報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「出港前」

2018-01-01 22:01:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月31日10:12.天候:晴 東京都北区王子 JR王子駅→京浜東北線937B電車内]

〔まもなく2番線に、快速、磯子行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は大みそかだが、探偵には年末年始もお盆もゴールデンウィークも関係無い。
 依頼があれば、例えどんな日であろうともそれを受けるのが義務だと思っている。
 とはいうものの、今回は仕事とは言えないかもしれない。
 何故なら、これから海外旅行に行くからである。
 いや、現実には海外旅行とも違うかもしれない。
 だが一応、ちゃんとパスポートは持って来た。
 そして私達の手には、大きなキャスターバッグ。

〔「2番線、ご注意ください。快速、磯子行きが参ります。田端までの各駅と、上野から東京までの各駅並びに浜松町から先の各駅に止まります。停車駅にご注意ください」〕

 何だか、あまり速そうではない案内をするなぁ。
 電車の入線速度は速いのだが。
 段々と京浜東北線快速の停車駅が多くなってくる。
 そのうち、日暮里駅に止まるようになったら、これはもう快速運転自体を廃止した方が良くなるかもしれない。
 駅をバンバン通過するからこそ、快速には有難みがあるものだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。王子、王子です。2番線の電車は快速、磯子行きです」〕

 王子駅は北口が1番賑わう。
 だが、その北口改札に至る通路は狭い。
 私達は僅かな停車時間の間に、電車の最後尾に乗り込んだ。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車が走り出す。
 特に速度制限は無いのか、スルスルと加速して行く。

〔次は上中里、上中里。お出口は、右側です〕
〔The next station is Kami-Nakazato.The doors on the right side will open.〕

 愛原:「それにしても……」

 私は京浜東北線のラインカラーと同じ色の座席に腰掛けると、招待状を取り出した。

 愛原:「件の船は14時出航だというのに、随分と早い出発じゃないか?なあ?高野君?」
 高野:「入港は11時ですし、しかもランチバイキングからスタートするというじゃありませんか。豪華客船で豪華ランチですよ、先生?」
 愛原:「まあ、確かになかなかそんな機会は無いな。……どうした、高橋君?浮かない顔だが、やっぱりコタツにミカンの方が良かったか?」
 高橋:「い、いえ……。俺は先生とでしたら、地獄までも付いて行きます」

 高橋は私の前に立っているのだが、どうも気分が悪そうだ。
 どちらかというと肌は白い方なのだが、それが更に青白く見える。

 高野:「勝手に先生を地獄行きにしないの。先生みたいないい人だったら、きっと天国行きよ」
 高橋:「そ、そういうことじゃねぇ」
 愛原:「高橋、お前座ったらどうだ?」

 私は席を立とうとした。
 だが、その動きを高橋が止める。

 高橋:「いいえ、先生。別に俺は、病気とかそういうんじゃないです」
 愛原:「じゃ、何なんだ?」
 高橋:「その……海外に出るというのが初めてなもので、何だか緊張して……」
 愛原:「はははは!何だ、そんなことか。安心しろ。俺も高野君も、海外は初めてだから。パスポートを取ったのだって、こんなこともあろうかと思って用意していたものなんだ」
 高野:「私は前の仕事の関係で取ってただけだけど……」

 高野君の前の仕事というのは、霧生市内にあった地方紙の記者だ。
 なるほど。
 新聞記者ともあれば、海外に飛ぶ機会もあるからってことか。

[同日11:30.天候:晴 神奈川県横浜市中区 横浜港大さん橋]

 京浜東北線に揺られて、凡そ1時間。
 大日本汽船“顕正”号が停泊している横浜港大さん橋に行くには、いくつかのルートがある。
 私達は京浜東北線を関内駅で降りた。
 そこから徒歩15分とのことだが、何だか迷子になりそうだったので、タクシーで向かった。

 運転手:「見えてきましたよ。あの船ですか」
 愛原:「おお〜!」
 高野:「大きい……」
 高橋:「大丈夫ですかね?沈んだりとかはしませんよね?」
 愛原:「まさか。あんな大きな船が、そうそう沈むなんてことは無いよ」

 顕正号は豪華客船の名に相応しい大きさを誇っていた。

 運転手:「出入国ロビーの方に着けますね。お客さん、あの船のお客さんでしょ?」
 愛原:「そうです。よく分かりましたね」
 運転手:「そりゃ、トランクにあれだけの大きな荷物を積まれましたもの……」
 愛原:「それもそうか」

 私達はタクシーを降りた。
 何しろ、横浜は中華街くらいしか来たことないからな……。
 でもまあ、ターミナルの中に入って行くと、ちゃんと案内が出ていた。

 愛原:「『顕正号ご乗船のお客様』とある」
 高橋:「それじゃ、向こうですね」
 愛原:「高橋君、肩肘張らずに落ち着いて」
 高橋:「は、はい」
 高野:「豪華客船なんて、一生に一度乗れるかどうかだんね。そりゃ、緊張もするよ」

 さすがの高野君も、この時は高橋君に同情的だった。
 出国手続きをさせられるということは、やはりこの船で外洋に出るということだな。
 行程表によると、次の寄港地については何も書かれていない。
 日本の周りをグルリと回るだけのように見えるのだが、わざわざ外洋に出る必要があるのか。

 出国手続きを終えた私達は、タラップを上がって船上の人になることができた。

 係員:「愛原様のお部屋は308号室と309号室でございます」
 愛原:「3人一緒の部屋じゃないんだ」
 係員:「本船の客室は全てデラックスツインルームとなってございまして、もちろんエキストラベッドをご使用になれば3名様でご利用は可能です。それでよろしければ……」
 高野:「あ、いや、私は遠慮しとく。そのツインルームを1人で使えるってんならお得だわ」

 もちろん、ここまでで交通費以外の費用は私達は払っていない。
 部屋代から何から、船旅に必要な経費はこの招待状という名のチケットに全て含まれているようである。
 私達はルームキーを受け取った。
 ……ん?ルームキー?カードキーではないのか。
 ふーん……。
 あの“トイレの花子さん、仮面の少女”を名乗る者から送られて来たカードキーは、一体どこで使うものなのだろう?
 この船だと思っていたのだが……。

 エレベーターで客室フロアに向かった。

 愛原:「えーと、308、308っと」
 高橋:「先生、ここですよ」
 高野:「すると、私の部屋はその隣ね」

 私は早速、ルームキーでドアを解錠した。

 愛原:「12時から、カフェテリアでランチバイキングらしいな。その時になったら、皆で行こう」
 高橋:「はい」
 高野:「分かりました」

 豪華客船の名に相応しく、船内も客室もそれなりにデラックスな造りにはなっていたが、建造から既に何十年も経っているせいか、それによる老朽化のようなものもちらほら目に着く感じではあった。
コメント (3)
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雲羽作品の登場人物達より、新年の御挨拶を申し上げます。

2018-01-01 10:44:27 | 日記
[1月1日10:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区内某所]

 雲羽百三:「読者の皆様、旧年中は大変お世話になりました。本年におきましても、当ブログ、そしてそのメイン作品達の変わらぬ御愛顧を何卒よろしくお願い申し上げます。それでは、同じく“あっつぁブログ被害者の会”会員である多摩準急先生より御挨拶を賜りたいと思います。多摩準急先生は只今、家族旅行で宮城県内にあります鬼首(おにこうべ)温泉に行っているとのことですが……。あれ?中継が繋がらない?山深い温泉で、今も雪が降り積もっている場所ですから、電波の状態が悪いようであります。……ん?一瞬繋がった?」

 何故か画面一杯にツキノワグマが仁王立ちするシーンが……。

 雲羽百三:「えーと……あの、どうしようかな……。今年は戌年でありますが、干支の中に熊が入っていないことへの抗議デモが各地の山などで起こっているもようです。熊の生息地付近に住む住民の方、観光客の皆さんは十分に注意してください。それでは別の中継箇所を呼び出してみましょう。……それではまず、東京の豊洲と繋がっているもようです。東京は“戦う社長の物語”ですね。どうぞ」

 敷島:「読者の皆様、明けましておめでとうございます!今年もまた私がバス特攻で敵のアジトへ突撃しますんで、よろしくお願いします」
 アリス:「そういうアクションネタはもうお腹一杯よ。それより、今年はまたまたタイトルを変えて、“レディ・アリスの華麗なるロボット研究”をお送りします」
 敷島:「何がレディ・アリスだ、この野郎!」
 シンディ:「奥様、社長、まあまあ」
 敷島:「だいたい、何だお前、その恰好は?」
 アリス:「お正月だからね、トラディショナルに決めてみたよ」
 敷島:「オマエのトラディショナルはどうなってるんだ、ええ?着物着りゃいいってもんじゃないぞ。それ花魁!」
 シンディ:「私達はいかがでしょう?」
 敷島:「おっ、決まってるな。読者の皆様、うちのロイド達の艶やかな着物姿をとくとご覧あれ!」
 マリア:「社長、マンガではないので絵が無いです」
 敷島:「コラ作者!ちゃんと挿絵家さんも雇え!」
 初音ミク:「たかおさん、甘酒飲み過ぎですよー」
 アリス:「シンディ、甘酒のお代わり」
 シンディ:「か、かしこまりました。確か今、ボーカロイド達が御用意しているはずです」
 鏡音リン:「ガソリン、もうちょい足してみようか」
 鏡音レン:「OK」
 リン:「灯油も少し混ぜて〜?」
 レン:「はいはい」
 MEIKO:「うわ……!このいたずらっ子ども」
 巡音ルカ:「怒られるわよ」
 リン:「最後にエチルアルコール混ぜときゃ大丈夫っしょ。フッ、人間なんてチョロいぜ」

 ゴッ!とシンディよりゲンコツが飛ぶ。

 シンディ:「気持ちは分かるけど、フザけるのはやめなさい」
 リン:「ふぁい……」
 平賀:「遅れた遅れた!すいません!もう中継終わりました!?」
 敷島:「いや、まだで……」
 平賀:「おおっ、甘酒!自分も一杯もらうぞ!」
 エミリー:「ひ、平賀博士!それは……!」
 平賀:「ブバーッ!?な、何だこれ!?」
 リン:「引っ掛かったー!いぇい!」
 エミリー:「後でお仕置きだ」

 エミリー、両目をギラリと光らせる。

 アルエット:「今年はドタバタ劇に終始するのかな?」
 萌:「どうだろうね。ボク的にはボクとアルの2人主人公で、ロリロリ萌え萌え小説なんかいいと思うけど」

 雲羽:「えー、ドタバタ劇に終始させるつもりはございません。では、次の中継です。次は埼玉県さいたま市ですね。“大魔道師の弟子”の世界と中継が繋がっています」

 稲生勇太:「え、えー……みみみ、皆様、ほ、本年も明けましておめでとうございます。きゅ、旧年はよよ、よろしくお願い……」
 イリーナ:「ユウタ君、落ち着いて。ほら、深呼吸深呼吸」
 マリア:「ユウタの御両親より、着物を頂きました。皆様にお見せできないのが残念です」
 稲生:「せ、先生はいつものローブなんですね」
 イリーナ:「私なんかが着ても似合わないもの」
 稲生:「今年はどういう展開になるんでしょうか?」
 イリーナ:「そりゃあもちろん、ユウタ君がマスターになって、マリアと結婚してくれること。あなた達が“法統相続”してくれれば、アタシも悠々と引退できるわけよ」
 マリア:「なっ……!?」
 稲生:「い、いや、その……!先生にはまだまだ教えて頂きたいことが……!」
 マリア:「そうですよ!まだ“魔の者”も倒していないのに……!」
 イリーナ:「今年はこの物語、完結できるんかねぇ……?」
 稲生:「と、とにかく僕達、今年も頑張りますから、何卒よろしくお願い致します!」

 雲羽:「はい、ありがとうございました。“アンドロイドマスター”よりは制作期間が短いせいか、少し早めに終わりましたね。尚、派生作品であった“妖狐 威吹”などについては“ユタと愉快な仲間たち”シリーズに併合しておりますので、割愛させて頂きます。威吹ファンの皆さん、ごめんなさい。尚、エレーナはホテルと年賀状配達の仕事が忙しく、リリアンヌにあっては冥界鉄道公社のストライキで魔界から戻れなくなり、出演を拒否られました。それでは、次へ参りましょう。ついにシリーズ化となった“私立探偵 愛原学”です。彼らは……おっ、どうやら予定通り、豪華客船で洋上に出たようですね。それでは……あれ?こちらも中継が繋がらない?……すいませんね、多摩準急先生といい……。え?繋がった?……どうやら、繋がったもようであります。それでは、どうぞ」

 ゾンビA:「アァア……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」

 タタタタタタン!(マシンガンの音)
 ブツッ!(中継が切れる)

 雲羽:「え?なに、今の?……えっ、打ち合わせと違う?あれ?……えーと、すいません。何かちょっと、トラブルがあったもようで……。それではお時間と制限字数に達してきましたので、新年の御挨拶はこれまでとさせて頂きます。皆様、今年も変わらぬ御愛顧のほど、よろしくお願い致します」

 ケンショーグリーン:「突然ですが、クフフフフフフフ……。先般の紅白歌合戦における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。顕正会次期会長候補(自称)にして、魔界共和党理事の横田です。作者は黙っておりましたが、実は今年度を持って全ての作品はその連載を終了し、来年度よりこの不肖横田を主人公にした“グリーンの花園妄想記”一本での連載が始まるのですよ。ええ、それはもう高貴な官能小説です。日活ロマンポルノで映画化されてもおかしくはない、それはもう快楽の神秘、悦楽の境地を満遍なく綴った……」
 ケンショーブルー(サトー):「待てや、コラ、グリーン!あぁっ!?黙ってりゃ好き放題ウソの情報を読者に垂れ流ししやがってよ〜、あぁっ!?来年度から始まるのは、“ブルーの新潟爆走記”って決まってんだよっ、あぁっ!?日活ロマンポルノじゃねぇ!こっちは桃太郎映像出版とか、アロマ企画並みのマニアックな内容だぜっ、あぁっ!?」
 横田:「何がですか!思いっ切り、エロビデじゃないですか!それでは映画作品とは言えません!あなたは“ブルーの在日特権貪り記”にしなさい!」
 サトー:「ンだ、コラァッ!!」
 横田:「見なさい!それが正に朝鮮人特有の火病……」

 雲羽:「何か、スタジオの裏が騒がしいなぁ。ま、いいか。結局、多摩先生どうなったんだろ……」
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