてのローブの他、夏は防暑着としての役割も持つものだが、稲生は本当に魔法を使う場面に遭遇した時しか着ない。
どうも、似合う感じがしないからである。
マリアは外では着用していたが、バスの中に入るとそれを脱いで膝掛け代わりにした。
東京はまだ残暑があるということで、稲生は半袖のシャツだったし、マリアも薄緑色の長袖のブラウスを着ていた。
冬になればこの上にニットのベストを羽織り、ブレザーも着用するのだが。
で、稲生は自分のローブの中から、1通の封筒を取り出した。
それは、アナスタシアからの手紙。
返信用ハガキを送り返した所、数日経って、このバスのチケットと共に案内状が入っていた。
それによると、勝負は今日の15時。
場所はエレーナが働いている、都内のワンスターホテル会議室。
何でそんな所を勝負の場所にしたのかは分からない。
もしかしたら、あくまで集合場所であって、そこから本当の場所に移動するのかもしれない。
マリア:「メンバーは大丈夫?」
稲生:「ええ。取りあえず、威吹と藤谷班長が来てくれることになりました。今日は3連休の中日で、藤谷班長も会社は休みですし……」
マリア:「あの妖狐か……」
マリアは不快そうな顔をした。
あまり威吹に対して、良いイメージを持っていない。
親友の稲生の前だから、あまり表立って悪く言うことはしないが……。
稲生:「誰でも良いから呼べってことだから藤谷班長をつい呼んじゃいましたけど、いいんですかね?」
マリア:「多分……。アナスタシア師の考えていることが、今1つ分からないからな。一応、私もエレーナに声を掛けた。本来15時と言えばチェックインの時間帯だからフロントが忙しくなる時なんだけど、オーナーが特別に許可してくれたそうだ」
稲生:「どれだけのお金を積んだんだろう……?」
マリア:「深くは考えない方がいい」
稲生:「そうですね。イリーナ先生は来てくれないんですかね?」
マリア:「師匠も重要視していないところを見ると、大した勝負ではないのかもしれない。いずれにせよ、たまに水晶球で見てたりはするさ」
稲生:「ですかねぇ……」
バスはだいたい時間通りに発車した。
〔「お待たせ致しました。皆様、おはようございます。本日もアルピコ交通の高速バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは中央自動車道経由、バスタ新宿行きでございます。……」〕
車内に朝日が差し込んできたので、乗客の一部はカーテンを引いたりしている。
マリアはあまり気にせず、座席のテーブルを出して朝食のサンドイッチを置いて齧りついている。
稲生:「3連休の中日だし、渋滞にハマって遅れたりしないかなぁ……?」
マリア:「その心配はしなくても大丈夫だと思うよ」
稲生:「そうですか?」
[同日12:13.天候:曇 バスタ新宿]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、バスタ新宿に到着致します。お降りの際はお忘れ物、落し物の無いよう、もう1度よくお確かめください」〕
稲生:「……え?定刻通りだ……ぞ?」
マリア:「うん。まあ、そうだろうね」
中央高速のガラ空きぶりに、一般道における信号機のタイミングがあまりにも良過ぎた。
その理由、マリアは知っているようだが……。
稲生:「い、いいんですか?」
マリア:「気にしたら負けたぞ」
稲生:「はあ……」
バスタ新宿の到着場にバスが到着し、大きなエアー音がしてドアが開いた。
乗客達がそれでドアの方に向かう。
稲生:「まだ時間ありますよ。どうしましょう?」
マリア:「ここからホテルまでは?」
稲生:「都営新宿線に乗り換えても、20分あれば着きます」
マリア:「そうか。じゃあ、ここで何か食べない?もうランチの時間だ」
稲生:「あ、そうですね。そうしましょう」
稲生は大きな荷物を持ちながら、バスタ新宿の外に出ることにした。
稲生:「新宿駅周辺も迷子になりやすいですから、あまり都営地下鉄の乗り場から離れない所がいいですね」
マリア:「そうなのか……」
稲生:「作者自身が迷子になって、西口に出られず、南口でムンクの叫びを上げていたそうですから」
マリア:「ほお……」
作者のことはいいの!
作者は南口並びに新南口オンリー!
……いや、失礼。
稲生達は取りあえず南口から、西口方面に向かった。
都営地下鉄大江戸線や、新宿線の新宿駅の表記が見える辺りに……。
稲生:「15時からだと、僕達のチェック・インは後なんでしょうかね?」
マリア:「多分……。まあ、フロントで荷物くらいは預かってくれるだろう」
稲生:「そうですね」
稲生とマリアを乗せた車がバスターミナルに到着する。
マリアを主人とする運転手の車ということもあってか、ロンドンタクシーであった。
そこはさすが、イギリス人というべきだろう。
寡黙な運転手は悪魔の化身か、あるいは……。
荷物を受け取って、2人はバスターミナルの中に入った。
『ご注意! 高速バス乗換え駐車場はありません。特急バス長野行きのご利用には「サンサンパーク白馬」の駐車場・バス停をご利用ください』
稲生:「そろそろバスが入って来る頃だと思いますけど……」
冬なら雪深い所で、多くのスキー客で賑わう所だが、今はそんなシーズンではない。
どちらかというと、登山客の方が多いような感じだ。
今は稲生達のように、これから東京に行くといった感じの乗客がバスを待っていた。
マリア:「まあ、そうだね」
噂をすれば何とやらで、2番乗り場にバスが入って来た。
稲生:「あ、来た来た」
側面に『Highland Express』と書かれたアルピコ交通バスが入ってきた。
稲生達は荷物室に荷物を預けると、早速車内に入った。
オーソドックスな4列シートが並ぶ。
稲生とマリアは後ろの方に、隣り合わせで座った。
稲生:「それにしても……」
稲生は大きな荷物は預けたが、ローブは手に持っている。
防寒着としてのローブの他、夏は防暑着としての役割も持つものだが、稲生は本当に魔法を使う場面に遭遇した時しか着ない。
どうも、似合う感じがしないからである。
マリアは外では着用していたが、バスの中に入るとそれを脱いで膝掛け代わりにした。
東京はまだ残暑があるということで、稲生は半袖のシャツだったし、マリアも薄緑色の長袖のブラウスを着ていた。
冬になればこの上にニットのベストを羽織り、ブレザーも着用するのだが。
で、稲生は自分のローブの中から、1通の封筒を取り出した。
それは、アナスタシアからの手紙。
返信用ハガキを送り返した所、数日経って、このバスのチケットと共に案内状が入っていた。
それによると、勝負は今日の15時。
場所はエレーナが働いている、都内のワンスターホテル会議室。
何でそんな所を勝負の場所にしたのかは分からない。
もしかしたら、あくまで集合場所であって、そこから本当の場所に移動するのかもしれない。
マリア:「メンバーは大丈夫?」
稲生:「ええ。取りあえず、威吹と藤谷班長が来てくれることになりました。今日は3連休の中日で、藤谷班長も会社は休みですし……」
マリア:「あの妖狐か……」
マリアは不快そうな顔をした。
あまり威吹に対して、良いイメージを持っていない。
親友の稲生の前だから、あまり表立って悪く言うことはしないが……。
稲生:「誰でも良いから呼べってことだから藤谷班長をつい呼んじゃいましたけど、いいんですかね?」
マリア:「多分……。アナスタシア師の考えていることが、今1つ分からないからな。一応、私もエレーナに声を掛けた。本来15時と言えばチェックインの時間帯だからフロントが忙しくなる時なんだけど、オーナーが特別に許可してくれたそうだ」
稲生:「どれだけのお金を積んだんだろう……?」
マリア:「深くは考えない方がいい」
稲生:「そうですね。イリーナ先生は来てくれないんですかね?」
マリア:「師匠も重要視していないところを見ると、大した勝負ではないのかもしれない。いずれにせよ、たまに水晶球で見てたりはするさ」
稲生:「ですかねぇ……」
バスはだいたい時間通りに発車した。
〔「お待たせ致しました。皆様、おはようございます。本日もアルピコ交通の高速バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは中央自動車道経由、バスタ新宿行きでございます。……」〕
車内に朝日が差し込んできたので、乗客の一部はカーテンを引いたりしている。
マリアはあまり気にせず、座席のテーブルを出して朝食のサンドイッチを置いて齧りついている。
稲生:「3連休の中日だし、渋滞にハマって遅れたりしないかなぁ……?」
マリア:「その心配はしなくても大丈夫だと思うよ」
稲生:「そうですか?」
[同日12:13.天候:曇 バスタ新宿]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、バスタ新宿に到着致します。お降りの際はお忘れ物、落し物の無いよう、もう1度よくお確かめください」〕
稲生:「……え?定刻通りだ……ぞ?」
マリア:「うん。まあ、そうだろうね」
中央高速のガラ空きぶりに、一般道における信号機のタイミングがあまりにも良過ぎた。
その理由、マリアは知っているようだが……。
稲生:「い、いいんですか?」
マリア:「気にしたら負けたぞ」
稲生:「はあ……」
バスタ新宿の到着場にバスが到着し、大きなエアー音がしてドアが開いた。
乗客達がそれでドアの方に向かう。
稲生:「まだ時間ありますよ。どうしましょう?」
マリア:「ここからホテルまでは?」
稲生:「都営新宿線に乗り換えても、20分あれば着きます」
マリア:「そうか。じゃあ、ここで何か食べない?もうランチの時間だ」
稲生:「あ、そうですね。そうしましょう」
稲生は大きな荷物を持ちながら、バスタ新宿の外に出ることにした。
稲生:「新宿駅周辺も迷子になりやすいですから、あまり都営地下鉄の乗り場から離れない所がいいですね」
マリア:「そうなのか……」
稲生:「作者自身が迷子になって、西口に出られず、南口でムンクの叫びを上げていたそうですから」
マリア:「ほお……」
作者のことはいいの!
作者は南口並びに新南口オンリー!
……いや、失礼。
稲生達は取りあえず南口から、西口方面に向かった。
都営地下鉄大江戸線や、新宿線の新宿駅の表記が見える辺りに……。
稲生:「15時からだと、僕達のチェック・インは後なんでしょうかね?」
マリア:「多分……。まあ、フロントで荷物くらいは預かってくれるだろう」
稲生:「そうですね」