報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「進む捜査」

2016-09-07 19:07:20 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月31日15:00.天候:晴 東北工科大学・新研究棟]

 敷島はシンディを伴って、東北工科大学にいた。
 シンディが電ノコ男と格闘とした際、そいつが落としていったメモリーチップを解析してもらう為だ。

 敷島:「どうです、平賀先生?やっぱりウィルスまみれ?」
 平賀:「いや……。これは行動履歴を記したものですね。あの電ノコ男の」
 敷島:「ということは?」
 平賀:「ええ。この数字は、北緯と東経を表しているようです。自分が旧研究棟で襲われた日時と照合してみると、ピタリと合うんですよ」
 敷島:「じゃあ、やっぱりあいつは平賀先生を襲ったヤツと同一個体ということで……」
 平賀:「間違い無いでしょうね。自分を襲った後、北の方に逃げてますね」

 平賀はもう1台のPCでもって、電ノコ男の行動履歴をマップ上に表した。

 敷島:「どうですか?」
 平賀:「途中で、高速で移動していますね。恐らく、車を使っているのでしょう」
 敷島:「車!?」
 平賀:「どうやら、ルディやジャニスの他に協力者がいるようですね」
 敷島:「協力者ですか!……そもそも、研究所から脱走できたという時点でおかしかったんですよ」
 平賀:「DCJの研究所のカメラとか、怪しい人物は映っていなかったんですかねぇ……?」
 敷島:「それなら先生。ここもそうですよ。平賀先生を襲った後、車で逃走するところとか、カメラに映らなかったんですかね?」
 平賀:「それが、旧研究棟内にもカメラがあったんですが、全部壊されていたそうなんですよ」
 敷島:「ええっ!?」
 平賀:「電ノコ野郎は大学の外へは徒歩で逃げました。そこまではカメラに映っているんですが、その先は映っていないんです。例えば大学の出入口なんかにも監視カメラが設置されているんですが、ヤツはその先のカメラに映らない部分から、急にスピードを上げた。つまり、そこから車に乗ったと思われます」
 敷島:「うー……。ちょっと、全部のカメラを見せてください!」
 平賀:「そんなことして、どうするんですか?」
 敷島:「怪しい車がいないか、確認するんですよ。少なくとも、大学の全部の門のカメラを見れば、怪しい車が映ってるでしょう」
 平賀:「いや、しかし……。……分かりました。自分から、総務に頼んでみましょう」
 敷島:「お願いします」

[同日18:00.天候:晴 同大学・警備本部→平賀の研究室]

 東北工科大学は山あいにある。
 周辺の道路は付近住民の生活道路として活用されている部分もあるし、大学の関係者しか通らないような山道もある。
 大学は正門から裏門まで何ヶ所もの出入口に監視カメラを設けている。

 敷島:「いた!いたいたいた!あれだ!!」

 敷島が叫んだ。
 平賀が襲われた後、彼は車で大学から脱出して警察に駆け込んだわけだが、まずはその平賀の車が映っていた。
 平賀が交番のある住宅街へ消えて少ししてから、件の門を通り過ぎた別の車がいた。
 それは平賀が脱出した門を通り過ぎた。
 そして、次の門のある所までは行かずに、カメラの死角になっている所に止まったようだ。
 電ノコ男が門を出て、怪しい車が走り去った方へ走って行くのが分かった。
 そこで恐らく電ノコ男をピックアップしたのだろう。
 別の門に件の車が映った後、2度と他のカメラに映らなくなった。
 その門の先には交差点があって、別ルートで住宅街へ向かえるルートがあるからである。
 再び大学の外周路を行く道に入れば、再び大学のカメラに映る可能性があるが、それが全く無かったということは、交差点を大学から離れる(住宅街へ向かう)道に入ったものと思われる。
 敷島は警備責任者に件のシーンをDVDにダビングしてもらうと、これを持って再び平賀の研究室に向かった。

 平賀:「そ、そう言われてみれば、1台別の車とすれ違ったかもしれません……!」

 平賀は驚いた顔をしていた。

 平賀:「何ぶん、あの時はとにかく電ノコ野郎から逃げることしか考えていなかったので、気にしていなかったんですよ」
 敷島:「とにかく、これで電ノコ野郎に協力者がいることが分かりましたね。いや、むしろそいつが電ノコ野郎を使っているのかもしれない……」
 平賀:「それとその電ノコ野郎、履歴を見たら、自分を襲った後に別の場所に移動しているんです」
 敷島:「どこですか?」
 平賀:「ここです」

 平賀は画面上の地図を指さした。
 それは宮城県の北西部。

 平賀:「見覚えがありませんか?この位置……」
 シンディ:「KR団の秘密研究所があった所ね」

 シンディが代わりに答えた。
 井辺翔太が東京で浚われ、妖精型ロイドの萌共々救出した場所である。

 敷島:「でも後で、あの秘密施設は爆発したはずじゃ?」
 平賀:「ええ。悪の組織のベタ過ぎる法則です。で、実際はそこと位置がズレているんですよ」
 敷島:「ズレている?」
 平賀:「実際にKR団の施設があった所よりも、もう少し南東寄りです」
 シンディ:「宮城県栗原市ね」
 敷島:「そこに行けば、電ノコ野郎を倒すことができるわけか」
 平賀:「ですが、今行くのはやめた方がいいかもしれません」
 敷島:「何故ですか?」
 平賀:「シンディがマグナムを5発も撃ち込んだのに、全く倒れる素振りは無かったんですよね?」
 敷島:「まあ、そうですが……。相手は腐ってもマルチタイプですし……」
 平賀:「ルディだけじゃなく、ジャニスもどこかにいるはずです。シンディだけでは勝てませんよ」
 敷島:「それじゃ、エミリーもお借りして……」
 平賀:「あとはウィルスですね。いつ、どこでウィルスに感染するか分からない。ルディとジャニスと戦う前……もしくは戦っている時にでもウィルスに感染しては、元も子もありません」
 敷島:「どこかにワクチンか何かありませんかね?」
 平賀:「新型の実験段階の物だと、まだウィルス駆除は無いかもしれませんよ?」
 敷島:「とにかく、順番に筋道を立ててみることにしましょう。フラグ立てとも言いますがね。まずは、佐久間教授の家をもう1度調べてみようと思います」
 平賀:「大丈夫ですか?アルエットがウィルスに感染した場所ですよ?」
 敷島:「ええ。ですので、シンディは連れて行きません」
 シンディ:「社長……!?」
 敷島:「家の前までは来てもらうけど、あとはダメだ」
 平賀:「自分も一緒に行きたいところですが、アルエットの修理がありますので……」
 敷島:「いいですよ。こう見えても私は『不死身の敷島』ですからね、私1人で大丈夫ですよ」

 敷島はポンと自分の胸を叩いた。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「真夜中の訪問者」

2016-09-07 15:45:07 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月31日02:00.天候:雷 宮城県仙台市青葉区 ホテル東横イン仙台西口広瀬通・客室]

 ベッドで敷島がスヤスヤ眠っている。
 シンディは充電コードを繋ぎ、椅子に座って目を閉じていた。

 シンディ:「……!?」

 で、こんな真夜中だというのに、部屋のドアがノックされる。
 シンディのスリープ状態が解除され、元の状態に戻る。
 その間もドアはノックされ続けていた。

 敷島:「一体、何だってんだ……?」

 その音に敷島も目が覚める。

 シンディ:「社長、私が見てきます。社長はここに……」
 敷島:「あ、ああ……」

 シンディが立ち上がって、ドアの所に向かった。
 スキャンすると同時に、ドアの覗き穴から確認してみる。
 スキャンには金属反応が出た上、それがロイドであるという結果が出た。
 そして覗き穴から、外を見てみると……。

 宿泊客:「ちょっと。うるさいんで、静かにしてもらえますか?」

 向かいの部屋の宿泊客が出て来た。
 すると、そのロイドから電動ノコギリのような音がしたかと思うと、

 宿泊客:「うぎゃあああああああっ!!」

 血しぶきで覗き穴が真っ赤に染まった。

 シンディ:「社長はそこにいてください!」
 敷島:「お、おい!シンディ!」

 シンディは部屋の外に飛び出した。

 シンディ:「やめろ!」

 シンディが声を張り上げると、電動ノコギリを装着したロイドは、首を刎ね飛ばした宿泊客の返り血に染まっていた。
 顔にはドクロのマスクがされており、素顔は見えない。
 哀しいかな、旧型のマルチタイプでは、スキャンの結果とメモリーのデータとの照合に時間が掛かってしまう。
 だから、この電動ノコギリ男の正体については不明だった。
 しかし、確実なことが1つある。
 それは、明らかにシンディ達の敵であるということだ。
 電ノコ男はシンディの姿を見つけると、電ノコをバイクのエンジンのようにブルンブルン回しながら向かって来た。
 シンディは右手をマグナムに変形させた。
 ライフルは至近距離からの攻撃には向かないし、マシンガンでは流れ弾に人が当たる恐れがある。
 それでも間合いを取る必要があるが、電ノコ男は動きが素早く、シンディが間合いを取ろうとしてもすぐに詰めてきて、電ノコで攻撃してくる。

 シンディ:「こいつ!ちょこまかと!」
 敷島:「いい!シンディ、こいつに体当たりかましてやれ!」
 シンディ:「社長!危ないから中にいて!」

 電ノコ男は敷島が客室のドアの隙間から顔を覗かせたのを見て、急いで向かってきた。
 こいつの狙いは敷島だったのか。
 だが結果的に、電ノコ男はシンディに背中を見せることになり……。

 シンディ:「食らえ!」

 ドォン!と大型で威力の強い拳銃パイソンをベースにした銃により、マグナム弾を撃ち込まれた電ノコ男。
 慌てて振り向くが、またもやシンディに2発目に撃ち込まれる。
 だが、電ノコを振りかざし、シンディに飛び掛かって来る。
 シンディは転がって、その攻撃を避ける。
 更に3発目を撃ち込むが、これは電ノコ男の電ノコに当たり、弾き返された。
 が、そこが弱点の1つだったのが、後ろに仰け反って怯んだ形になる。
 4発目、5発目と撃ち込むが、なかなか倒れない。
 やはり相手は、マルチタイプだろうか。 

 警察官A:「警察だ!おとなしくしろ!!」

 その時、通報で駆け付けた警察隊がやってきた。
 シンディはすぐに銃を引っ込ませて、元の右手に戻す。
 電ノコ男はシンディの上を飛び越え、廊下の窓ガラスをブチ破って逃走した。

 警察官B:「窓から逃げだぞ!追えーっ!」

 警官隊が急いで非常階段から下に向かう中、シンディはあえて追わなかった。

 シンディ:「これは……?」

 電ノコ男が落として行ったメモリーチップが気になったからである。

[同日08:00.天候:晴 ホテル1Fロビー]

 敷島:「くそ……。警察の事情聴取で、ほとんど寝れなかった……」

 敷島は眠そうな顔でサービスの朝食を取っていた。
 もっとも、事情聴取をされたのはシンディの方だったが。
 最初、彼女も疑われたのだが、すぐに疑いは取れた。
 但し、電ノコ男との戦闘シーンの部分のメモリーはコピーされたが。

 シンディ:「今日はイベント会社さんとの打ち合わせよ。大丈夫?」
 敷島:「『東北ボカロフェスティバル』か。誰だよ、こんな企画立てたの?」
 シンディ:「四季エンタープライズ東北支社の佐久間企画部長」
 敷島:「ああ、そうだったな。地方支社の人間とはいえ、親会社の佐久間……佐久間ァ!?」
 シンディ:「そうだね」
 敷島:「もしかして、事件の現場となった佐久間教授と親戚筋だったりして?」
 シンディ:「そうかもしれないね」

[同日10:00.天候:晴 仙台市中心部のテナントビル]

 敷島:「私、東京から参りました敷島エージェンシーの敷島です。よろしくお願いします」
 佐久間:「四季エンタープライズ東北支社企画部の佐久間昭と申します」

 以下、佐久間は昭と称す。

 敷島:「『東北ボカロフェスティバル』に出られるボーカロイド、うちからは全員何とかなりそうです」
 昭:「そうですか。さすがは敷島社長です。今、ボーカロイドはコアなファンが上昇中だというので、きっと上手く行く自信があります」

 イベント関係の話が進んで行き、その話が一段落したところで……。

 敷島:「ところで、部長。私の勘違いでしたら申し訳無いのですが、1つお伺いしたいことがございまして……」
 昭:「何でしょう?」
 敷島:「部長は泉区にお住まいの佐久間教授とは、御親戚でありますか?」
 昭:「私の叔父ですよ。……あ、もしかして、ニュースをご覧になったのですか?」
 敷島:「はい。実はその……騒ぎの渦中にいたのが、うちのロイドでして」
 昭:「そうだったんですか!いや、叔父がとんだことをしたせいで、申し訳無かったですね」
 敷島:「いえ。こちらはアルエット以外、何の実害も無いんですが、佐久間公男教授が何かとんでもないことをされていたのですか?」
 昭:「ご存知の通り、あそこの家は今現在、叔父夫妻の2人暮らしなんです」
 敷島:「存じています」
 昭:「あの広い家に2人暮らしですから、確かに寂しいのは分かります。でも、それにしたって、例えば下宿人を住まわせるだとか、里親制度を活用して里子でも取るとか、その対策はいくらでも取れるのに、何故かロボット2体を導入するという沙汰に走ったのです」
 敷島:「メイドロイドをベースにしたものですから、まだ実験段階だったというわけですね」
 昭:「最後にはあんな目に遭ったのですから、自業自得ですよ」
 敷島:「それは……。あ、そうだ。部長にこんなことをお願いしても良いのかどうか……」
 昭:「何でしょうか?」
 敷島:「佐久間教授夫妻は、まだ精神疾患で入院中です。なので、直接ご本人達に許可は取れない。実はあの家で調べたいことがありまして、親族である部長にお伺いしてよろしいものかと……」
 昭:「調べたいこと?何でしょうか?」
 敷島:「正直に申し上げますと、うちのアルエットが佐久間教授のお宅で、新型のコンピューターウィルスに感染した疑いがあるんですよ。その真偽と、もしそうだとしたら、何故そうなったのかを調べたいのです」
 昭:「これは急な話ですね」
 敷島:「ええ、全くです。でも原因が分かれば、今修理中のアルエットをもっと早く直せるかもしれないんです」
 昭:「敷島エージェンシーさんの所のロイドがそのような目に遭ったのは、叔父の責任でもありますからね。いいでしょう。甥っ子として、その責任を負いましょう。鍵の方を調達してきますので、しばらく時間をもらえませんか?」
 敷島:「もちろんです。ありがとうございます。その間に佐久間教授夫妻が退院できれば良いのですが……」
 昭:「だいぶ重症らしいですよ。何かに怯えているようですが、医者でも皆目分からないそうです」
 敷島:「なるほど。(あのセキュリティトークン、そんなにヤバいことでもあったんだろうか?)」

 もっとも、そのセキュリティトークンは佐久間公男の言により、アルエットの手で焼却されてしまったが……。
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