[12月31日22:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
(※改めて説明しますが、斜字の台詞は本来英語で喋っているものを和訳したものです)
出前持ち:「毎度どうも!」
稲生:「はいはい!」
予約注文していた年越しソバが届いた。
宗一郎:「4人分あるかい?」
稲生:「あるある!」
稲生がソバを運び、母親の佳子が代金を払った。
マリア:「ソレハ何デスカ?」
稲生:「年越しソバですよ。ま、大晦日の日本ならではの風習だと思ってください」
マリア:「Toshikoshi-soba?」
稲生:「といっても、中身はただのかけソバですけどね。“戦う社長の物語”じゃ、海老天ソバなのに……」
宗一郎:「バカ言うな。向こうは自宅で手作りだろうが。こっちは出前なんだ。出前のソバはかけソバと決まってるんだよ」
といっても具材が全く入っていないわけではない。
ちゃんと紅白のカマボコに、ほうれん草、ネギが入っている。
佳子:「さぁさ、伸びないうちに頂きましょう」
マリア:「頂キマス」
年越しソバを啜る稲生家とマリア。
宗一郎:「紅白はどの辺まで行った?」
稲生:「とっくに後半に入ってるよ」
宗一郎:「そうなのか。初詣はどうする?父さん達、氷川神社に行くが……」
稲生:「僕は正証寺にするよ」
マリア:「私モ勇太君ニ付キ合イマス」
宗一郎:「分かったよ」
[同日23:45.天候:晴 稲生家]
〔「ほぉたぁ〜るのぉ光〜♪窓の雪ぃ〜♪……」〕
NHKでは“蛍の光”が流れる頃、稲生は大きな欠伸をした。
つられてマリアもする。
稲生:「開けてぞ今朝は、別れ行く……か」
佳子:「そろそろお風呂入って寝なさい」
稲生:「ふぁい……」
尚、NHKでは1番しか歌わないが、実際は4番まである。
3番と4番は共産党員やその支持者、並びに日教組関係者が眉をひそめる内容となっている。
稲生が1階の風呂に入り、マリアが2階のシャワー室に入っている間、年が明けた。
しかしそこから出るタイミングが違った為、2人は年明けの挨拶を交わすことなく、部屋に戻ったのである。
[1月1日07:00.天候:晴 稲生家]
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
朝の勤行を終えた稲生。
作者より自行はしっかりできている男である。
稲生:「明けまして、おめでとうございます」
宗一郎:「おめでとう」
佳子:「おめでとう」
マリア:「明ケマシテ、オメデトウゴザイマス」
宗一郎:「おめでとうございます。マリアさん、段々と日本語がお上手になってきましたね」
マリア:「ソンナ……」
佳子:「それじゃ、早く朝ご飯食べて初詣に行きましょう」
朝食はお節料理とお雑煮。
マリア:「Ozoni-Soupデスカ?」
稲生:「そうです」
マリア:「お餅が入っていないみたいだけど、私の勘違い?」
稲生:「ああ、それはうちが特殊なんです。曾祖父がお雑煮に入った餅を喉に詰まらせて死んだので、それ以来、稲生家の家訓に『雑煮に餅を入れるべからず』となったんです」
マリア:「それはまたシュールな死因ねぇ……」
稲生:「本当はお餅自体を禁止にする動きがあったんですが、さすがに別の親戚からの猛反対でそれは見送られました」
マリア:「う、うん。それでいいと思うね。禁止反対派はどんな人達?」
稲生:「お米屋さんです」
マリア:「商売柄、禁止されると困るわけか。納得」
佳子:「食べ終わったら、マリアちゃんは着物の着付けをしましょうか」
マリア:「ハイ、オ願イシマス」
[同日08:51.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の電車は、8時51分発、りんかい線直通、各駅停車、新木場行きです。次は、与野本町に止まります〕
稲生:「どうですか?着物に草履で……」
マリア:「慣れてないから歩きにくいな。威吹のヤツ、これで飛んだり走ったりしてるんだから凄いものだ」
因みに今は自動通訳魔法具を使用している為、マリアは英語を話し、稲生は日本語を話している。
稲生:「ま、威吹にとっては着物に草履が普段着ですから」
〔まもなく1番線に、りんかい線直通、各駅停車、新木場行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。次は与野本町に止まります〕
電車が入線してくる。
JR車両のE233系である。
埼京線のラインカラーである緑色の帯をまとっている。
JR東日本のコーポレートカラーに似ているが、若干違う。
〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます〕
ドアが開いて、2人は先頭の10号車に乗り込んだ。
そしてラインカラーと同じ色をした座席に腰掛けた。
〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
ドアが閉まって電車が走り出す。
車内にはマリアと同じく、着物姿の女性の姿が散見された。
やはり初詣に向かったか、これから向かうかのいずれからしい。
〔次は与野本町、与野本町。お出口は、右側です〕
〔The next station is Yonohonmachi.The doors on the right side will open.〕
次駅の与野本町駅は快速停車駅であるが、その利用者数は北与野駅以外の快速通過駅よりも少ないという。
これはさいたま市中央区の中心駅としての立場から快速停車駅になったと思われ、実際に中央区役所の最寄り駅にはなっているのだが、はっきり言ってそれだけなのである。
その為、「区役所が休みの土休日は与野本町駅を通過させて、代わりにさいたまスーパーアリーナのイベント客の為に北与野駅に停車させたら?」だとか、「そもそも与野本町駅から、利用客の多い南与野駅に快速停車駅を変えれば良い」という意見が与野本町駅利用者以外の中央区民にあるという。
マリア:「ユウタはスーツなんだな?」
稲生:「ま、僕はこれでいいです」
そのうち杉並三駅問題のようになりそうな気がするのだが、そこまで盛り上がっていない。
中央線みたいに緩急複々線ではないからだろうか。
マリア:「私は入れないけど、どうしようか?」
稲生:「そうですねぇ……。今日は本堂も客殿も元旦勤行で使いますから、休憩所で待っていてもらえればいいんじゃないでしょうか」
マリア:「なるほど。分かった」
マリアは人間時代クリスチャンであったが、移民だった為に受けた迫害に対抗する為、悪魔と契約したこと、クリスチャンとしては禁止されている自殺を図ったことから、今は棄教している。
屋敷の自室には、粉々に壊れたロザリオが保管されている。
稲生:「キリストはあなたを助けてはくれなかったようですが、仏様は違います。僕が祈ってあげますよ」
マリア:「それはありがたい」
もちろん、マリアの社交辞令である。
魔道師が頼れるのは己の魔力と、それを供給する悪魔のみ。
(※改めて説明しますが、斜字の台詞は本来英語で喋っているものを和訳したものです)
出前持ち:「毎度どうも!」
稲生:「はいはい!」
予約注文していた年越しソバが届いた。
宗一郎:「4人分あるかい?」
稲生:「あるある!」
稲生がソバを運び、母親の佳子が代金を払った。
マリア:「ソレハ何デスカ?」
稲生:「年越しソバですよ。ま、大晦日の日本ならではの風習だと思ってください」
マリア:「Toshikoshi-soba?」
稲生:「といっても、中身はただのかけソバですけどね。“戦う社長の物語”じゃ、海老天ソバなのに……」
宗一郎:「バカ言うな。向こうは自宅で手作りだろうが。こっちは出前なんだ。出前のソバはかけソバと決まってるんだよ」
といっても具材が全く入っていないわけではない。
ちゃんと紅白のカマボコに、ほうれん草、ネギが入っている。
佳子:「さぁさ、伸びないうちに頂きましょう」
マリア:「頂キマス」
年越しソバを啜る稲生家とマリア。
宗一郎:「紅白はどの辺まで行った?」
稲生:「とっくに後半に入ってるよ」
宗一郎:「そうなのか。初詣はどうする?父さん達、氷川神社に行くが……」
稲生:「僕は正証寺にするよ」
マリア:「私モ勇太君ニ付キ合イマス」
宗一郎:「分かったよ」
[同日23:45.天候:晴 稲生家]
〔「ほぉたぁ〜るのぉ光〜♪窓の雪ぃ〜♪……」〕
NHKでは“蛍の光”が流れる頃、稲生は大きな欠伸をした。
つられてマリアもする。
稲生:「開けてぞ今朝は、別れ行く……か」
佳子:「そろそろお風呂入って寝なさい」
稲生:「ふぁい……」
尚、NHKでは1番しか歌わないが、実際は4番まである。
3番と4番は共産党員やその支持者、並びに日教組関係者が眉をひそめる内容となっている。
稲生が1階の風呂に入り、マリアが2階のシャワー室に入っている間、年が明けた。
しかしそこから出るタイミングが違った為、2人は年明けの挨拶を交わすことなく、部屋に戻ったのである。
[1月1日07:00.天候:晴 稲生家]
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
朝の勤行を終えた稲生。
作者より自行はしっかりできている男である。
稲生:「明けまして、おめでとうございます」
宗一郎:「おめでとう」
佳子:「おめでとう」
マリア:「明ケマシテ、オメデトウゴザイマス」
宗一郎:「おめでとうございます。マリアさん、段々と日本語がお上手になってきましたね」
マリア:「ソンナ……」
佳子:「それじゃ、早く朝ご飯食べて初詣に行きましょう」
朝食はお節料理とお雑煮。
マリア:「Ozoni-Soupデスカ?」
稲生:「そうです」
マリア:「お餅が入っていないみたいだけど、私の勘違い?」
稲生:「ああ、それはうちが特殊なんです。曾祖父がお雑煮に入った餅を喉に詰まらせて死んだので、それ以来、稲生家の家訓に『雑煮に餅を入れるべからず』となったんです」
マリア:「それはまたシュールな死因ねぇ……」
稲生:「本当はお餅自体を禁止にする動きがあったんですが、さすがに別の親戚からの猛反対でそれは見送られました」
マリア:「う、うん。それでいいと思うね。禁止反対派はどんな人達?」
稲生:「お米屋さんです」
マリア:「商売柄、禁止されると困るわけか。納得」
佳子:「食べ終わったら、マリアちゃんは着物の着付けをしましょうか」
マリア:「ハイ、オ願イシマス」
[同日08:51.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の電車は、8時51分発、りんかい線直通、各駅停車、新木場行きです。次は、与野本町に止まります〕
稲生:「どうですか?着物に草履で……」
マリア:「慣れてないから歩きにくいな。威吹のヤツ、これで飛んだり走ったりしてるんだから凄いものだ」
因みに今は自動通訳魔法具を使用している為、マリアは英語を話し、稲生は日本語を話している。
稲生:「ま、威吹にとっては着物に草履が普段着ですから」
〔まもなく1番線に、りんかい線直通、各駅停車、新木場行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。次は与野本町に止まります〕
電車が入線してくる。
JR車両のE233系である。
埼京線のラインカラーである緑色の帯をまとっている。
JR東日本のコーポレートカラーに似ているが、若干違う。
〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます〕
ドアが開いて、2人は先頭の10号車に乗り込んだ。
そしてラインカラーと同じ色をした座席に腰掛けた。
〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
ドアが閉まって電車が走り出す。
車内にはマリアと同じく、着物姿の女性の姿が散見された。
やはり初詣に向かったか、これから向かうかのいずれからしい。
〔次は与野本町、与野本町。お出口は、右側です〕
〔The next station is Yonohonmachi.The doors on the right side will open.〕
次駅の与野本町駅は快速停車駅であるが、その利用者数は北与野駅以外の快速通過駅よりも少ないという。
これはさいたま市中央区の中心駅としての立場から快速停車駅になったと思われ、実際に中央区役所の最寄り駅にはなっているのだが、はっきり言ってそれだけなのである。
その為、「区役所が休みの土休日は与野本町駅を通過させて、代わりにさいたまスーパーアリーナのイベント客の為に北与野駅に停車させたら?」だとか、「そもそも与野本町駅から、利用客の多い南与野駅に快速停車駅を変えれば良い」という意見が与野本町駅利用者以外の中央区民にあるという。
マリア:「ユウタはスーツなんだな?」
稲生:「ま、僕はこれでいいです」
そのうち杉並三駅問題のようになりそうな気がするのだが、そこまで盛り上がっていない。
中央線みたいに緩急複々線ではないからだろうか。
マリア:「私は入れないけど、どうしようか?」
稲生:「そうですねぇ……。今日は本堂も客殿も元旦勤行で使いますから、休憩所で待っていてもらえればいいんじゃないでしょうか」
マリア:「なるほど。分かった」
マリアは人間時代クリスチャンであったが、移民だった為に受けた迫害に対抗する為、悪魔と契約したこと、クリスチャンとしては禁止されている自殺を図ったことから、今は棄教している。
屋敷の自室には、粉々に壊れたロザリオが保管されている。
稲生:「キリストはあなたを助けてはくれなかったようですが、仏様は違います。僕が祈ってあげますよ」
マリア:「それはありがたい」
もちろん、マリアの社交辞令である。
魔道師が頼れるのは己の魔力と、それを供給する悪魔のみ。