報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「アナスタシア組とのガチバトル!?」

2016-09-24 20:50:55 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月5日15:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 稲生は時間になったのを見計らうと、部屋を出て隣のマリアの部屋のドアをノックした。

 稲生:「マリアさん、準備はいいですかー?」
 マリア:「ああ、今行く」

 さすがの稲生も、普段の私服の上から見習用のローブを羽織っている。

 マリア:「お待たせ」

 マリアもローブと魔法の杖を持って、部屋から出て来た。
 緊張した面持ちで、エレベーターに乗り込んだ。

 稲生:「何だか緊張しますね」
 マリア:「アナスタシア師、一体何を考えているのやら……」

 エレベーターが1階に到着し、ドアが開く。
 目の前にはロビーがあるわけで……。

 威吹:「ユタ!」
 稲生:「威吹!」

 ソファに座っていたのは銀髪を肩の所で切り、その頭から狐耳を出した妖狐。
 緑色の着物に灰色の袴を穿いている。

 稲生:「久しぶりだなぁ!」
 威吹:「いや、全く!」

 威吹は金色の瞳が目立つ目を細めて、稲生と握手を交わした。
 元々は狐耳を生やすまでには妖力は解放せず、髪も腰までの長さまで伸ばしていたのだが、巫女のさくらとの結婚を機に、今の出で立ちとなった。
 稲生との盟約は切れたが、それまで何年もの付き合いだったこともあり、今でもこうして友人関係は続けている。

 藤谷:「稲生君、俺のことも忘れちゃイカンよ」
 稲生:「もちろんです、藤谷班長。今日はご足労頂き、ありがとうございます」
 マリア:「エレーナは?……全く、あいつだけ遅刻か」
 エレーナ:「ゴメンゴメン!道が混んでて!戻るのギリだった!」
 マリア:「ホウキで空飛んで、何が渋滞だ!」
 稲生:「ま、とにかく、これで僕達の方は人数が揃ったわけですけど……」

 そこへ、会議室の中から腕組みしたアナスタシアとその弟子数人が出て来た。
 アナスタシア組の衣装はほとんど黒で統一されており、アナスタシアの着ている服は黒のドレスコートで、その上に羽織っているローブだけは白い。
 よく見ると、イリーナの着ている服とはほとんど色違いなだけのような気もする。
 対して弟子達は、男女共に黒いスーツで統一されていた。
 まだまだ残暑が厳しいのに、よくもまあ、そんな暑い恰好できるものだと思う。

 アナスタシア:「あなた達も人数が揃ったみたいね」
 マリア:「そうです。一体これから何の勝負をしようというのですか?」
 アナスタシア:「私はそのチームで、稲生君がリーダーだと思ってる。稲生君と話をさせてくれない?」
 マリア:「イリーナ組のマスターは私ですが?」
 稲生:「まあまあ、マリアさん。このままでは、話が進みそうもありません。一応、僕が話をします。もし何かヤバイことがあったら、その時、お願いします」
 マリア:「……分かった」
 藤谷:(このアナスタシアって人も美人だけど、何か性格キツそうだな。やっぱ、イリーナ先生みたいなのほほんとした方がいいかもしれん……)
 稲生:「それで、話というのは?魔法の勝負をするんじゃないんですか?これから……」
 アナスタシア:「ええ、もちろんこれから勝負するわよ。その前に、同意書にサインして欲しいの」
 稲生:「同意書?まあ、いいですけどね。威吹も遠い魔界から来てくれたし、藤谷班長もお忙しいので、手短にして頂きたいところなんですけどね?」
 弟子A:「忙しいのはアナスタシア先生も同じだぞ!」
 弟子B:「そうよ!早いとこサインしなさいよ!」
 アナスタシア:「まあ、いいから。サインをしてくれてから、勝負を始めましょう」
 稲生:「分かりました」

 稲生は同意書にちょいちょいとサインをした。
 アナスタシアは満足そうな笑みを浮かべた。

 アナスタシア:「『負けた方は勝った方の言う事を何でも聞く』。ふふふ……決まりね」
 稲生:「え?そんなこと書いてあったの……?」
 エレーナ:「稲生氏、今度からはそういった同意書とか契約書とか出されたら、ちゃんとよく読んどいた方がいいよ?この魔道師業界、何でも契約社会だから」
 マリア:「業界……ってか、勇太にくっつくな!」
 アナスタシア:「さあ!これで決まったわ!勝負の場所はこの会議室!心して入りなさい!」

 アナスタシアの合図と共に、他の弟子達が両開きの会議室のドアを開けた。

 マリア:「勇太!入った途端、どこか異世界に飛ばされる恐れがある!気をつけろ!」
 稲生:「了解しました!」
 藤谷:「おいおいおい!そんな物騒な話だなんて、聞いてねーよ!?」
 威吹:「案ずるな。だったら、某(それがし)が助けてやろう」

 威吹は左腰に差した妖刀の柄に手を掛け、いつでも抜刀できる体勢になった。

 エレーナ:「いや、そんな感じ、全く無いんだけど……」

 エレーナの言う通り、ドアの先には普通に会議室があるだけだった。
 しかもそこにあったのは……。

 藤谷:「あ?何だこれ?」

 会議に使う机と椅子は壁際に寄せられ、代わりに置かれていたのが、ゲーセンにあるようなゲームの筐体。

 威吹:「これは魔法具か何かか?」
 稲生:「そうなの!?いや、僕にはどうしても“落ちモノ”にしか見えないんだけど……」
 マリア:「これは一体、どういうことですか!?」
 アナスタシア:「同意書を読んで無かったの?『勝負の方法はアナスタシア組に任せる』とあるわよ?」
 稲生:「う……。皆さん、すいません」
 藤谷:「いや、別に構わないが……。もしかして、普通の人間の俺も呼ばれたってことは、別に勝負は魔法を使うものじゃないってことじゃねーのか?」
 アナスタシア:「お察しの通りよ。あなた達は1人ずつ、このゲームで私の弟子達と勝負してもらう。それで勝った方が、チームとしても勝ちよ?どう?簡単でしょ?」
 マリア:「ちょ……ちょっと待った……。私、こういうゲームはやったこと無い……」
 アナスタシア:「じゃあ、勝負を始めるわ!位置について!」

 先鋒は威吹と弟子A。
 だが……。

 稲生:「違う、威吹!そうじゃない!同じ色を合わせるんだって!!」

 先鋒同士の勝負、たったの1分で終了。
 アナスタシア組の勝ち。
 次鋒はマリアと再び弟子A。
 で……。

 稲生:「違います!マリアさん!縦じゃなく、横も合わせて!」
 マリア:("゚д゚)

 またもやアナスタシア組の勝ち。

 アナスタシア:「アっハハハハハハハハハ!なーにやってるのー!?これじゃ、勝負にもなりはしないわね!?」

 アナスタシアは勝ち誇ったような、バカにしたような笑いを浮かべた。

 稲生:「藤谷班長、お願いします!」
 藤谷:「くそっ!」

 中堅の藤谷、連勝中の弟子Aと勝負する。
 さすがは人間の藤谷。
 それまでの2人と比べると、確かに善戦した。
 だが、ギリギリの所で負けてしまった。

 藤谷:「チックショーっ!パチかスロットで勝負しろ!」
 アナスタシア:「ダメよ。勝負の方法はこちらに任せるって同意書にあるんだから!さ、早く次を用意しなさいな」

 副将はエレーナである。
 で……。

 エレーナ:「はいはいっと!」
 弟子A:「うわっ!」

 エレーナ、何と弟子Aを敗退させた。

 稲生:「エレーナ、強いね!?」
 エレーナ:「皆が弱いのよ。ねぇ、稲生氏……いや、稲生君。勝ったら、マリアンナから私に乗り換えない?」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「コラーッ!」
 藤谷:「おおっ、稲生君、モテモテだな〜」
 威吹:(魔女じゃ“食え”ないからダメだな……)

 今度は弟子Bと戦うエレーナ。
 弟子Bはかなり強いが、エレーナは汗をかきつつ、それでも勝利した。

 アナスタシア:「あら?あなた、結構強いのね?」
 エレーナ:「夜中のフロントはヒマなので、よくテトリスやってました」
 稲生:「いいのか、それ……?」

 ところがエレーナ、弟子Cにはあっさり負ける。

 エレーナ:「たはーっ!ここまでが限界だったー!」
 マリア:「じゃ、勇太のことは諦めろよ?」
 威吹:「魔女にモテても、何もいいことは無いよ、ユタ?」
 稲生:「マリアさんと一緒になれれば、それでいいよ」
 アナスタシア:「さあ!これであなた達は最後ね!」
 藤谷:「稲生君、頑張れよ!俺は心の中で強く御祈念するぜ!」
 威吹:(こいつが祈ったら、余計負けそうな気がするが……)

 いよいよ、大将たる稲生が前に出る。

 アナスタシア:「さあ!負けても恨み節は無しよ!始めて!」

 稲生と弟子Cによるガチンコ勝負が始まった!
 果たして、稲生チームは勝利できるのか!?
 次回へ続く!
コメント (2)
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