報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「大魔道師達と弟子達の朝」

2018-01-30 19:49:33 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月3日07:30.天候:晴 東京都大田区羽田空港 東急エクセルホテル羽田]

 稲生:「うーん……」

 稲生は朝起きて身支度を整えていた。

 稲生:(丑寅勤行をした後また寝ちゃったけど、別にいいんだよね?登山中じゃ、そうしてるし……)

 大石寺における丑寅勤行は僧侶にとっての朝勤行であることから、正にこの時から1日の仏道修行が始まるのだろうが、俗世間における信徒にとってはそういうわけではないことから、二度寝は別に謗法ではないのだろう。
 そもそも、顕正会員をしてそれがあることを知る者がいるかどうかだ。
 作者は大石寺の信徒になるまで、それを知らなかった。
 顕正会員時代には、妙信講からの会員も結構いたにも関わらずだ。

 稲生:「さーて、マリアさん起こしてこよう」

 稲生は室内の電話機を取った。

 稲生:「んんっ?」

 だが、何故か話し中になっていた。

 稲生:「どういうこっちゃ?」

 もう1度掛けてみると、今度は繋がった。
 で、すぐにマリアが出る。

 マリア:「Hello.」
 稲生:「マリアさん、おはようございます」
 マリア:「ああ、ユウタか。この通り、もう起きてるよ。師匠の部屋に電話したら、朝食はルームサービスだってさ」
 稲生:「さすがは先生方ですね」
 マリア:「ああ。弟子達との食事は、昨夜で十分らしい」
 稲生:「しょうがないですよ。僕達は僕達で、食べに行きましょうか。昨夜のレストランみたいですから」
 マリア:「うん、行こう」

 稲生とマリアは部屋の外で待ち合わせて、それからレストランに向かった。

 稲生:「よく眠れましたか?」
 マリア:「おかげさまでね。ありがとう」

 マリアの見せる笑顔にドキッとした稲生だった。
 エレベーターでレストランのある2階へと下りる。

 稲生:「あの……鈴木君は顕正会から来た者で、その……顕正会で色々あったみたいで、そのせいで精神的に参った所があったようで……」
 マリア:「ユウタの言いたいことは、あの変態野郎のせいでユウタの宗派のイメージを落とさないでくれ、だろ?」
 稲生:「はあ……」
 マリア:「別に私はイメージダウンはさせてないよ」
 稲生:「マリアさん……」
 マリア:「ユウタがいる所だし、藤谷さんみたいな面白い人もいる。魔女狩り教団から守ってくれたのも、ユウタの宗派だったから」
 稲生:「うちには『邪教撲滅!世を正せ!』みたいな人がいるのも事実ですから……」

 稲生は苦笑した。
 別に魔道師を助けたくて行動したわけではなく、その魔道師達を火あぶりにせんとした邪教破折を目的としたものだったからだ。
 目的と手段を口では正しく言っていても、行動に際しては首を傾げる者も存在する。

 稲生:「このレストランですね」

 同じレストランであるが、ディナータイムの時とは雰囲気が変わっている。
 このホテルの朝食会場もまた御多聞に漏れず、バイキング形式であった。

 稲生:「僕は和食中心にしようかな……」
 マリア:「その方がいい。今夜のディナーから、また私や師匠の好みに合わせた食事になる」
 稲生:「はい」

 といっても、全て和食にしたわけではない。
 調理師が目の前で作るオムレツやベーコン、ソーセージなんかもおかずとして取っていた。

 マリア:「出発は、何時だって?」
 稲生:「10時ちょうど。このホテルのチェックアウトの時間ですよ。大師匠様の飛行機が、その時間帯でも十分に間に合う便なので」
 マリア:「そうか」
 稲生:「僕達は大師匠様のお見送りの後、羽田空港発の高速バスで帰るわけです」
 マリア:「師匠は不精だから、あまり歩きたがらないんだ」
 稲生:「ですよね」
 マリア:「屋敷の階段、エスカレーターにしようかなんて言ってる」
 稲生:「既に地下室から3階まで、エレベーター1基仕掛けたのにねぇ……」

 屋敷の主人はマリアということになっているが、実はそれは表向きで、実際のオーナーはイリーナだったりする。
 マリアは住み込みの管理人といった感じ。

[同日同時刻 同ホテル7F客室]

 稲生とマリアがシングルルームにそれぞれ泊まったのに対し、イリーナとダンテはスイートルームに宿泊していた。
 確かに他の部屋と比べて間取りは広く、ベッドもダブルベッド並みの大きさのものが2つ用意されている。
 ソファなどの応接セットもあるのだが、観光地のホテルにあるような『貴賓室』的なギンギラギンな感じではなく、落ち着いた内装になっている。

 ダンテ:「おーい、イリーナ。朝食が来たよ。早く食べようじゃないか」
 イリーナ:「待ってください、先生」

 イリーナがバスルームから出て来た時、ワインレッドのセクシーランジェリー姿だった。
 すぐにその上から、いつもの紫色のワンピースを着る。

 ダンテ:「昨夜、孫弟子達に危険が迫っていたような予知があったが、大丈夫だったみたいだね?」
 イリーナ:「ええ。あのコ達は、よくやってくれますわ」
 ダンテ:「私達の魔法をどこまで公表するべきか、時代によって熟慮しないといけないから大変だね」
 イリーナ:「少なくとも『協力者』には公表すべきかと考えております。でないと、信じてもらえませんもの」
 ダンテ:「それは私も同意見だ。自称『まもなく中堅ゼネコン入り確定の赤ランプ点灯』の土建会社の倅も、その1人とカウントしているわけかい?」
 イリーナ:「そのつもりです。私もお世話になったことですしね」
 ダンテ:「ふむ。まあ、キミがそう思うのなら良かろう。それで……今後、来たるべくキミの弟子に強制的に訪れる試練とやらの対策はどうなっているのかね?」
 イリーナ:「生贄が必要だと判明しています。そしてその有力候補を挙げているのですが、今回の旅行でそれをほぼ確定させました。あとはその生贄を有効に活用する為のプランを今現在立てている最中です」
 ダンテ:「なるほど。この辺に関しては、少し私としては不安だな」
 イリーナ:「先生?」
 ダンテ:「有効なプランを立てる。あいにくとだが、私の直弟子達の中において、キミが1番その成績が悪い」
 イリーナ:「っ……!それは……!もう、昔の私とは違います。ですから……」
 ダンテ:「ただ単に、私のテストを受けなかっただけだと思うが?……まあいい。そこまで言うのなら、やってみなさい。但し、最良の結果は求めない」
 イリーナ:「先生?」
 ダンテ:「但し、最悪の結果は絶対にもたらさないように。あいにくとだが、プラン立てについて常に落第だった弟子を師匠として信用するわけにはいかん。とはいえ、その自主性を潰すには惜しい。分かるかね?もしこれがアナスタシア辺りだったら、私はハードルを最高にまで引き上げていただろう。しかしキミの場合は、ハードルを下げる。いいかね?下げた以上、そのハードルを倒してはならない。不服なら、キミの案は却下する」
 イリーナ:「……分かりました。私なりの微力を尽くします」
 ダンテ:「いいだろう。キミの弟子達の信頼を損ねる。これが最悪の結果だ。これさえ無ければ、キミに赤点を付けることはしない」

 よほど師匠に信用されていないことをイリーナはやろうとしている。
 ポジティブに考えれば、他の大魔道師仲間並みの結果を出せば、師匠であるダンテを見返してやれるということにはなるが……。
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“大魔道師の弟子” 「ケンショーを受誡させんとする者、首に縄を付ける覚悟で!」

2018-01-30 10:24:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月3日22:00.天候:晴 東京都大田区羽田空港 羽田空港第2ターミナル交番]

 藤谷:「こンの、クソボケがぁっ!!」

 ガッ!(藤谷、鈴木を殴り付ける)

 鈴木:「!!!」

 鈴木、眼鏡が吹っ飛び、床に崩れ落ちる。

 巡査A:「ちょっと、あなた!乱暴ですよ!」
 巡査部長:「どこの組の者だね!?」
 藤谷:「まもなく中堅ゼネコン入り確定の赤ランプ点灯、(株)藤谷組の専務取締役、藤谷春人とは俺のことだ!……よろしくお願いします!!」

 藤谷、金ピカの社章が入った名刺を差し出す。

 警部補:「そういう優良企業のお偉いさんが、そんな乱暴なことしちゃイカンよ。とにかく、身元引受人が到着したことだし、キミも2度とあんなことしちゃイカンよ?分かったか?」
 鈴木:「…………」
 藤谷:「へい。そりゃもう、今度から首に縄でも鈴でもリモコン爆弾でも何でも着けておきますんで、どうか1つ……」
 巡査部長:「ちょっと待て。今サラッとテロっぽいこと言ってなかったか?」
 藤谷:「ほら、鈴木!お前も何か言え!」
 鈴木:「創価の手先に何されようが、俺は屈しない」
 警部補:「な、なに!?」
 藤谷:「おい!なにケンショーみてーなこと言ってんだ!?……あ、そうか。元顕だったな、お前……」
 巡査部長:「大丈夫なのかい?」
 藤谷:「え、ええ。ちょっと病気な所がありまして。とにかく、あとはアッシにお任せくだせぇ。ではどうも、お世話様でした」

 藤谷は鈴木の身元引受人になっていた。
 急いで正証寺から車を走らせ、鈴木を迎えに来たのである。

 藤谷:「車は駐車場に止めてある。こっからアクセス可能だから」
 鈴木:「…………」

 鈴木は駐車場に行くまでの間、ホテルの方を何度も見据えた。

 藤谷:「どうした?何度も言ってんだろう?稲生君達は、とっくに長野に帰ったってな」
 鈴木:「何で俺だけがこんな目に……!」
 藤谷:「あ?」
 鈴木:「宗門に来れば幸せになれるんじゃなかったのかよっ、あぁっ!?」
 藤谷:「オメー、何か勘違いしてるんじゃねーのか?ここでの幸せの成り方は、基本的にケンショーと同じだぜ?」
 鈴木:「……!」
 藤谷:「とある宿坊の講頭さんが仰ってたんだが、顕正会は教義や御本尊が間違っているというだけで、それ以外は正しいらしいんだ。その言葉も宿坊の御住職様のものだぜ?ま、一部の武闘派は顕正会そのものを全否定したりするから、多少の誤解が出るんだがな」
 藤谷:「つまり、だ。鈴木君のケンショーでのやり方、実は宗門でも通用するっとことだ。ケンショーでは仏法を始めてすぐに幸せになれると言ってたか?」
 鈴木:「1週間やってみて何もいいことが無かったら辞めていいということだった」
 藤谷:「いや、だから、そこが間違ってるんだって。こっちの武闘派もだいぶ勘違い野郎がいるが、『自分の行いが正しいと思ったら、どんどん突き進んでよい』というわけじゃないんだ。お前がもし今の状態が不幸だと思うのなら、それはやり方が間違っているという何よりも証拠さ」
 鈴木:「俺のどこが間違っていたと?俺はただ、魔法の存在が……」
 藤谷:「それだけか?」
 鈴木:「なに?」
 藤谷:「正証寺の御所化さんに聞いたんだが、マリアさんが魔法を使用したという決定的瞬間の時、随分とエロい顔してたそうじゃねーか。映像によれば、風で着物が捲れ上がって中のパンツが丸見えだったようだが……」
 鈴木:「そ、それは違います!」
 藤谷:「後でマリアさんに使用済みパンツの1枚でも請求するつもりだったんじゃねーのか?」
 鈴木:「んなわけないですよ!せいぜい、夢の中で乱暴しただけです!」
 藤谷:「……おい!」
 鈴木:「……あ」
 藤谷:「もしもマリアさんが魔法使いだとして、だ。お前が見た夢も、お見通しだと思うがな?……分かったら、もう2度と関わらんことだ。命がいくつあっても、足りなくなるぞ」

 鈴木はやっと蒼い顔になった。

 藤谷:「てやっ!!」

 藤谷はポケットからプラスのドライバーを取り出すと、後方に向かってサーカスの投げナイフのように投げた。

 ソッカー戦闘員C:「うわっ!」

 それは尾行していたソッカー戦闘員が持つカメラを直撃。
 カメラは宙に舞って車道に落ち……。

 ソッカー戦闘員D:「わあっ、待て!カメラ泥棒!!」

 下を走っていた長距離トラックのコンテナの上に乗っかった。

 鈴木:「班長、何かしたんですか?」
 藤谷:「……この世の中に、ヒーローは存在しない。悪の組織のザコくらいは、自分で対応するものなんだ」
 鈴木:「えっ?」

 怪人マチャミ姫:「このおバカ野郎ども!今すぐ九州へ行って取り戻して来ちゃミ〜!!」

 マチャミ姫、手に持った鞭を戦闘員達に振るう。

 戦闘員C:「きゅ、九州ですか!?」
 マチャミ姫:「今のトラック、北九州ナンバーだったミ〜!ダイ・サーク様にバレる前に、さっさと取り戻して来い!この能無しども!」
 戦闘員D:「は、ハハーッ!!」
 マチャミ姫:「おの〜れ!日顕宗のクソ共め〜!必ず仕返ししてやっちゃミ〜!」

[同日23:30.天候:晴 東急エクセルホテル羽田]

 マリアは部屋の電話を取っていた。

 稲生:「マリアさん、藤谷班長から連絡です。『鈴木は連れ戻した。あと、とある敵組織のスパイ達も対処した』と」

 電話の相手は隣の部屋にいる稲生。

 マリア:「了解。ありがとう」
 稲生:「大丈夫ですか?僕、そっちの部屋に行きましょうか?」
 マリア:「いや、大丈夫。多分、これでもうちゃんと寝られると思う」

 マリアは一眠りしたものの、鈴木に押し倒される夢を見て絶叫しながら起きた。
 防音がしっかりしているホテルだから、悪夢で起きても隣室にまでは聞こえないと思われるが、そこは稲生である。
 その後、藤谷から事後報告が来て、こうしてマリアに電話したのであった。

 マリア:「解決したのなら良かった。私、もう寝るね」
 稲生:「はい、おやすみなさい」
 マリア:「おやすみ」

 マリアは電話を切ると、消灯してベッドの中に入った。

 マリア:「大丈夫。もう平気」

 マリアの作ったフランス人形、ミクとハクが心配そうに覗き込んできた。
 今度こそ、マリアは朝まで寝ることができたのだった。
コメント (2)
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