報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「30日の夜」

2018-01-11 19:53:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月30日19:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 パレスホテル大宮・レストラン]

 稲生:「……あそこでトラックのタイヤがパンクしなかったら、僕達もうここにはいなかったよ」
 宗一郎:「もう何度も聞いたって。それにしても、うちの近所も物騒になったねぇ。こりゃ、用心しないと」
 佳子:「そうね」

 ほぼ食事を終えている稲生家。
 マリアは1人席を立ち、ホテル内のトイレに行っていた。

 マリア:「エレーナ、エレーナ。こちら、マリアンナ。応答せよ、応答」

 自動通訳魔法具とは別に、通信用の水晶球もある。

 エレーナ:「何よ?てか、何であんたの呼び掛けはいつも無線通信みたいなの?」
 マリア:「そんなことはどうでもいい。それより、聞きたいことがある」
 エレーナ:「なに?」
 マリア:「どうもユウタの家の近くで、物騒なことが起きてる。近所のアパートメントの火災は不審火だと言うし、今日の暴走トラックも、突然のブレーキ故障だって話だ。もしかしたら、他からの魔法攻撃によるものかもしれない。エレーナの所で、何か情報は無いか?」
 エレーナ:「あー?タダで情報欲しいってか?」
 マリア:「情報料を支払う用意はあるが、情報の内容による」
 エレーナ:「ちっ、しっかりしてやがる。でもまあ、こっちには“魔の者”の情報も、東アジア魔道団の情報も無いね」
 マリア:「エレーナ個人は?そっちはそっちで、何かトラブルの対応とかは?」
 エレーナ:「ホテルの客のクレーム対応しか無い」
 マリア:「そうか。このままでは、ユウタの家にも被害が出る恐れがある。いっそのこと、エレーナのホテルに避難しておきたいところなんだが」
 エレーナ:「ちょっと待って。それ、アタシまでアンタの不運に巻き込まれるってことだよね?」
 マリア:「いっそ巻き込まれろ」
 エレーナ:「うるせっ!こっちはヒキコモリのアンタと違って忙しいんだ!」
 マリア:「引きこもってなんかいないぞ?ちゃんと年末年始はユウタの家で過ごす」
 エレーナ:「このリア充め!魔女は非リアと相場が決まってんだっ!」
 マリア:「勝手に決めるな。てか、ホテル業務はエレーナが望んだことだろ?」
 エレーナ:「やかましい!……ちょっと待て。カスタマー(客)が来たから切るぞ」

 通信が切れる。

 マリア:(エレーナはエレーナで電話みたいな対応じゃないか……全く)

 しかし、これでどうやら、2つの事件はただの偶然である可能性が高くなってきた。

 マリア:(東アジア魔道団もパトロンのチャイナとコリアで忙しいみたいだし、ダンテ一門を相手にしている場合ではない……か)

 マリアはトイレを出ると、レストランに戻った。

 稲生:「あ、マリアさん」
 マリア:「只今戻リマシタ」
 宗一郎:「じゃ、マリアさんも戻ってきたことだし、そろそろ出るとするか」

 宗一郎は席を立った。

 宗一郎:「皆、忘れ物は無いか?」
 稲生:「うん、大丈夫」

 宗一郎が払っている間、稲生達は外に出る。

 マリア:「ユウタ、そういえばこの辺りって、前にも来たこと無いか?
 稲生:「パレスホテルですか?ありましたかねぇ……
 マリア:「いや、このホテルがというより、ケンショーレンジャーから逃げるのに……
 稲生:「あ、そう言えば何かあったな。そうだそうだ。ソニックシティで顕正会が総幹部会をやってて、ちょうど浅井会長が演説している時に、僕達がルゥ・ラで降りちゃって……。で、慌ててタクシーに飛び乗って帰ったということがありましたね
 マリア:「そうだそうだ。それで何か見覚えがあるんだ

 そんなことを話していると、宗一郎がレストランから出てきた。

 宗一郎:「よーし。じゃあ、帰るぞー」
 マリア:「御馳走様デシタ」
 宗一郎:「何の何の」
 稲生:「タクシー乗り場は、あっちか」

 タクシー乗り場に向かい、そこからタクシーに乗る。
 稲生家3人はリアシートに座り、マリアは助手席に座った。

 マリア:(私の魔力が高まっている……)

 タクシーはソニックシティを出ると、まずは国道17号線(中山道)に向かった。
 今は県道に格下げとなった江戸時代からの街道、旧中山道とは別である。
 現・中山道より更に西の方にできた新大宮バイパスに対し、こちらは旧大宮バイパスだったのだとか。
 そこの赤信号で停車する。

 マリア:「…………」

 旧バイパスとはいえ、今でも国道指定されている中山道。
 その為、車の往来は多い。
 そんな中、上り線をスーッと黒塗りの高級乗用車が通過していった。
 まるで、アナスタシア組のアナスタシアが日本国内で乗るような車である。
 見た目はただそれだけなのだが、マリアは嫌に気になってしょうが無かった。

 マリア:(何か嫌な予感がするが……。まあ、それだけなら何もできないか)

 そして、こちら側が青になる。
 タクシーもまた上り線に入って、件の車の後を追う形になる。
 で、最初の信号でまた赤信号に引っ掛かった。

 マリア:(何か違和感が……?)

 で、また青。
 途中でタクシーは市道に右折する為、右折レーンへ。
 怪しい黒い車はそのまま直進へ。
 すると……。

〔「大宮333 あ ……。止まってください」〕

 後ろから来たパトカーが職質に掛かって来た。
 だが、黒塗りの車は猛スピードで加速した。
 すぐにパトカーがサイレンを鳴らして追い掛ける。

 宗一郎:「おいおい、逃げたなぁ……」
 運転手:「多分、盗難車でしょう。ナンバーが少しズレてました」
 宗一郎:「なに、そうなのか。よく分からなかったなぁ……」
 マリア:(なるほど。盗難車か。予知というより、これは……ただの勘か?……魔法とは言い難いかな)

 マリアはその時は軽い苦笑をしたものだが、その直後にまた予知を行うことになる。

 マリア:「Excuse me.Ah...コノ先デ、少シ車ヲ止メテ貰エマセンカ?」
 運転手:「えっ?」
 宗一郎:「マリアさん、それはどういう?」
 稲生:「何か予知ですか?」
 マリア:「何カ、悪イコトガ起コリソウナ感ジガスルノデス。少シダケ、様子ヲ見サセテ貰エマセンカ?」
 稲生:「父さん、どうする?」
 宗一郎:「うーむ……」

 1:車を止めさせる。
 2:このまま行く。
 3:途中のコンビニに立ち寄る。
 4:道を迂回させる。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「マリアの予知」

2018-01-11 14:28:00 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月30日14:35.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 国際興業バス新都01系統車内]

 北与野駅前で更に乗客を乗せたバス。
 座席は殆ど埋まっている状態である。

〔♪♪♪♪。次は八幡通り、八幡通りでございます〕

 バスは県道215号線に入り、西に進む。

 マリア:「ん……?」
 稲生:「どうしました?」
 マリア:「何だろう?……この感じ……」
 稲生:「何ですか?」
 マリア:「この……体がむず痒いって言うか……」
 稲生:「ええっ?」
 マリア:「何か……このままバスに乗ってちゃいけないような……」
 稲生:「何ですって?それって、予知?」
 マリア:「多分……いや、分かんない」

 大きな水晶球は持ち運びに不便な為、家に置いて来ていた。
 恐らく今、水晶球には何か映し出されているのかもしれない。

〔「お知らせ無ければ通過します」〕

 
(別の季節に写した県道。稲生達のバスは右側のバス停を通過した。つまり、軽自動車の方向に走っている)

〔♪♪♪♪。次は与野切敷川、与野切敷川。マルエツ与野店前でございます〕

 稲生:「僕達は降りた方がいいんですか?」
 マリア:「何か、そんな気がしてしょうがない……」
 稲生:「分かりました」

 稲生が降車ボタンに手を伸ばした。
 稲生の服の袖でマリアの鼻をこちょこちょ……。

 マリア:「は……ハクション!ハクション!!」

 マリアはそれで2回くしゃみをした。
 バスは市道・与野中央通りの交差点を通過する。
 当然ながら、バス側の方が青信号なのであるが……。

 稲生:「!!!」

 そこでバスが急ブレーキ!
 与野中央通り側から、1台のトラックが突っ込んで来て止まった。
 バスへの出合い頭衝突まであと数センチ!

 稲生:「こ、これは……!?」

[同日16:00.天候:晴 イオンモール与野3F タリーズコーヒー]

 稲生:「トラックはブレーキ故障で暴走していたそうです。信号待ちで並んでいた車への追突を避ける為、対向車線に出たけども、僕達のバスと衝突してしまう所だったんですね。ところがその直前、前輪が2つとも同時に外れたと。前輪が無くなってキャブを擦り、その摩擦でトラックは急停車。衝突は避けられたということです」
 マリア:「もう少し早く気づいていれば……。私の予知能力だったんだろうけど、まだまだだな……」
 稲生:「先生の見解ではマリアさんがくしゃみ2回したことで、トラックの前輪が吹き飛んだんだろうということです」
 マリア:「何の魔法だ……」
 稲生:「別に、皆して結果オーライですよ。バスは立ち客がいなかったこともあって、急停車でも転んでケガする人はいなかったし、トラックのタイヤも誰かに当たることは無かったし、そのトラックもバスにぶつかることは無かったわけですし。そして何より、マリアさんが皆の前で魔法を使うことも無くて済んだ」
 マリア:「もう少し早く気づいていれば、そもそもあのバスに乗らなくて済んだだろう。まだ修行が足りないな」
 稲生:「いや、あれでいいんですよ」
 マリア:「どうして?」
 稲生:「そのおかけで、皆助かったんですから。もしあそこで僕達が乗り合わせなくて、マリアさんがくしゃみしなかったら、暴走トラックとバスの大衝突ですよ。もしかしたらその衝撃で、バスかトラックが歩道に乗り上げて、歩行者や自転車も巻き添えにしていたかもしれない。あの交差点はマルエツがあることもあって、人通りや自転車が多いですから」
 マリア:「……『魔女』とも呼ばれた私が人助けか。何か、違うなぁ」
 稲生:「違くないですよ!これは、マリアさんが『魔道師』になる為の、『魔女』からの脱却ですよ!」
 マリア:「ユウタはそれでいいのか?」
 稲生:「もちろん!」
 マリア:「門規でそもそも魔法の悪用は禁止されているけども、それで人助けしろという規則も無いからな……」
 稲生:「人助けするなとも書いてませんよ」
 マリア:「まあ、確かに」
 稲生:「こういうことが結構、見習修了の近道なのかもしれないと思いました」
 マリア:「なるほど。……って、何か私が教えられてるみたい」
 稲生:「あっ、すいません!」
 マリア:「いやいや」
 稲生:「それにしても、事故処理のおかげで随分と時間を取られちゃいましたからね。あまり買い物する時間が……」
 マリア:「まあ、しょうがない。気楽に回ろう」
 稲生:「そうですね」

[同日17:07.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 イオンモール与野バス停→西武バス新都11系統]

 辺りが暗くなる頃、稲生達は両親との待ち合わせ場所に行くことにした。

 稲生:「少し遠回りですが、こっちの方が空いてると思います」
 マリア:「うん、分かった」

 日が出ていてそれに当たっているうちはまだ暖かさも感じられたところだが、さすがにこの時間ともなると寒い。
 マリアはローブを羽織った。
 やってきたバスは、大宮駅から乗ったものと同じ車種であった。

 稲生:「今度は予知は大丈夫ですよね?」

 稲生は空いた2人席に腰掛けながら言った。

 マリア:「いやー、分かんない。私の今の力じゃ、直前がせいぜいみたいだ。今度、さっきのような感じがしたら、さっさと降りよう」
 稲生:「せっかくだから、人助けした方がいいと思いますけどねぇ」

〔発車します。お掴まりください。発車します〕

 バスが走り出す。

〔♪♪♪。このバスは円阿弥(えんなみ)、三橋(みはし)四丁目経由、大宮駅西口行きです。次は円阿弥、円阿弥。……〕

 稲生:「例えばこの先に、新大宮バイパスが通っていますが……」
 マリア:「何も感じないから、多分大丈夫だと思う。それよりユウタの方こそ、何かできないのか?」
 稲生:「うーん……」
 マリア:「前、よく予知夢を見ていたこともあったじゃないか」
 稲生:「ここんとこ、さっぱりで……。破門ですかね?」
 マリア:「師匠のことだから、上達が遅いくらいで破門も何もしないと思うけど。私は私で、変に魔力が上昇してしまってるから逆に怖い」
 稲生:「でも、僕みたいに上達が遅いよりはマシなのでは?」
 マリア:「株と同じで、急上昇すると後が怖いんだよ」
 稲生:「分かりやすいイメージですね!」
 マリア:「急でも上昇する株……もとい、魔力をいかに制御するかが問題なんだ。暴走させたりしたらヤバいからね」
 稲生:「そんなに?」
 マリア:「私の聞いた話では数十年前、魔力を暴走させた所をキリスト教カルト集団に見つかって捕まり、火あぶりにされた魔道師がいたらしい」
 稲生:「ダンテ門内で、ですか?」
 マリア:「そう。だから今、色々とそれを制御する魔法具は作られているんだけど……」

 魔法の杖しかり、水晶球しかり。
 昔からある物ではあるが、改良が加えられている。
 後者の場合、予知を魔道師の頭の中ではなく、水晶球に映し出すことにより、本人の負担を軽減させたり、他人に説明しやすくしたりしている。

 マリア:「こういうのが無かったら、私も危険だな」
 稲生:「なるほどねぇ……」

 尚、予想通り、後で両親からマリアの水晶球が光っていたことを指摘された。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「年末の魔道師達」

2018-01-11 10:20:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月30日13:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 ムービックスさいたま]

〔「先生、早くこっちへ!」「小爆発が始まったよ!」「ボス、これは一体どういうことですか!?」「ああ、私だ。見ての通りだ。その船は、まもなく沈むだろう。救助ヘリを船首甲板のヘリポートに着陸させる。至急、船首甲板にて合流せよ。以上」「ここって、ほとんど船尾だよなぁ!?」「アァア……!」「ウゥウ……!」「邪魔だこの野郎!」タタタタタタタタタ!〕

 マリアの持っているパンフレットの表紙には、こう書いてあった。
 “私立探偵 相原学シリーズ 〜探偵のバイオハザード再び〜”と。

〔「ふ、船が傾いてやがる!」「先生、早くAデッキへ!こっちはまだ損傷が少ないです!安全です!」「た、確かにそれはそうだが……」「アァア……!」「ウゥゥ……!」「ゾンビ達も考えることは同じってことだろ!」「ちょっと、高橋!それアタシのショットガンの弾!」「ケチケチすんなっ!」〕

 稲生:(どうなるどうなる?)
 マリア:「……

 手に汗握る稲生と、ホラーアクションでも平気で寝れる存在自体が本来ホラーの魔道師だった。

〔「あなたがボスですか!?」「いや、違う。私はただの協会職員だ。あなた方のボス……担当者に頼まれて、このヘリを飛ばした者だ。それより、危機一髪だったな」「顕正号が沈んでいく……」「壮絶なラストですね、先生」「それにしてもヘリ一機ここに寄越すのに、随分と遅かったじゃないですか。それまでも、何度か船首甲板にいたんですよ」「すまない。何しろこの船会社、顕正号と同じ型の姉妹船を航行させていてね。それに惑わされてしまったよ」「何という名前の船ですか?」「正信号。とっくに今は沈んでいるがね」 ここでもバイオテロは行われていた。私はここで決意を新たに、太平洋をあとにした。あとのことは協会の連中に任せれば良いだろう。……〕

 稲生:「いやあ、すっかり夢中になっちゃって、コーラぬるくなっちゃったなぁ……」

 エンディングテーマが流れ、エンドロールが流れる頃、稲生はテーブルの上に置いたコーラのストローをくわえた。
 その際、隣の席のマリアが目に入る。

 稲生:「あれ?マリアさん?……マリアさん!」

 エンドロールも終わって、客席のが明るくなる。

 マリア:「うう……私も師匠のことが言えなくなってしまった。まさか、沖浦通信士長の中ボス戦辺りから寝ていたとは……」
 稲生:「それ、中盤辺りですよ。そこから寝てたんですか」
 マリア:「昨夜の寝不足が祟ったらしい。人助けも楽じゃないな」

 パンフレットにはゾンビとはまた別のおぞましいクリーチャーに変化し、愛原達を待ち受ける通信士長のことが解説されていた。

 稲生:「パンフレットって、ネタバレの宝庫ですよ。それを先に買うなんて……」
 マリア:「それで安心したせいかもしれないな。気をつけよう。因みに私、ネタバレは気にしない方だから。というか、予知能力が身に付く魔道師がネタバレ禁止なんて言ってはいけない」
 稲生:「ま、それはそうですが……」

 因みにこの2人、今は稲生家の外にいる為、自動通訳魔法具をONにしている。

 マリア:「しょうがない。この作品はまた別の機会にみてみよう。ユウタが屋敷のテレビでも観れるようにしてくれたからな」
 稲生:「先生がブルーレイ内蔵のテレビ購入を許可してくれたのと、あとはDMMでレンタルするだけですから」
 マリア:「あの映画もブルーレイ化される?」
 稲生:「恐らくは」
 マリア:「そうか。じゃあ、それで観よう」

 ムービックスの外に出る。

 稲生:「帰るにはまだちょっと時間が中途半端だな……」
 マリア:「ランチは……まあ、ポップコーンとコーラがそれみたいなものか」
 稲生:「まあ、そうですね。それに、今夜は外食らしいですよ」
 マリア:「そうなのか。あっ、そうだ。それじゃ、行きたい所がある」
 稲生:「どこですか?」

[同日14:25.天候:晴 さいたま新都心駅西口1F→国際興業バス車内]

 稲生:「今度はイオンですか」
 マリア:「そうそう。今のうちに屋敷で使う物を用意しておきたい」
 稲生:(で、それを運ぶのはエレーナってか……)

 バスが入線してくる。
 ノンステップバスだが、大宮駅から乗った西武バスとは違い、こちらは大型車。
 バスに乗り込んで、後ろの2人席に座る。

〔「14時25分発車、イオン、白鍬方面、北浦和行きです。まもなく発車します」〕

 マリア:「夕食はどこで取るって?」
 稲生:「パレスホテル大宮ですって」
 マリア:「そりゃまた豪華そうな……」
 稲生:「いつも年末とか、僕が帰って来ると、大抵1回は行きますよ。今回はマリアさんも一緒だから、尚更張り切ってるんじゃないですかね」
 マリア:「それは気を使わせたなぁ……」
 稲生:「いや、いいんじゃないですか。どうせ、クーポンやポイント放出デーになるだけでしょうから」
 マリア:「そういうものか?」

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 発車の時間になり、バスが発車した。
 足元からは暖房の風がモロに当たる。
 それだけでこの2人が実際どの席に座っているのか分かった人は凄い。
 多分、“バスターミナルなブログ”の住人さん達辺りが御覧になれば分かるかと。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスはイオンモール与野、白鍬電建住宅経由、北浦和駅西口行きです。お降りの際は、お近くのボタンを押してお知らせ願います。次は北与野駅入口、北与野駅入口でございます〕

 稲生:「あれから水晶球は光りませんか?」
 マリア:「光らないね。多分、よほどの事件が近くで起きる予知が出ないと光らないんだと思う。……って、師匠が言ってた」
 稲生:「先生と連絡取りましたか。ルゥ・ラに関しては何と?」
 マリア:「『よくできた』って。あとは呪文も唱えず、心の中で念じるだけでできるようにしろってさ」
 稲生:「そんなことができたら凄いですね」
 マリア:「遠くへ行くには魔法陣とかが必要になるけども、近くに緊急で飛べるようにする方が難しいんだそうだ。何しろ、ダイレクトにピンポイントで到着しなければならないんだから」
 稲生:「確かに。某RPGの瞬間移動魔法なんか、町の入口とか、随分とアバウトですもんね」

 ものの見事にすぐ近くのマンション、それも現場となっている部屋にピンポイントでアクセスできたこと物凄い上達ぶりだと言えよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする