[12月29日12:30.天候:晴 東京都台東区上野 ヨドバシカメラマルチメディア上野]
稲生がSDカードを買って戻ると、そこにマリアはいなかった。
代わりにいたのが、ミク人形。
稲生:「マリアさんは?」
ミク人形:「こっちこっち」
ミク人形がエスカレーターを上がって行く。
稲生がそれについて行くと、着いたのは6階。
そして……。
店員A:「寒い冬は温か紅茶で目覚めの一杯!イギリス大使館御用達です!只今歳末セールにつき、3割引きで御提供させて頂いております!尚、大使館御用達の記念に、イギリス人のお客様には更に特別価格!半額での御提供です!」
稲生:「ま、まさか、マリアさん、これを!?」
ミク人形はコクコクと頷く。
ミク人形:「あれあれ!」
ミク人形が指さした先にはマリアがいた。
もう既に買い付けを済ませたか?
店員B:「イギリス人のお客様ですか?パスポートなど、拝見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
稲生:「えっ、マリアさん?パスポート持ってたっけ?……あ、いや」
稲生は思い出した。
大師匠ダンテを迎えに行った際、成田空港の敷地内に入る際に受けたセキュリティチェックで、パスポートを確認されていたことを。
稲生:(マリアさん、人間としては死んだことになっているはずだから、パスポート取れないと思ってたんだけど……)
だが見ると、マリアはちゃんとパスポートを出している。
成田空港で出したものを同じだ。
店員B:「ありがとうございます。確かに、イギリス人のお客様ですね。それでは半額で御提供させて頂きます。お支払いは……」
稲生:「マリアさん、買うんですか!?」
マリア:「師匠のお茶汲みの手間が省ける」
魔道師の世界も上下関係は厳しい。
その中で1番緩いとされているイリーナ組であっても、師匠へのお茶汲みは全てマリア本人が行わなくてはならない。
人形を使役してお茶を淹れさせることは御法度である。
それでもマリアは無精して人形にお茶は淹れさせ、その後で自分が持って行くという手法を取っているが。
マリア:「支払いはカードで」
マリアはアメリカンエキスプレスのグリーンカードを取り出した。
店員B:「はい、ありがとうございます」
稲生:「いつの間に契約を?」
マリア:「師匠の紹介で入った。但し、もちろん私の稼ぎからだ」
稲生:「マリアさんの稼ぎって?……あっ」
マリアの趣味は人形作りである。
もちろん自分の使役する人形を作ることもあるが、他はそれを販売している。
稼ぎはそれだけでは無く、魔界に行って小冒険をすることもある。
多くは魔法使いを仲間にしたい戦士に同行し、ダンジョンからお宝を頂く冒険だ。
マリア:「アルカディアシティのお尋ね者の賞金首を捕まえて、賞金ももらったしな」
稲生:「たまにマリアさん、いないと思ったら、そういうことをしていたんですか」
マリア:「そういうこと。……あ、大きくて持って帰れないので、発送してもらっていいですか?」
店員B:「かしこまりました。それではあちらのカウンターで、伝票にご記入を……」
マリア:「ええ」
稲生:「戦士と組んで冒険か。思い出すなぁ……」
稲生は魔界に行ったマリアを追って行ったことがある。
そこでは行方不明となった重戦士の夫を捜す旅に出ていた女剣士のサーシャと出会い、一緒にアルカディアシティまで旅をしたことがある。
稲生:「サーシャ、元気かな?」
マリア:「ああ、元気だった。もう既にお子さんいる」
稲生:「そうですか……って、ええっ!?」
マリア:「今度は生活費を稼ぐ為に、ドラゴンから財宝を奪いに行く冒険に付き合ってくれだってさ」
稲生:「ドラゴンから!?いや、それ絶対、死亡フラグですよ!」
マリア:「確かそのドラゴンの名前、ファフニールとか言ったかな」
稲生:「ファフニール!?思いっ切り物語後半辺りに出てきそうな大ボスクラスじゃないですか!」
店員B:(新しいオンラインRPGの話でもしてるのかしら?)
2人は買い物を終えると、店舗の外に出た。
[同日13:00.天候:晴 JR上野駅構内→ディラ上野・ブラボー上野中央口店]
稲生:「上野駅始発の中電を狙いたいところですが、その前にお昼にしましょう」
マリア:「そうだな。お腹空いた」
稲生:「意外とこういう所では、エキナカの方が美味い物が食べられるんですよ」
マリア:「じゃあ、ユウタに任す」
稲生:「はい」
稲生はあえて改札の中に入った。
稲生:「そこなんてどうでしょう?」
マリア:「パスタか。いいの?日本食じゃなくて」
稲生:「いや、どうせ家に帰れば嫌と言うほど食べる機会がありますから」
2人は店内に入った。
テーブル席に向かい合って座る。
稲生:「いやー、寒かったー」
マリア:「東京の冬も冷えるね」
稲生:「いや、全くですよ。パスタランチやってますよ。僕、ミートソースにしよう」
マリア:「えーと、私は……」
料理を注文する。
稲生:「それにしても、マリアさんが紅茶サーバーを買うなんてビックリしました」
マリア:「まあ、確かにキャッチコピーに惹かれたというのはあるけど……。師匠はお茶なら何でも飲むんだ。別に、人形がわざわざ専用のティーポットまで使って淹れる必要は無い。それに、あの店での謳い文句は、『専用のティーポットで淹れる美味しさをそのままに』だ。だから大丈夫だよ」
稲生:「そんなもんですかねぇ……」
稲生には何故か、所化僧が修行を楽して本堂をルンバで掃除しているシーンを想像した。
いや、本堂がきれいになるという意味では間違っていない。
間違ってはいないが、修行としてはどうか。
稲生:「マリアさんは、もう少し先生に対して敬意を払った方が……」
マリア:「何を言ってるの。これでも私は、十分敬意を払ってるよ」
稲生:「はあ……。あ、そうそう。今朝、マリアさんが言ってた『お楽しみ』って?」
マリア:「私とユウタは部屋が別々だった。本来なら師匠と大師匠様も、そうであるべきだったんだ。だけど、違った。別に、見ての通り、大師匠様は介護を必要とされる状態じゃないし、師匠とは血の繋がった親子というわけでもない。なのに一晩、一緒に同じ部屋に泊まったんだ」
稲生:「先生達が幸せなら、それでいいじゃないですか」
マリア:「本来なら、ユウタの言う通り。だけど、あの2人はただ単に夜を男女として過ごしたわけじゃないんだ」
稲生:「どういうことですか?」
マリア:「話せば長くなる。簡単に言えば、大師匠様から『愛』を頂いたことで、師匠の肉体の耐用年数が少し延びたということだな」
稲生:「つまり、魔法?」
マリア:「そうとも言える。ただ、見た目はどう見てもただのセックスだよ」
稲生:「はあ……。でもまあ、ガーターベルト付きのセクシーな下着をわざわざ用意されるなんて、先生もなかなかの入れ込みだったんですね」
マリア:「全く。いい歳して、気持ち悪いったら……」
その後、運ばれて来たパスタに2人は舌鼓を打った。
稲生がSDカードを買って戻ると、そこにマリアはいなかった。
代わりにいたのが、ミク人形。
稲生:「マリアさんは?」
ミク人形:「こっちこっち」
ミク人形がエスカレーターを上がって行く。
稲生がそれについて行くと、着いたのは6階。
そして……。
店員A:「寒い冬は温か紅茶で目覚めの一杯!イギリス大使館御用達です!只今歳末セールにつき、3割引きで御提供させて頂いております!尚、大使館御用達の記念に、イギリス人のお客様には更に特別価格!半額での御提供です!」
稲生:「ま、まさか、マリアさん、これを!?」
ミク人形はコクコクと頷く。
ミク人形:「あれあれ!」
ミク人形が指さした先にはマリアがいた。
もう既に買い付けを済ませたか?
店員B:「イギリス人のお客様ですか?パスポートなど、拝見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
稲生:「えっ、マリアさん?パスポート持ってたっけ?……あ、いや」
稲生は思い出した。
大師匠ダンテを迎えに行った際、成田空港の敷地内に入る際に受けたセキュリティチェックで、パスポートを確認されていたことを。
稲生:(マリアさん、人間としては死んだことになっているはずだから、パスポート取れないと思ってたんだけど……)
だが見ると、マリアはちゃんとパスポートを出している。
成田空港で出したものを同じだ。
店員B:「ありがとうございます。確かに、イギリス人のお客様ですね。それでは半額で御提供させて頂きます。お支払いは……」
稲生:「マリアさん、買うんですか!?」
マリア:「師匠のお茶汲みの手間が省ける」
魔道師の世界も上下関係は厳しい。
その中で1番緩いとされているイリーナ組であっても、師匠へのお茶汲みは全てマリア本人が行わなくてはならない。
人形を使役してお茶を淹れさせることは御法度である。
それでもマリアは無精して人形にお茶は淹れさせ、その後で自分が持って行くという手法を取っているが。
マリア:「支払いはカードで」
マリアはアメリカンエキスプレスのグリーンカードを取り出した。
店員B:「はい、ありがとうございます」
稲生:「いつの間に契約を?」
マリア:「師匠の紹介で入った。但し、もちろん私の稼ぎからだ」
稲生:「マリアさんの稼ぎって?……あっ」
マリアの趣味は人形作りである。
もちろん自分の使役する人形を作ることもあるが、他はそれを販売している。
稼ぎはそれだけでは無く、魔界に行って小冒険をすることもある。
多くは魔法使いを仲間にしたい戦士に同行し、ダンジョンからお宝を頂く冒険だ。
マリア:「アルカディアシティのお尋ね者の賞金首を捕まえて、賞金ももらったしな」
稲生:「たまにマリアさん、いないと思ったら、そういうことをしていたんですか」
マリア:「そういうこと。……あ、大きくて持って帰れないので、発送してもらっていいですか?」
店員B:「かしこまりました。それではあちらのカウンターで、伝票にご記入を……」
マリア:「ええ」
稲生:「戦士と組んで冒険か。思い出すなぁ……」
稲生は魔界に行ったマリアを追って行ったことがある。
そこでは行方不明となった重戦士の夫を捜す旅に出ていた女剣士のサーシャと出会い、一緒にアルカディアシティまで旅をしたことがある。
稲生:「サーシャ、元気かな?」
マリア:「ああ、元気だった。もう既にお子さんいる」
稲生:「そうですか……って、ええっ!?」
マリア:「今度は生活費を稼ぐ為に、ドラゴンから財宝を奪いに行く冒険に付き合ってくれだってさ」
稲生:「ドラゴンから!?いや、それ絶対、死亡フラグですよ!」
マリア:「確かそのドラゴンの名前、ファフニールとか言ったかな」
稲生:「ファフニール!?思いっ切り物語後半辺りに出てきそうな大ボスクラスじゃないですか!」
店員B:(新しいオンラインRPGの話でもしてるのかしら?)
2人は買い物を終えると、店舗の外に出た。
[同日13:00.天候:晴 JR上野駅構内→ディラ上野・ブラボー上野中央口店]
稲生:「上野駅始発の中電を狙いたいところですが、その前にお昼にしましょう」
マリア:「そうだな。お腹空いた」
稲生:「意外とこういう所では、エキナカの方が美味い物が食べられるんですよ」
マリア:「じゃあ、ユウタに任す」
稲生:「はい」
稲生はあえて改札の中に入った。
稲生:「そこなんてどうでしょう?」
マリア:「パスタか。いいの?日本食じゃなくて」
稲生:「いや、どうせ家に帰れば嫌と言うほど食べる機会がありますから」
2人は店内に入った。
テーブル席に向かい合って座る。
稲生:「いやー、寒かったー」
マリア:「東京の冬も冷えるね」
稲生:「いや、全くですよ。パスタランチやってますよ。僕、ミートソースにしよう」
マリア:「えーと、私は……」
料理を注文する。
稲生:「それにしても、マリアさんが紅茶サーバーを買うなんてビックリしました」
マリア:「まあ、確かにキャッチコピーに惹かれたというのはあるけど……。師匠はお茶なら何でも飲むんだ。別に、人形がわざわざ専用のティーポットまで使って淹れる必要は無い。それに、あの店での謳い文句は、『専用のティーポットで淹れる美味しさをそのままに』だ。だから大丈夫だよ」
稲生:「そんなもんですかねぇ……」
稲生には何故か、所化僧が修行を楽して本堂をルンバで掃除しているシーンを想像した。
いや、本堂がきれいになるという意味では間違っていない。
間違ってはいないが、修行としてはどうか。
稲生:「マリアさんは、もう少し先生に対して敬意を払った方が……」
マリア:「何を言ってるの。これでも私は、十分敬意を払ってるよ」
稲生:「はあ……。あ、そうそう。今朝、マリアさんが言ってた『お楽しみ』って?」
マリア:「私とユウタは部屋が別々だった。本来なら師匠と大師匠様も、そうであるべきだったんだ。だけど、違った。別に、見ての通り、大師匠様は介護を必要とされる状態じゃないし、師匠とは血の繋がった親子というわけでもない。なのに一晩、一緒に同じ部屋に泊まったんだ」
稲生:「先生達が幸せなら、それでいいじゃないですか」
マリア:「本来なら、ユウタの言う通り。だけど、あの2人はただ単に夜を男女として過ごしたわけじゃないんだ」
稲生:「どういうことですか?」
マリア:「話せば長くなる。簡単に言えば、大師匠様から『愛』を頂いたことで、師匠の肉体の耐用年数が少し延びたということだな」
稲生:「つまり、魔法?」
マリア:「そうとも言える。ただ、見た目はどう見てもただのセックスだよ」
稲生:「はあ……。でもまあ、ガーターベルト付きのセクシーな下着をわざわざ用意されるなんて、先生もなかなかの入れ込みだったんですね」
マリア:「全く。いい歳して、気持ち悪いったら……」
その後、運ばれて来たパスタに2人は舌鼓を打った。