報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「The Second Floor」

2016-09-13 19:16:09 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月3日21:34.天候:不明 廃坑地下2F]

 シンディは奥にあるリフトを見つけた。
 作業員を下層部まで送り込む為のものだ。
 電源を入れてみると、それは入ったのだが、何故か地下2階までしか行けないようになっている。
 仕方が無いので、取りあえずそれで地下2Fへ下りた。
 地下2階は地下1階より照明が少なく、薄暗かった。
 シンディは暗視機能を使用して、奥へ進む。

 シンディ:「!?」

 途中で右にカーブする所があるのだが、ちょうどカーブが始まる所の壁に直径1メートルほどの蜘蛛の絵が映り込んだ。

 アリス:「何これ?気持ち悪い」
 敷島:「趣味の悪い絵だなぁ……」
 平賀:「……?」

 だが、それは絵ではなかった。
 シンディが近づくと、

 敷島:「動いた!?」
 アリス:「気持ち悪い!」

 敷島にしがみつくアリス。

 平賀:「でも、あんな巨大が蜘蛛が?」

 シンディが間合いを取ってスキャンしてみると、金属反応が出た。
 ということで、武器をマグナムに変えて撃ち込むと、蜘蛛は2発で倒れた。
 生物の蜘蛛は死んだり失神したりすると足を丸めるが、ロボットとしての蜘蛛は活動停止に追い込まれても、足を丸めることは無いようだ。
 体内からオイルやら火花を散らして動かなくなった巨大蜘蛛ロボット。
 シンディが改めてスキャンしてみると、体内に弾薬が入っていた。
 どうやらこの蜘蛛、糸や毒液を吐く代わりに銃弾を吐くらしい。
 攻撃される前に倒してしまい、それを見ることはできないが。
 シンディは新しいマグナム弾を3発手に入れた。

 シンディ:「ここは虫型のロボットが飼われている所らしいね」

 シンディがそう言ったのは、奥から今度は大型のゴキブリロボットが走ってきたからだ。
 これにあっては、マシンガンに切り替えて掃射。
 面白いようにひっくり返るゴキブリロボ。
 で、ひっくり返ると、まるで亀のように足をバタつかせて起き上がれない。

 平賀:「かー……こりゃ重大な欠陥だな。でも、虫型ロボットとは考えたな」
 敷島:「スパイロボとして使えそうですね。でも、大きさが不自然ですね」
 平賀:「さすがに、どこかのバイオハザードみたいな巨大虫はバレますもんね」
 敷島:「アリス。今度、DCJさんでそういうの作ってみたら?」
 アリス:「気持ち悪いのはイヤ。どうせなら、萌みたいに可愛いのがいいわ」
 敷島:「妖精型ロイドねぇ……。でも、あれもあれで目立つからなぁ……」

 尚、大型蜘蛛ロボットの中には本当に網を張るのもいるみたいで……。

 敷島:「あれ?あれか、もしかして!?井辺君が言ってた、萌を捕えていた蜘蛛の巣って!」
 平賀:「KR団の秘密研究所で飼われていた、巨大蜘蛛型ロボットですか。ということは、やはりこの廃坑はKR団の……ということになりますね」

 シンディは左足の脛にコンバットナイフを仕込んでおり、それで蜘蛛の糸を切り取った。
 本物の蜘蛛の糸はネバネバしているものだが、こちらの蜘蛛の糸は人工的なもののせいなのか、そんなにネバつきは無い。
 しばらくまた進むと、今度は小型の蜘蛛ロボットが3機ほどやってきた。
 小型といっても、まだ30センチ強の大きさがあり、やっぱり大きい。
 しかも、機械でできるからか、歩いてくる時にカシャンカシャンという金属音が響いてくるので、これも商品化できなかった理由であろうか。
 シンディに攻撃されて壊され、うちひっくり返った1個体は、シンディに踏み潰された。

 敷島:「B2階には何も無さそうですね?」
 平賀:「もっと下の層に行く手段を探しませんと……」

 シンディは奥に古びた鉄扉を見つけた。
 2枚扉である。
 何かの資材倉庫だった場所だろうか?
 中に入ってみた。

 シンディ:「…………」

 中は空洞の部屋だった。
 まあ、倉庫か何かだったのだろう。
 シンディが首を傾げたのは、何故かその部屋の片隅に信楽焼の狸が置かれていたからだ。
 よく居酒屋の入口に置かれている、あの狸の置物である。
 スキャンしてみると、金属反応が出た。
 そして近づいてみると、ヴンと機械の起動する音が鳴り、狸の目が赤く光る。
 そして、グインと狸の足の下からキャタピラーが出てきてシンディに近づいて来た。

 シンディ:「な、なに、あんた?これから、居酒屋にでも出張するの?」
 狸:「ここは・関係者以外・立ち入り禁止です。直ちに・退去・しなさい」
 シンディ:「喋った!?……てか」

 シンディはプッと笑った。

 シンディ:「あんたにそんなこと言われる筋合いは無いわ。それより、研究室とルディの居場所を教えて。もしくは、どちらか片方でもいいわ」
 狸:「繰り返し・警告します。ここは・関係者以外・立ち入り禁止です。直ちに・退去・しなさい」
 シンディ:「フッ、それしか言えないロボットか。それじゃ、しょうがないかな」

 シンディは右手をマシンガンに変形させると、その銃の先で狸の頭をコンと叩いた。

 シンディ:「あんたこそ、アタシの邪魔にならないよう、ここを出て行きなさい。さもないと、バラバラにするわよ?」
 狸:「……警告無視。排除・する」

 狸ロボットは両目をハイビームに光らせると、口をパカッと開け、中からグレネード弾を発射した。

 シンディ:「……マジ?」

 室内には隠れる場所が無い。
 シンディは急いで、グレネード弾を避けた。
 ドォォン!と爆発する。

 シンディ:「狸のくせに、物騒なモン持ってんじゃないよ!」

 シンディはマシンガンを狸ロボットに掃射した。
 だが、その弾が悉く弾き返された。

 シンディ:「なにっ?!」

 狸、今度は手持ちの酒瓶をシンディに向ける。
 ボンッ、ボンッと焼夷弾を発射してきた。

 シンディ:「でぇぇっ!」

 着弾したところから、火の手が上がる。

 シンディは間合いを取って、ライフルで頭を撃ち抜いてやろうと思った。

 シンディ:「いや、待てよ!マシンガンが効かないんじゃ、ライフルも難しいかな!?」

 シンディ、迷っている間にも狸の攻撃の手は止まない。

 シンディ:「あ、そうだ!何も撃ち抜く必要は無いんだ!」

 どうやら、何か有効な手立てが見つかったようだ。
 シンディは少し間合いを取ると、右足の脛の中に仕込んでいたRデコイを転がした。
 Rデコイというのはアリスの発明品で、手榴弾を改造したもの。
 爆発前に特殊信号と光、そしてピコーンピコーンというアラームでもって、人工知能の劣るテロロボットを誘き寄せる。
 そして、誘き寄せたところで爆発するというシロモノだ。
 つまり、人工知能の優れたロイドはそんなものに引っ掛からない。
 ……はずなのだが、逆に鏡音リンが興味を持って拾いに行こうとして、その場にいた人間達全員を冷や汗まみれにしたという実験逸話もある。
 で、この狸ロボットも誘き寄せられた。

 チュドォォンと爆発して、狸ロボットはひっくり返ってしまった。
 このロボットの足は、戦車やブルドーザーみたいなキャタピラー。
 それがひっくり返ったのだから、起き上がれない。

 シンディ:「さ、観念した?助けて欲しかったら、更に下に行く方法を教えてちょうだい」
 狸:「…………」
 シンディ:「ん?なぁに?」
 狸:「自爆・5秒前」
 シンディ:「は!?」

 シンディは急いで部屋から飛び出して、ドアを閉めた。
 その直後、大爆発を起こす倉庫。

 シンディ:「とんでもないヤツだったわ」

 改めてもう1度倉庫に入ると、人間ならその焦げ臭さに顔をしかめただろうが、ロイドは臭いまで分からない。
 入ってみると、あれだけの大爆発なのにも関わらず、天井が崩れたりはしていなかった。
 ただその代わり、一部の壁は崩れていて……。

 シンディ:「あっ、何かボタンがある」

 何かの装置が隠されていた。
 シンディはそのボタンを押してみたが、少なくともここでは何が起きたのか分からなかった。

 シンディ:「どこか別の所で何かが起きたのかしら?」

 取りあえず、坑道は更に先まで続いている。
 再び倉庫を出て先に進むことにした。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「The First Floor」

2016-09-13 16:06:08 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月3日20:30.天候:雨 廃坑手前]

 エミリーは敷島達の所へ引き返した。
 アメリカでの反省を踏まえてのことだった。
 つまり、護衛が必要だという理由だ。
 仕方が無いので、シンディ1人だけ潜入することにした次第だ。
 もちろん、シンディの視点は全て『走る司令室』のモニタに映し出されている。
 廃坑の入口は当然、コンクリートの壁で塞がれていた。
 だが、仮の入口がすぐ近くにある。
 すぐ近くにある管理棟跡。
 ここも廃墟であるはずなのに、何故か入口のドアは電子ロックが掛けられていた。
 今度はテンキー打ち込み式ではない。
 非接触式カード読み取り機があった。
 シンディは、試しに自分の右手の掌を当ててみた。
 右手の掌には、赤外線通信の送受信部がある。
 すると、ドアロックが開いた。
 どうやら、本当に呼ばれているらしい。
 ドアを開けて中に入ると、朽ちた什器が転がっていた。

 観光地化された所と違い、ここは本当に廃坑・廃墟のようである。
 シンディは管理棟内をスキャンした。
 すると、地震で倒れた古いキャビネットの下に何かがあるのが分かった。
 人間なら、1人だとなかなか重くて持ち上がらないかもしれない。
 だがシンディは、ひょいと1人で持ち上げた。

 シンディ:「やっぱりね」

 そのキャビネットに隠すようにして、地下に下りる階段があった。
 シンディは暗視機能にカメラを切り替えて下りた。
 廃坑であるにも関わらず、その坑道には照明が点灯していた。

 敷島:「シンディ。できれば、ルディを探せ。電ノコ男になっているはずだ」
 シンディ:「了解」
 鷲田:「それと、佐久間博士がKR団の残党だったという証拠だな」

 廃坑であるにも関わらず、坑道には工事現場などで取り付けられる電球が壁に取り付けられている。
 それなのに、人の気配はしない。

 敷島:「坑道そのものは、何の意味も無いんじゃないかな?」
 平賀:「恐らく、どこかに広い空間があるはずです。そこを研究室とかにしている可能性は高いですね」
 敷島:「そういうわけだ。研究室を探してくれ。きっとそこに、佐久間教授がその残党であるという証拠もあるはずだ」
 シンディ:「了解」

 シンディは奥へ進んだ。
 途中に、小さなディーゼル機関車にトロッコが3両連結されたトロッコ列車が放置されている。
 それはいいのだが、谷のような深い穴の向こうに別の坑道があって、何故かトロッコ列車が走っている。
 廃坑なのにトロッコ列車が走っているとは、これ如何に?
 シンディはその列車をスキャンしようとした。
 が!

 シンディ:「!!!」

 その列車がシンディの前に差し掛かった時、トロッコに乗せられたロボットがシンディに向かってマシンガンを一斉掃射してきた。

 シンディ:「くっ!」

 マシンガンに被弾したくらいでは壊れないのがマルチタイプ。
 シンディは放置されているトロッコの陰に隠れて、掃射を免れた。

 敷島:「何か昔、ああいうゲームがあったなぁ……」
 平賀:「そうですねぇ……。何かのシューティングゲームでしたっけ……?」

 マシンガン列車から逃れたシンディは、すぐに先へ進む。
 そしてようやく、1つの部屋を見つけた。
 中に入ると、素掘りの坑道とは別空間が広がっていた。

 敷島:「ここは……どうやら、事務所のようだな」
 鷲田:「ちょうどいい。何か無いか、探してみてくれ」

 地上にあった管理棟よりはきれいな事務室。
 よりは、というのは、この部屋もそれなりに荒れているということだ。
 もしかしたら、つい最近までここには人がいたのかもしれない。
 それが警察に嗅ぎ付けられたので、慌てて逃げ出したのか……。

 敷島:「メモリーチップがあるな。あと、そこにUSBメモリーなんかもある。ごっそり持ってってやれ」
 シンディ:「了解」
 平賀:「よっぽど慌てて逃げて行ったんでしょうね。一見して、大事そうなものまで落として行くなんて……」
 敷島:「そうですね」

 その時、事務室入口のドアがガチャっと開けられた。
 入って来たのは、一体のロボット。
 シンディはすぐに右手をマシンガンに変形させた。

 シンディ:「ちょうど良かったわ。ここにいるはずのルディを探しているんだけど、どこにいるの?教えて」
 ロボット:「キュルキュルキュルキュル……」
 シンディ:「考えているヒマは無いよ?あと5秒以内に答えないと、その頭撃ち抜く。5、4……」
 ロボット:「ジャニス様……イナイ……」
 シンディ:「ああ。ジャニスなら、上にいる私の姉がブッ壊してやったよ。今度はルディの番だ。……お前も一緒に地獄に行くか?」
 ロボット:「!!!」

 ロボットは慌てて事務室の外へと逃げ出した。

 シンディ:「待たんかい、コラーッ!!」

 シンディも一緒に外に飛び出す。
 と、そこへ、コロンコロンと転がって来る2〜3個の何か。

 シンディ:「!?」

 シンディはすぐにそれが何か分かって、横坑に隠れた。
 直後、爆発が起きる。
 手榴弾であった。

 シンディ:「くそっ!逃げ足の速い奴め!」

 シンディは舌打ちすると、再び事務室に戻った。
 そこで色々調べてみると、まず有益なものとして、この地下秘密研究所のマップを手に入れた。
 だが、佐久間公男が残党である証拠までは見つからなかった。
 事務室であれば、名簿くらいあるかと思ったのだが……。

 敷島:「よし。そこでの探索は十分だろう。研究室に向かってくれ。ルディもそこにいるかもしれない」
 シンディ:「了解したわ」

 シンディは事務室の外に出た。
 マップによると、研究室はもっと下のフロアにあるらしい。
 ここは坑道だから、普通に階段などで行けるようにはなっていないだろう。
 梯子とかエレベーターで下りるようになっているはずだ。
 マップによれば、この坑道が現役時代、作業員達を下のフロアに送り込む為のリフトが存在していることになっている。
 こうして電気が使え、先ほどのトロッコ列車が走れるくらいなのだから、リフトも稼働していておかしくはないはずだ。
 シンディは坑道を更に奥に進んだ。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「KR団の残党」

2016-09-13 10:24:47 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月3日19:22.天候:曇 宮城県栗原市郊外]

 県道をひた走る1台のマイクロバス。
 それが細倉マインパーク前駅跡に着く。

 鷲田:「おう、現れたな」

 駅前広場だった所には、1台の乗用車が止まっていた。
 そこから降りて来たのは、鷲田警視である。
 バスから降りて来たのは敷島。

 敷島:「大ボス自らお出迎えとは、珍しいですな。警察の縄張りとやらも、形骸化ですか?」
 鷲田:「全く。お前を1度逮捕したくなったよ。……KR団に関してなら、もう地方警察の対応レベルじゃないからな。あのメモリーの解析結果、読ませてもらったよ」
 敷島:「ええ。見事なものですよね」
 鷲田:「ああ。今は観光坑道として営業している細倉鉱山だが、実はそれより少し北に行った所には別の鉱山会社が運営していた廃坑がある。そちらは交通の便があまりにも悪く、観光にも適さないということで、そのまま放置されている状態だという。そういう所を狙ったと思われるな」
 敷島:「では、今から向かいましょう」
 鷲田:「うむ」

 と、その時、鷲田のポケットからケータイの着信音が鳴った。

 鷲田:「ちょっと待ってくれ」

 鷲田が出る。

 鷲田:「ああ、私だ。……ああ、そうか。やはりな。では我々は、証拠を挙げる努力を行うこととする。幸い、こっちには“捜査協力者”が何人もいるからな。……ああ。ではまた追って連絡する」

 鷲田は電話を切った。

 敷島:「何か進展がありましたか?」
 鷲田:「先ほど、佐久間夫妻を逮捕した。罪状は色々あるが、まあ、KR団の残党に協力した廉だな」
 平賀:「あの佐久間先生が……」
 敷島:「残党の協力者じゃなくて、残党そのものじゃなかったのかなー?」
 鷲田:「だが佐久間博士の自宅は全焼してしまって、証拠が無い。平賀教授が回収した装置だって、単なる佐久間博士の発明品であるなら、何の罪も無いわけだからな」
 平賀:「確かに……」

 おおかた、佐久間公男が残党で弥生が協力者といったところか。

 アリス:「ねえ、ちょっと!」

 アリスも車から降りて来た。
 因みにマイクロバスはDCJの社用車だが、ただの社用車ではない。
 アメリカにあった、『走る司令室』の日本版といった感じになっている。
 アメリカのは大型バスを改造したものだが、日本版ではせいぜいマイクロバス改造といったところだ。
 運転してきたのは、大型免許持ちの敷島である。

 敷島:「どうした?」
 アリス:「何か、無線に変な音楽が流れてきたんだけど?」
 平賀:「何が?」

 エミリーとシンディも、無線通信の周波数と感度を合わせてみた。
 すると、そこから聞こえて来たのはピアノ曲。

 https://www.youtube.com/watch?v=QORmfyOqyAU

 シンディ:「これ、姉さんが弾いてるピアノ曲の1つじゃない?」
 エミリー:「あ……」
 敷島:「何でそんなもんが、無線から聞こえてくるんだ?」
 平賀:「そう言えば自分、この曲は聴いたことが無いぞ。お前が作曲したのか?」
 エミリー:「ノー。電気信号の・旋律を・ピアノで・弾いたもの・です」
 敷島:「これを送っているのは誰なんだ?」
 平賀:「ジャニスはもう壊したはずだから……」
 敷島:「ルディか!」
 鷲田:「恐らく、現場で待っているから早く来いという意味なんだろうな」
 敷島:「そういうことなら、早く行きましょう」
 平賀:「何か、罠が待ち受けているような気がするなぁ……」

 敷島は運転席に乗り込むと、マイクロバスを出した。
 こうしている間もピアノの旋律は続いており、別の曲が流れて来た。

 https://www.youtube.com/watch?v=KYWd8f6qsAo

 シンディ:「……ボーカロイド」
 平賀:「なに?」

 https://www.youtube.com/watch?v=39a9Oc9cgB8

 シンディ:「ボーカロイドに聴かせれば、何か分かるかもしれないね。実は歌詞が付いていて、聴かせたら歌い出すかもしれないじゃない?」
 平賀:「それが答えだというのか。しかし一体、何の?」
 エミリー:「シンディ。これらは・全て・ピアノ独奏曲だ。歌詞など・無い」
 シンディ:「じゃあ、姉さんは何だって言うの?」
 エミリー:「ルディ本人か・分かりませんが・私に・用が・あるのかも・しれません」
 平賀:「何だって?」
 エミリー:「これらの・ピアノ曲を・弾いたこと・あるのは・私だけ・です」
 平賀:「そうかぁ……」
 シンディ:「姉さんに用ってなに?」
 敷島:「とにかく、今は行ってみるしか無いよ」

[同日20:03.天候:曇 廃坑入口]

 敷島:「見えて来たぞ」

 ここは宮城県内なのだろうか。
 それとも、岩手県?秋田県?
 そう思うくらい走って来たような気がした。
 とにかく、林道ではないかと思える場所の入口にそれはあった。

 鷲田:「ゲートがロックされているな。ま、当たり前か。だが、そのロックの仕方が廃坑らしからぬ仕掛けだ」
 敷島:「仕掛け?」
 鷲田:「見ろ。入口の鍵がテンキー式の電子ロックになってやがる。番号は分かるのか?」
 敷島:「アリス」
 アリス:「知らないわよ!」
 平賀:「ナツの解析したメモリーには、何も無かったんですか?」
 敷島:「無かったなぁ……」

 シンディがテンキーに触ってみた。
 押すとピッピッと鳴るタイプなのだが、番号によって音階が違う。

 エミリー:「……!」

 エミリーがそのテンキーの前に立った。
 恐らく、このテンキーによって打ち込まれる番号は何の意味も持たないのだろう。
 エミリーは全ての番号を押してみて、どの番号がどの音階を出すのかを確認した。
 そして……。

 敷島:「あのピアノ曲(https://www.youtube.com/watch?v=QORmfyOqyAU)だ」

 もちろんピアノは両手で主旋律と副旋律を弾くわけだから、テンキーでは主旋律単体である。
 だが、聴けばそれだと分かる。
 で、

 ピーン♪……カチッ。

 敷島:「開いた!」
 鷲田:「なるほど。さっきのピアノ曲は、ここを開ける為のヒントだったのか。やはり敵さんは、中で歓迎の準備をして待っているということだな」

 鷲田は腕組みをして言った。

 敷島:「俺達はここで待機していよう。あとはエミリーとシンディ、アメリカの時のように頼む」
 エミリー:「かしこまりました」
 シンディ:「了解!」

 エミリーとシンディは門の奥に向かった。

 鷲田:「やってくれるか、あのロボット達は?」
 敷島:「大丈夫ですよ。デイライト・アメリカのアルバート所長と専務の陰謀を暴けたじゃないですか」
 鷲田:「ふむ……」

 その時、敷島達の頭に水滴が当たった。
 それは雨だった。

 アリス:「Wow!降って来た!」
 敷島:「山の天気は変わりやすいからなぁ……」
 平賀:「早く中に入って、彼女らの動きを見てみましょう」

 敷島達は日本版『走る司令室』の中に入った。
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