[12月29日23:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家1F客間]
マリアはベッドに潜り込んだ。
シングルサイズのエアーベッドは、屋敷で使用しているセミダブルのそれと比べれば幅は狭い。
それでも、柔らかさは遜色無かった。
マリア:「御両親にも認めてもらい、あとは……どうすればいいかな?」
ミク人形:「…………」
ハク人形:「…………」
マリア:「まあいいや。そのうち、思いつくだろう」
『あとは体だけ!』だと思った紳士処君、少し落ち着こう。
マリア:「明日はユウタが映画観に連れて行ってくれるっていうし……。うーん……」
室内の暖房はオイルヒーターを使用している。
その為、室内の音といったら、借りている目覚まし時計の秒針の音くらいか。
人によってはそれが気になって眠れないという者もいるだろうが、マリアはそんなことは無いようだ。
ブゥン!ブゥン!(テーブルの上に置いた水晶球が光る)
マリア:「ううん……」
マリアは布団を頭から被った。
ハク人形:「……!」
ミク人形:「……!」
ミク人形とハク人形がマリアを揺さぶり起こす。
マリア:「何よぉ……。せっかく寝入り掛けたのに……」
水晶球が鈍く点滅しているのを認識する。
マリア:「なに?別に、師匠からの通信ってわけじゃないみたいだけど……」
マリアは水晶球に近づいた。
そこには何かが映っている。
マリア:「……?」
燃え盛る家の映像であった。
戸建てというよりは、何かの集合住宅か。
マリア:「何の映像、これ……?くだらない」
マリアは水晶球の映像を消した。
マリア:「寝よう寝よう」
マリアは大欠伸をして、ベッドの中に入った。
[12月30日02:35.天候:晴 稲生家2F稲生の部屋]
稲生:「妙〜法蓮華経〜方便品第二〜。爾時世尊従三昧安詳……ん?」
稲生が丑寅勤行を始めたばかりの頃、外が騒がしかった。
消防車のサイレンの音がやたら近くで聞こえてくる。
稲生:「何だ何だ?」
部屋のカーテンを開ける。
稲生:「わっ!?」
すると、道を挟んで向かいのマンションから火の手が上がっていた。
稲生:「わあっ!火事だーっ!」
稲生は急いで部屋を飛び出し、階段を駆け下りた。
が!
稲生:「わあっ!?」
足を踏み外して、階段から転げ落ちた。
マリア:「!!!」
それまでマリアは眠っていたのだが、消防車のサイレンの音ではなく、むしろ稲生が階段から転げ落ちる音で目が覚めた。
マリア:「何の音!?」
マリアはワンピース型の寝巻を着ていたのだが、その上からローブを羽織って客間の外に出た。
宗一郎:「何をやってるんだ、勇太?」
稲生:「いてててて……」
佳子:「いくらお向かいが火事だからって、そんなに慌てることないでしょう?」
稲生:「で、でも……!」
マリア:「Yuta.What happend?Are you ok?(ユウタ、どうしたの?大丈夫?)」
稲生:「向かいのマンションが火事なんです!こっちに飛び火する前に、逃げないと!」
稲生は英語でマリアに言った。
マリア:「What!?」
宗一郎:「しかし、もう消防車は到着してるんだろう?特にこっちに避難指示とか来てないし、大丈夫なんじゃないか?」
稲生:「僕、ちょっと様子を見て来る」
マリア:「ワ、私モ行ッテ来マス!」
稲生はコートだけ持って来たが、マリアはちゃんと魔法の杖まで持って来た。
そこが見習とマスターの違いか。
外に出ると、当然ながら大騒ぎだった。
消火活動の為、市道である与野中央通りが通行止めになるほどである。
しかも、近所の住民達が押し掛けて、てんやわんやであった。
もちろん、実際の消火活動に関しては、完全に規制線が張られているわけだが……。
稲生:「うあ!?鉄筋コンクリートのマンションなのに、よく燃えてるなぁ!」
マリア:「どうやら住人達の避難も無事済んでるみたいだし、あとは消防士達に任せて……」
消防士:「いけません、奥さん!危険です!」
女性:「仁奈が!仁奈がまだ中にいるんです!」
稲生:「はあ!?」
マリア:「What’s!?」
女性:「404号室です!一緒に逃げてきたはずなのに、いなくて……!」
稲生はマンションの4階部分を見上げた。
……完全に火に包まれていた。
稲生:「あっ!こ、こりゃもうアカン!唱題してもダメ!御祈念してもダメ!」
女性:「あぁあぁあぁぁ!!」
マリア:「い、いや、もしかしたらまだ奥の方は大丈夫かも……。! そうだ、この際だから腕試しをしてみよう」
マリアは建物の陰に隠れた。
稲生「マリアさん、どうしたんですか?」
マリア:「師匠の課題をクリアしてみせる!……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!我を北与野コーポ404号室へ飛ばしたまえ!ルゥ・ラ!」
マリアは魔法の杖を高く上に振り上げた。
稲生:「えっ!?だって、魔法陣も描かずに……って、消えた」
[12月30日02:53.天候:晴 北与野コーポ404号室→北与野コーポ裏庭]
ポンッ!
マリア:「ここか!?北与野コーポ404号室は!?……うへっ!」
どうやら成功したらしいが、既にこの部屋にも煙が充満していた。
マリア:「ミクとハク!ニナとやらを捜して!」
ミク人形:「了解!」
ハク人形:「了解!」
で、ミク人形がすぐに見つけた。
どうやら、少しでも水のある所に避難していたらしい。
風呂場で見つかった。
マンションがあるが故、浴室にも窓は無い。
マリア:「助ケニ来タヨ!」
仁奈:「誰!?」
マリア:「掴マッテ!」
マリアは仁奈という少女をしっかり手で受け止めた。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!元の場所へ戻れ!ルゥ・ラ!」
ポンッ!
稲生:「わっ、ちゃんと戻って来た!」
マリア:「このコでいいだろう。さ、早くママの所へ行きなさい」
仁奈:「なに……?」
稲生:「キミはもう助かったんだ。あっちにキミのママがいる。早く行くんだ」
仁奈:「う、うん!」
マリア:「逃げ遅れ者はこんなところだろう。急いで帰ろう」
稲生:「そうですね。子供とはいえ、魔法を見られたわけですから」
稲生とマリアは急いで家に引き上げた。
稲生:「魔法で人助けをしましたね。これで課題クリアですか!?」
マリア:「分かんないけど、取りあえず魔法陣を描かずにピンポイント移動できるようになったから、自分でも凄い上達ぶりだと思う!」
稲生:「やりましたね!」
まだまだマンションの火災は年末の夜空を焦がすほどであったが、後のニュースで、そんな大火事であったにも関わらず、死者はゼロであったとのことだ。
マリアはベッドに潜り込んだ。
シングルサイズのエアーベッドは、屋敷で使用しているセミダブルのそれと比べれば幅は狭い。
それでも、柔らかさは遜色無かった。
マリア:「御両親にも認めてもらい、あとは……どうすればいいかな?」
ミク人形:「…………」
ハク人形:「…………」
マリア:「まあいいや。そのうち、思いつくだろう」
『あとは体だけ!』だと思った紳士処君、少し落ち着こう。
マリア:「明日はユウタが映画観に連れて行ってくれるっていうし……。うーん……」
室内の暖房はオイルヒーターを使用している。
その為、室内の音といったら、借りている目覚まし時計の秒針の音くらいか。
人によってはそれが気になって眠れないという者もいるだろうが、マリアはそんなことは無いようだ。
ブゥン!ブゥン!(テーブルの上に置いた水晶球が光る)
マリア:「ううん……」
マリアは布団を頭から被った。
ハク人形:「……!」
ミク人形:「……!」
ミク人形とハク人形がマリアを揺さぶり起こす。
マリア:「何よぉ……。せっかく寝入り掛けたのに……」
水晶球が鈍く点滅しているのを認識する。
マリア:「なに?別に、師匠からの通信ってわけじゃないみたいだけど……」
マリアは水晶球に近づいた。
そこには何かが映っている。
マリア:「……?」
燃え盛る家の映像であった。
戸建てというよりは、何かの集合住宅か。
マリア:「何の映像、これ……?くだらない」
マリアは水晶球の映像を消した。
マリア:「寝よう寝よう」
マリアは大欠伸をして、ベッドの中に入った。
[12月30日02:35.天候:晴 稲生家2F稲生の部屋]
稲生:「妙〜法蓮華経〜方便品第二〜。爾時世尊従三昧安詳……ん?」
稲生が丑寅勤行を始めたばかりの頃、外が騒がしかった。
消防車のサイレンの音がやたら近くで聞こえてくる。
稲生:「何だ何だ?」
部屋のカーテンを開ける。
稲生:「わっ!?」
すると、道を挟んで向かいのマンションから火の手が上がっていた。
稲生:「わあっ!火事だーっ!」
稲生は急いで部屋を飛び出し、階段を駆け下りた。
が!
稲生:「わあっ!?」
足を踏み外して、階段から転げ落ちた。
マリア:「!!!」
それまでマリアは眠っていたのだが、消防車のサイレンの音ではなく、むしろ稲生が階段から転げ落ちる音で目が覚めた。
マリア:「何の音!?」
マリアはワンピース型の寝巻を着ていたのだが、その上からローブを羽織って客間の外に出た。
宗一郎:「何をやってるんだ、勇太?」
稲生:「いてててて……」
佳子:「いくらお向かいが火事だからって、そんなに慌てることないでしょう?」
稲生:「で、でも……!」
マリア:「Yuta.What happend?Are you ok?(ユウタ、どうしたの?大丈夫?)」
稲生:「向かいのマンションが火事なんです!こっちに飛び火する前に、逃げないと!」
稲生は英語でマリアに言った。
マリア:「What!?」
宗一郎:「しかし、もう消防車は到着してるんだろう?特にこっちに避難指示とか来てないし、大丈夫なんじゃないか?」
稲生:「僕、ちょっと様子を見て来る」
マリア:「ワ、私モ行ッテ来マス!」
稲生はコートだけ持って来たが、マリアはちゃんと魔法の杖まで持って来た。
そこが見習とマスターの違いか。
外に出ると、当然ながら大騒ぎだった。
消火活動の為、市道である与野中央通りが通行止めになるほどである。
しかも、近所の住民達が押し掛けて、てんやわんやであった。
もちろん、実際の消火活動に関しては、完全に規制線が張られているわけだが……。
稲生:「うあ!?鉄筋コンクリートのマンションなのに、よく燃えてるなぁ!」
マリア:「どうやら住人達の避難も無事済んでるみたいだし、あとは消防士達に任せて……」
消防士:「いけません、奥さん!危険です!」
女性:「仁奈が!仁奈がまだ中にいるんです!」
稲生:「はあ!?」
マリア:「What’s!?」
女性:「404号室です!一緒に逃げてきたはずなのに、いなくて……!」
稲生はマンションの4階部分を見上げた。
……完全に火に包まれていた。
稲生:「あっ!こ、こりゃもうアカン!唱題してもダメ!御祈念してもダメ!」
女性:「あぁあぁあぁぁ!!」
マリア:「い、いや、もしかしたらまだ奥の方は大丈夫かも……。! そうだ、この際だから腕試しをしてみよう」
マリアは建物の陰に隠れた。
稲生「マリアさん、どうしたんですか?」
マリア:「師匠の課題をクリアしてみせる!……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!我を北与野コーポ404号室へ飛ばしたまえ!ルゥ・ラ!」
マリアは魔法の杖を高く上に振り上げた。
稲生:「えっ!?だって、魔法陣も描かずに……って、消えた」
[12月30日02:53.天候:晴 北与野コーポ404号室→北与野コーポ裏庭]
ポンッ!
マリア:「ここか!?北与野コーポ404号室は!?……うへっ!」
どうやら成功したらしいが、既にこの部屋にも煙が充満していた。
マリア:「ミクとハク!ニナとやらを捜して!」
ミク人形:「了解!」
ハク人形:「了解!」
で、ミク人形がすぐに見つけた。
どうやら、少しでも水のある所に避難していたらしい。
風呂場で見つかった。
マンションがあるが故、浴室にも窓は無い。
マリア:「助ケニ来タヨ!」
仁奈:「誰!?」
マリア:「掴マッテ!」
マリアは仁奈という少女をしっかり手で受け止めた。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!元の場所へ戻れ!ルゥ・ラ!」
ポンッ!
稲生:「わっ、ちゃんと戻って来た!」
マリア:「このコでいいだろう。さ、早くママの所へ行きなさい」
仁奈:「なに……?」
稲生:「キミはもう助かったんだ。あっちにキミのママがいる。早く行くんだ」
仁奈:「う、うん!」
マリア:「逃げ遅れ者はこんなところだろう。急いで帰ろう」
稲生:「そうですね。子供とはいえ、魔法を見られたわけですから」
稲生とマリアは急いで家に引き上げた。
稲生:「魔法で人助けをしましたね。これで課題クリアですか!?」
マリア:「分かんないけど、取りあえず魔法陣を描かずにピンポイント移動できるようになったから、自分でも凄い上達ぶりだと思う!」
稲生:「やりましたね!」
まだまだマンションの火災は年末の夜空を焦がすほどであったが、後のニュースで、そんな大火事であったにも関わらず、死者はゼロであったとのことだ。